奨学金は借金と同じ?返済の知識と滞納リスク、自己破産の現状を徹底解説!

奨学金は借金と同じ!返済の知識や延滞時リスクを解説

目次

奨学金は借金!借りた人が知らない真実

進学には 授業料など多額の費用 が必要になります。そんなときに役立つのが 奨学金 ですが、貸与型の奨学金を利用すると返還義務が生じる ことを忘れてはいけません。

「奨学金を返済し忘れたらどうなるのか…」
「将来、十分な給料が得られず返済できなかったらどうしよう…」

このような不安を感じる方も多いでしょう。

奨学金を借りていても、その仕組みや本質をよく理解していない人は少なくありません。
この章では、奨学金というお金の実態について詳しく解説していきます。

奨学金の利用状況(令和3年度調査)

令和3年度の調査によると、日本の 大学等に通う学生364万人のうち、116万人(31.8%)が日本学生支援機構の貸与奨学金を利用 しています。

その内訳は、

  • 第一種奨学金(無利子):約47万人
  • 第二種奨学金(有利子):約69万人

また、要返還債権のうち3カ月以上延滞している割合は2.7% であり、平成29年度以降 減少傾向 にあります。

奨学金の滞納リスクと対策を解説

この記事では、奨学金を滞納した場合のリスクや対応方法 について詳しく解説します。
また、奨学金の返還が免除されるケース についても説明するので、奨学金の返済に不安がある方はぜひ参考にしてください。

奨学金と借金は大きな違いがない

結論から言えば、奨学金と借金に大きな違いはありません。奨学金は、後に利息をつけて返済しなければならないお金だからです(一部の制度では無利息の場合もあります)。

たしかに、奨学金は一般的な借金とは異なり、ネガティブなイメージを持たれにくいかもしれません。そのため、「借金」とはあまり言いたくないと感じることもあるでしょう。
しかし、お金を借りて返済が必要である以上、本質的には奨学金も借金と変わりありません。

奨学金という借金を抱える学生は2人に1人

ニュースでも報じられていますが、大学生のうち2人に1人が奨学金を借りて学んでいます。
(引用:“奨学金破産”の連鎖で一家破産!?|クローズアップ現代+)

奨学金を利用する背景には、景気の低迷による親の収入減少だけでなく、授業料の値上げ問題も関係しており、奨学金なしでは大学に通えない状況が生まれています。
(参考:国公私立大学の授業料等の推移|文部科学省)

なぜ奨学金を借金だと認識しにくいのか?

奨学金は、一般的な借金とは異なり、学費など学校への支払いに直接充てられるため、自分で管理している感覚が薄く、借金という意識が持ちにくいものです。

さらに、奨学金を借りやすい社会情勢も影響し、奨学金が借金であるという認識がより希薄になっています。

奨学金の借金額の平均は288万円

奨学金の平均返済額は288万円で、大学卒業後に返済が始まります。仮に月15,000円ずつ返済すると、完済までに約16年かかり、現役で大学を卒業しても返済が終わるのは38歳頃になります。

その間に、結婚や転職など生活環境の変化もあるでしょう。中には、「奨学金の返済が負担となり結婚をためらう」「結婚後に支出が増え、奨学金が返せなくなった」といった問題に直面する人も少なくありません。
(参考:4割以上の人が活用した奨学金、返済額は平均288万、完済までは約16年|マイナビスチューデント)

年間33万人が奨学金を滞納している

高額な奨学金を卒業後に返済できなくなる人は少なくなく、年間33万人以上が奨学金を滞納しています。このまま奨学金制度に大きな変化がなければ、今後も滞納者が増加し続ける可能性は高いでしょう。

【平成27年度の奨学金滞納者の状況】

  • 返還義務のある人:3,811,494人
  • 1日以上の延滞者:327,512人
  • 3ヶ月以上の延滞者:164,635人

(参考:平成27年度奨学金の返還者に関する属性調査結果|日本学生支援機構)

初任給の学歴別比較

高卒から大学院卒までの初任給の男女平均を、以下の表にまとめました。

【学歴別の初任給(男女平均)】

  • 大学院卒:年収 2,285,000円 / 月給 約19万円
  • 大学卒:年収 2,020,000円 / 月給 約17万円
  • 高専・短大卒:年収 1,756,000円 / 月給 約15万円
  • 高校卒:年収 1,609,000円 / 月給 約13万円

(参考:平成27年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1学歴別にみた初任給|厚生労働省)

大学を卒業しても、毎月の給料は約17万円程度。特に地方から都内に就職した場合、家賃や生活費に加え、奨学金の返済も考えると、経済的な負担はかなり大きくなるでしょう。

日本学生支援機構奨学金の基本情報

日本学生支援機構が提供する奨学金には、大きく 給付型奨学金貸与型奨学金 の2種類があります。

さらに、貸与型奨学金には以下の2つのタイプが存在します。

  • 第一種奨学金(無利子で借りられる)
  • 第二種奨学金(有利子で借りられる)

給付型奨学金

給付型奨学金 は、経済的な理由で進学を諦めることがないよう、意欲的で有能な若者を支援するための制度です。この奨学金は 返還不要 であり、進学を後押しする役割を果たします。返済の義務がないため、まずはこちらの利用を優先的に検討することをおすすめします。

では、給付型奨学金の対象となるのはどのような人でしょうか?

対象となるのは、 大学等への進学を希望する以下の条件に該当する人 です。

  • 住民税が免除されている方(家計支持者の市区町村民税所得割額が0円)
  • 生活保護世帯の方
  • 社会的養護を必要とする方(18歳時点で児童養護施設等に入所している)

給付型奨学金の受給条件は厳しく、 平均的な所得の世帯 にとっては利用が難しいケースもあります。

貸与型奨学金

給付型奨学金に対し、貸与型奨学金 は一般的に多く利用されています。名前のとおり、貸与型奨学金は 借金 であり、借りたお金を返還することが前提となります。

貸与型奨学金には、以下の種類があります。

  • 第一種奨学金(無利子)
  • 第二種奨学金(有利子)
  • 入学時特別増額貸与奨学金(利子付き・入学時に一括で貸与される)

このように、貸与型奨学金は種類によって利息の有無や支給方法が異なります。

第一種奨学金

第一種奨学金(無利子) は、日本の 大学院、大学、中学校、高等専門学校、専門学校 に在籍しており、 経済的な理由で就学が難しい学生 を対象に貸与される奨学金です。

融資金額は、以下の要素によって異なります。

  • 学校の種類(大学、短期大学など)
  • 国公立か私立か
  • 入学年度
  • 自宅通学か自宅外通学か

返還方法には、以下の2種類があります。

  • 定額返還方式:融資総額に応じて月々の返還額が計算され、完済まで一定の金額を返済する方法
  • 所得連動返還方式:前年度の所得に応じて、その年の毎月の返還額が決まる方法

※返済について詳しく知りたい方はこちら
「奨学金の返済の仕方を解説|返済方法にはどんな種類があるの?」

第二種奨学金

第二種奨学金(有利子) は、 国内の大学院、大学、中学校、高等専門学校(4・5年生)、専門学校(専門課程) に在籍する学生や、 第一種奨学金を受給している学生 を対象とした貸与型奨学金です。

この奨学金は、比較的緩やかな基準で選考が行われ、 利子の上限は年3%(365日換算) となっています。

月額の融資額は、以下のように選択可能です。

  • 大学、中学校、高等専門学校(4・5年生)、専門学校 の学生:11種類の選択肢
  • 大学院生:5種類の選択肢

また、 第一種奨学金と第二種奨学金を併用することも可能 です。

入学時特別増額貸与奨学金

入学時特別増額貸与奨学金 は、 入学した月の第一種奨学金または第二種奨学金の月額分に加え、一時金として増額貸与される奨学金 です。この奨学金には 利子が発生 します。

この制度は、日本政策金融公庫の 「国の教育ローン」 を申請したものの利用できなかった世帯の学生向けに提供されています。
※教育ローンについて詳しく知りたい方はこちら
【奨学金と教育ローンはどう違う?】それぞれのメリット・デメリットも解説!

入学時特別増額貸与奨学金のポイント

  • 貸付金額は5種類から選択可能
  • 第一種奨学金または第二種奨学金と併用が必須(単独での貸与は不可)
  • 入学前に受け取ることはできないため注意が必要

また、 留学のための奨学金 も用意されています。
(参考:海外留学のための奨学金|日本学生支援機構)

返済と貸し出し

奨学金は将来の返還を考えて計画的に利用を

私立・自宅外通学の場合、第一種奨学金では 月額最大64,000円 を貸与できます。
また、第二種奨学金では月額最大12万円(医学・歯学部等の場合は追加あり) の貸与が可能です。

しかし、貸与を受けた奨学金は必ず返還しなければなりません
例えば、第二種奨学金で最大額の 12万円を毎月借りた場合
12万円 × 12カ月 × 4年間 = 576万円 となり、卒業後には550万円以上の借金を抱える ことになります。

奨学金の申し込みは慎重に

奨学金を受け取る際には、「借りられるから借りる」のではなく、将来の返還を考えた上で申し込むこと をおすすめします。
また、借り入れ可能額は あくまで上限 です。できるだけ多く借りるのではなく、返済可能な金額を考慮し、慎重に貸与額を決定 しましょう。

返還が困難になった場合は制度を活用

もし途中で 返還が難しくなった場合 は、減額返還制度や返還期限猶予制度 を利用できる可能性があります。
その際は、日本学生支援機構に早めに相談 しましょう。

延滞した時に生じる奨学金のリスク

奨学金は「返済しなくても大丈夫」と軽く考えられがちですが、滞納のリスクを甘く見てはいけません。滞納すると、年3%(上限)の利息が発生し、返済期間が長引くほど総返済額が膨らんでしまいます。

日本学生支援機構の「延滞した場合」によると、奨学金を滞納することで生じるリスクは以下の3点です。

  • 督促を受ける
  • 個人信用情報機関に事故情報(ブラックリスト)として登録される
  • 延滞金が発生する

それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。

督促を受け取る

奨学金の滞納が続くと督促が行われますが、その流れは 機関保証人的保証 の2種類に分かれます。

保証制度の種類

  • 機関保証:保証機関が保証を行う
  • 人的保証:家族や親せきなどの親族が保証人となる

各保証制度における督促の流れ

機関保証の場合

  1. 本人への電話による督促
  2. 保証機関への請求
  3. 保証機関から本人への請求
  4. 法的措置

人的保証の場合

  1. 本人または保証人への電話による督促
  2. 法的措置

最終的に 法的措置 に至ると、裁判所の判決次第で 強制執行 となります。
強制執行が行われると、 給与や財産が差し押さえ される可能性があります。

延滞金が発生する

奨学金返済を延滞すると、第一種・第二種を問わず 毎月の返済額に 5%~10%の利息 が加算され、請求は 連帯保証人へ送付 されます。

事故情報が個人信用情報機関へ登録される

奨学金を 3ヶ月以上延滞 すると、信用情報(クレジットカードの契約・借入・返済履歴など)に 事故情報 が記録され、個人信用情報機関(信用情報を管理する機関)に登録されます。

事故情報 とは、一般的に ブラックリストに載る ことを指します。信用情報機関に登録されると、 5年間はクレジットカードやローンの利用ができなくなる ため、金融取引に大きな影響を及ぼします。

ブラックリストを解除するには、 奨学金の返済を完了してから5年が経過する 必要があります。

【番外編】連帯保証人へ迷惑をかける

奨学金を滞納した際に 最も影響を受けるのは連帯保証人 です。奨学金を借りた本人が返済できない場合、 連帯保証人が代わりに全額返済する義務 を負います。これは、連帯保証人が 奨学金を借りた本人と同じ責任を持つ ためです。

前述のとおり、奨学金を借りる際に 連帯保証人になってくれたのは、多くの場合、親や親族 でしょう。もし連帯保証人が経済的に余裕がある場合、恨まれるだけで済むかもしれません。
しかし、 連帯保証人が経済的に苦しい状況 であれば、自己破産を検討せざるを得ないケースもあり、その結果 社会的信用を失う可能性 もあります。

奨学金の返済に困っている方へ

奨学金を返済できないと、 保証人に迷惑がかかる など 5つのリスク があります。
こうしたリスクを回避するためにも、まずは 【救済制度】 を把握しておきましょう。

奨学金(借金)を延滞し始めた理由ベスト3

日本学生支援機構のデータをもとに、奨学金を返済できない理由を3つ ご紹介します。
(引用:平成27年度奨学金の返還者に関する属性調査結果【概要】|日本学生支援機構)

第1位:家計の収入減

景気の影響などで 収入が減少し、奨学金を延滞してしまったケース です。収入の減少により生活が厳しくなり、奨学金の返済に充てる余裕がなくなったことが延滞の原因 となりました。

第2位:家計の支出増

趣味にお金を使うのはもちろん、Amazonなどのネットショッピングの普及 により、気軽に購入できる環境が整っています。最初は「見るだけ」と思っていても、ついつい欲しいものを買ってしまい、気づかないうちに家計の支出が増えている こともあります。

また、以前より減少傾向にあるものの、会社の人との飲み会(飲みにケーション) などで、意外とお金を使う機会も少なくありません。

第3位:多忙だった

複数の口座を持っている人 は、仕事が忙しいと 入金を忘れてしまうこと もあるでしょう。これは、奨学金の返済用口座と、会社で指定された給与振込口座が異なるケースが少なくない ためです。

給料が振り込まれる口座と 奨学金の引き落とし口座が別 だと、忙しさのあまり 資金を移すのを忘れてしまう ことが、延滞の原因になることもあります。

借金としての奨学金を返済するために必要な知識

奨学金を返済するためには、「借り入れている意識を持つ」こと と、「奨学金の返済とは別に生活プランを立てる」こと が重要です。

借金をしている自覚を持つ

世間一般では 奨学金が借金であるという認識が薄いため、借り入れているという意識を持ちにくいものです。
しかし、ローンを組むのと同じように、借金をしているという事実を認識することが、返済計画を立てるための第一歩 となります。

奨学金の返済は生活プランとは別で立てる

奨学金を返済するための計画を立てるには、以下のポイントを確認しながら 返済の道筋を考える ことが大切です。

  • 毎月の収入(手取り)
  • 最低限必要な生活費
  • 返済総額
  • 毎月の返済金額
  • 返済期間

これらを踏まえて、無理のない返済計画を立てましょう。

例 新卒の会社員

奨学金返済のシミュレーション

以下の条件で返済計画を立てた場合の計算例です。

  • 収入:17万円(上述の表を基に)
  • 生活費:10万円
  • 返済総額:300万円
  • 年間の返済額(288万円を基準):17万円(「返済期間」より)

毎月の返済金額の計算

17万円 ÷ 12ヶ月 = 14,166円

返済期間の計算

300万円 ÷ 14,166円 = 約212ヶ月(17年8ヶ月)

月々の余剰金

収入 17万円 - 生活費 10万円 - 毎月の返済金額 約1万4千円 = 5万6千円

この 5万6千円は、貯金やその他の支出に充てることが可能 ですが、奨学金の返済は 17年以上続く ため、貯蓄を意識することが重要 です。

奨学金を返さない場合に起こる3つの事態

奨学金の返還を滞納した際に考えられる影響は、大きく分けて 3つの事態 があります。

この項目では、それぞれの内容について詳しく解説していきます。

【1つ目】延滞金が発生する

約束の 返還期日までに返済されない 場合、延滞金が発生します。令和2年3月28日以降は、1.5%の割合を乗じて計算された額 が賦課される仕組みとなっています。

クレジットカードの延滞金と同様の仕組みですが、金利は比較的低め です。しかし、延滞が続くと 返済の負担がさらに大きくなる ため、十分な注意が必要です。

【2つ目】個人信用情報機関に記録される

支払いをせずに 3カ月を過ぎる と、個人信用情報機関に登録 されることになります。簡単に言えば、「ブラックリスト入り」 するということです。

一度登録されると、金融機関から信用度が低いと判断 され、必要なときに お金を借りることができなくなります。そのため、住宅ローンや自動車ローンを組むことが難しくなり、クレジットカードの作成や利用も審査に通らない 可能性が高くなります。

なお、登録情報は 金融機関のみに共有 されるため、友人などに知られることはありません。しかし、一度登録されると 情報が消えない限りこの影響は続き、さらに深刻な事態を引き起こす可能性 もあるため、早めの返還が不可欠です。

【3つ目】差し押さえや訴訟が行われる

延滞期間が長期化すると、日本学生支援機構では 3カ月の延滞で個人信用情報機関に登録 され、延滞4カ月~9カ月の間に債権回収会社(サービサー)へ回収業務が委託 されます。この段階では、個別の返還指導や返還期限猶予制度の案内 などが行われます。

しかし、債権回収会社による返還指導を受けても、連絡が取れず、入金もなく、返還期限猶予制度の申請もされない場合、日本学生支援機構から 「裁判所へ支払督促申立を行う」旨の文書 が送付されます。さらに、その後も 返還猶予の手続きや入金がなければ、裁判所での手続きが実行 されます。

差し押さえの対象

裁判所の手続きが進むと、給料・不動産・家財道具などの財産が差し押さえ られ、これを拒否することはできません。さらに、対象は 本人だけでなく連帯保証人の財産にも及ぶ 可能性があります。

貸与型奨学金は 借金であり、返還義務がある ため、長期間の延滞は 訴訟や財産の差し押さえ、さらには自己破産 につながる可能性もあります。延滞を軽く考えず、早めの対応を心がけましょう。

もし滞納してしまった場合の対応方法について解説

奨学金の返還は、前の章で解説したように 非常に重要 です。しかし、中には 病気で働けなくなったり、突然の解雇で失業したりして、経済的に困窮してしまう方 もいます。また、災害に見舞われ、返還が難しくなる ケースも考えられます。

こうした状況に対応するため、日本学生支援機構では 返還が困難になった人のための救済措置 をいくつか用意しています。

ここでは、その中から 2つの救済措置 について詳しく解説します。
奨学金の延滞を避けるためにも、余裕をもって日本学生支援機構に相談 しましょう。

現在、支払いの負担に悩んでいる方 や、今後に備えて情報を知っておきたい方 は、ぜひご確認ください。

【対応方法1】奨学金を借りた機関に相談すること

奨学金の返済が難しいときは、まず相談を!

奨学金の返済が困難になった場合、まずは奨学金を借りた機関に相談 しましょう。日本学生支援機構では、「奨学金相談センター」(ナビダイヤル 0570-666-301)を設けており、救済措置として「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」 を利用できます。


① 減額返還制度

例えば、「毎月 10,000円 の返済が厳しいが、半額の 5,000円なら返済できる」という場合、この制度を利用できます。

減額返還制度の概要
  • 対象:災害、傷病、その他経済的な理由で返済が困難な方
  • 内容:申請により、月々の返済額を 1/2 または 1/3 に減額可能
  • 注意点:返還総額は変わりませんが、返還期間は長くなる
  • 適用期間:一回の申請につき 12カ月(最長 15年(180カ月) まで延長可)
  • 利用不可:所得連動返還方式を選択している場合は適用外
  • 重要事項
  • 延滞すると審査対象外 となるため、必ず延滞前に申請 すること
  • 減額期間中に2回連続で振替不能 になると、適用が取り消され、遡って延滞扱い になる

② 返還期限猶予制度

奨学金の返済が 災害、傷病、経済困難、失業、生活保護受給中 などの理由で困難になった場合、返還期限を延長できる制度 です。

返還期限猶予制度の概要
  • 対象:災害、傷病、経済困難、失業、生活保護受給中 など
  • 内容:申請により、返還期限を1年間猶予(毎年更新が必要)
  • 適用期間通算10年まで(一部の事由により制限なし)
  • 注意点:先延ばしにした分 返還完了は遅くなるが、利息を含めた総返還額は変わらない
  • 延滞中の申請
  • 延滞している場合、延滞開始年月から 1年ごとに猶予願・証明書を提出 する必要がある

③ 収入基準を満たしているか事前確認を!

どちらの制度も利用するには 収入基準 を満たしている必要があります。詳細は、事前に確認しましょう。
(出典:日本学生支援機構「減額返還・返還期限猶予リーフレット」)


④ 返還免除制度について

特別な事情により返還が困難になった場合、返還を免除する制度 もあります。

  • 死亡、精神・身体の障害 により返還ができなくなった場合、申請により返還免除 される
  • 大学院で受けた第一種奨学金 については、「特に優れた業績による返還免除制度」を設けている

奨学金の返済が難しくなった際は、早めに相談し、利用できる制度を活用することが重要 です。

【対応方法2】自己破産を申請する

自己破産とは?借金をゼロにするための手続き

自己破産を申請し許可を得ると、「借金をなしにする」ことが可能 になります。つまり、借金をゼロにし、経済的にリスタートを切ることができる制度です。

ただし、借金をゼロにするには 「免責許可」 を得る必要があります。これは、裁判所に申し立てを行い、認められることで免責が許可される 仕組みです。

免責許可が認められないケース

すべての申請者が 必ず免責を受けられるわけではありません。以下のようなケースでは、免責許可が下りない可能性 があります。

  • 最初から返済する意思のない借金
  • 自己破産を前提として行われた借金

自己破産の影響

自己破産をすると、個人信用情報機関に登録 されます。これは、滞納時と同じ扱い になり、以下のような制限が発生することを覚えておきましょう。

  • ローンを組むことができなくなる
  • クレジットカードの新規発行・利用ができなくなる
  • 金融機関からの借り入れができなくなる

保証制度の選択に注意

奨学金を借りる際、保証制度として 人的保証 を選択した場合、本人が自己破産しても、連帯保証人や保証人の責任は免れません

このような事態を防ぐため、保証制度は機関保証を選択することを検討 するとよいでしょう。

奨学金の返済が困難な場合に利用できる制度

奨学金の返済が難しい場合は、利用できる制度を活用しながら返済計画を立てること が大切です。

日本学生支援機構では、以下の 3つの制度 を利用することができます。

  • 減額返還制度
  • 返還期限猶予
  • 返還免除制度

減額返還制度

減額返還制度とは?

減額返還制度 は、奨学金返済者の負担を軽減するために、毎月の返済額を2分の1にする制度 です。

減額返還制度の特徴

  • 毎月の返済が半額になる(制度利用中のみ適用)
  • 返済金額の総額は変わらない
  • 1回の申請で適用期間は1年間(最大10年まで利用可能)
  • 利用した期間分、返済期間が長くなる

減額返還制度を利用するための条件

以下の 収入基準 を満たすことが必要です。

  • 年間収入金額:325万円以下(税込)
  • 年間所得金額:225万円以下(必要経費控除後)

控除について
1人につき 38万円の収入所得控除 が適用されます。
例えば、年収が350万円あったとしても、配偶者が1人いる場合 は、
350万円 - 38万円 = 312万円 として計算されるため、減額返還制度の利用が可能 となります。

返還期限猶予制度

返還期限猶予制度とは?

返還期限猶予制度 は、奨学金の返済を一時的に停止できる制度 です。

この制度には以下の 2種類 があります。

  • 一般猶予
  • 所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予

制度利用中は無利息で適用されるため、返済総額は変わりません
ただし、返済を停止した期間分、返済完了までの期間が延びる ことになります。

一般猶予

災害・病気・経済的な理由で奨学金の返済が困難な場合 に利用できる制度です。
1回の申請で1年間返済を停止 でき、最大で10年間の延長が可能 です。

所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予

所得連動返還無利子奨学金制度とは?

第一種奨学金の利用者のみが対象 の制度で、一定の収入を得るまで返還期限を延長できる 仕組みです。

一般猶予との大きな違い は、猶予期間に制限がない ことです(ただし 1年ごとの申請が必要)。

返還期限猶予制度を利用するための条件

以下の 収入基準 を満たしていることが必要です。

  • 年間収入金額:300万円以下(税込)
  • 年間所得金額:200万円以下(必要経費控除後)

返済計画を立てるために手助け制度を利用

制度を活用し、確実に返済できる計画を立てましょう

奨学金の返還を支援する制度を利用しながら、完済の目途が立つ返済計画をしっかり立てることが重要 です。
なぜなら、制度には利用期限が定められているため、適用期間が終了した際に返済の見通しが立っていないと、延滞によるリスクを負うことになってしまう からです。

延滞時のリスクについては前述の通り 決して軽いものではありません。そのため、減額返還制度や返還期限猶予制度を利用する前に、しっかりと返済計画を立てること をおすすめします。

また、奨学金だけでなく 他の借金で悩んでいる方も、効果的な借金返済計画の方法を試してみることで、新たな解決策が見つかる可能性 があります。

奨学金を返さなくてもよい場合もある!

ここまで、奨学金の返済に関する注意点や対処法について解説してきましたが、返還不要の奨学金返済を支援する制度 も存在します。

この章では、以下の 3つの制度 について紹介します。

奨学金の給付型

給付型奨学金とは?

給付型奨学金 とは、返済義務のない奨学金 で、支給された金額を返済する必要がありません。
ただし、この奨学金を受けるには厳しい条件をクリアする必要があります

給付の条件には、成績や家計の状況などが考慮される ため、返済義務がない分、受給のハードルは非常に高い のが特徴です。


日本学生支援機構の給付奨学金

日本学生支援機構が提供する 「給付奨学金」 は、住民税非課税世帯およびそれに準じる世帯の学生 が対象です。
また、この奨学金は 入学金・授業料の減免とセット になっている点が特徴的です。

しかし、以下の場合には 支給済みの給付奨学金の返還を求められることがある ため、注意が必要です。

  • 退学・除籍・無期停学、または3カ月以上の停学になった場合
  • 学業成績が著しく不良で、やむを得ない理由がない場合

日本学生支援機構の 給付奨学金は、多くの学生に利用されている代表的な給付型奨学金の一つ です。
返済不要の支援を受けられる一方で、厳格な条件があるため、申請前にしっかりと確認しておきましょう。

免除制度(返還)

特定条件を満たすことで奨学金の返還が免除される制度

特定の条件を満たすことで、奨学金の返還額の一部または全額が免除される制度 があります。

主に 医療・福祉系を目指す学生向けの就学支援制度 では、以下の条件を満たすことで貸与された奨学金の返還が免除 されます。

  • 指定の養成施設を卒業
  • 国家資格(※)を取得
  • 指定された施設で一定期間勤務

このような制度を利用するには、志望校や勤務先が提供する奨学金制度について、事前に情報収集をしておくことが重要 です。

対象となる資格の例

  • 医師
  • 薬剤師
  • 看護師
  • 理学療法士
  • 社会福祉士
  • 介護福祉士
  • 保育士

また、日本学生支援機構では、以下のような免除制度もあります。

  • 「死亡、精神もしくは身体の障害による免除」
  • 「大学院第一種奨学金の特に優れた業績による免除」

奨学金の免除制度を活用することで、将来の負担を軽減できる可能性があるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。

企業による奨学金返還支援(代理返還)制度

企業の奨学金返還支援(代理返還)制度とは?

企業の奨学金返還支援(代理返還)制度 とは、貸与型奨学金を利用している人に対し、勤務先企業が返還を代わりに行う制度 です。

企業が奨学金の返還を肩代わりすることで、社員側は経済的負担が軽減され、働くモチベーションの向上 につながります。
また、企業側にとっても 人材確保や離職防止といったメリットがある ため、近年この制度を導入する企業が増えています。

さらに、地方公共団体と地元の産業界が協力し、地元企業に就職した人の奨学金返還を支援する仕組み もあります。
これは 「地方公共団体による奨学金返還支援制度」 として提供されており、地域の人材定着を目的とした支援策の一つです。

まとめ

奨学金の利用と返還の重要性

奨学金を利用することで、経済的に困窮している学生でも進学が実現可能 になります。
しかし、奨学金は借金と同じ であり、返還には義務が伴います

もし返済ができなくなった場合、以下のような 大きなリスク が発生します。

  • 返還額の増加(延滞金の発生)
  • ブラックリスト入りし、新たな借入ができなくなる
  • 財産の差し押さえ

返還が困難な場合の対応策

一方で、病気・失業・災害など、やむを得ない理由で返還が難しくなるケース もあります。
そのような場合、日本学生支援機構では以下の制度を設けています。

  1. 返還期限猶予制度:返還の期限を一時的に先送りにする制度
  2. 減額返還制度:返還期間を延ばし、ひと月あたりの返還額を減らす制度

これらの制度を利用することで状況が改善する可能性があるため、まずは奨学金を借りた機関に相談 してみましょう。


最終手段としての自己破産

相談をしても 返還が困難な場合、最終的な法的手段として 「自己破産」 を選択することになります。
ただし、自己破産には大きな影響が伴うため、滞納を避けることが最善の対策 です。


事前の情報収集が重要

奨学金には、返済義務のない「給付型奨学金」 や、
企業が返還を肩代わりしてくれる制度、返還額の一部または全額が免除される制度 もあります。

これらの制度を利用したい場合は、事前にしっかりと情報収集を行い、自分に合った奨学金を選択することが重要 です。