特定調停

特定調停とは

特定調停とは、弁護士や司法書士などの専門家に依頼せず、債務者本人が手続きをする債務整理方法です。

債務者本人が簡易裁判所に申し立てを行い、裁判所を通じて債権者と交渉をします。

特定調停の条件

特定調停を利用する条件は、借金の返済ができないほど経済状況が困窮している人です。よって、以下のような人は特定調停が認められる可能性が低いです。

  • 同居する家族がいる
  • ある程度の収入がある

同居する家族がいる場合は、借金の弁済をお願いできる可能性があります。

たとえば、夫が妻に内緒で借りていたカードローンの返済に困っているので特定調停をしたい、という場合は認められません。

また、ある程度の収入がある場合生活内容を見直すと返済に充てられるため、特定調停が認められない可能性が高いです。

たとえば、所得自体が高い、家賃や保険料などを見直せば返済にあてられる、などです。

特定調停の手順

特定調停は債務者本人がすべて手続きを行います。特定調停の手順は以下の通りです。

1簡易裁判所に申し立てを行う

2申し立て受理後に必要書類を作成する

3事情聴取期日に裁判所へ行く

4調整期日に裁判所へ行く

5合意となれば合意調書が作成され、返済がはじまる

簡易裁判所へ申し立てを行う

特定調停は、相手(債権者)側の裁判所に申し立てを行います。ただし、多くの場合自分(債務者)の居住地にある簡易裁判所への申し立ても認められているので、裁判所に問い合わせてみましょう。

申し立て受理後に必要書類を作成する

裁判所に申し立てが受理されると、提出する書類作成が必要です。書類は裁判所から郵送されてくるものもあれば、裁判所に用意されているひな型を使って作成するもの、相手側から郵送されてくるものなどもあります。

必要となる書類は裁判所によって異なります。必要となる書類の一例は以下の通りです。

  • 特定調停申立書
  • 権利関係者一覧表
  • 資格証明書
  • 財産状況の明細書
  • 収入・支出の分かるもの(月単位の家計表、給与明細、家計簿、通帳のコピーなど)
  • 借入内容が分かるもの(契約書、請求書などのコピー)
  • 返済の分かるもの(領収証)

書類作成では、正確かつ詳細な記載が求められます。収入や支出についても金額や内容をこまかく記述するようにしましょう。

事情聴取期日に裁判所へ行く

特定調停は、債務者本人が指定の期日に裁判所へ足を運んで進んでいきます。まずは調停委員が申立人(債務者本人)に生活状況や収入、今後の返済方法などについて聴取をします。申立人が特定債務者に該当するか、債権者への説得材料になるかを判断するためです。

調整期日に裁判所へ行く

債務者と債権者の間で返済方法などを調整するために、調整期日へ裁判所に行きます。ただし、債権者本人が裁判所へ来るのはまれで、多くは電話による調整になります。調整委員は債権者が提出した債権額計算書をもとに、申立人との総債務額を確定します。そして申立人が返済可能な弁済計画案を立てて、合意を目指します。

合意となれば返済がはじまる

合意となった場合、相手側が参加していれば調停調書が作成され、電話参加の場合は合意

内容がそのまま裁判所の決定(17条決定)となります。合意とならない場合は、そのまま特定調停手続きを終了するか、裁判所が相当と考えた分割返済計画を17条決定するかになります。

申し立てから合意または終了までの期間は、およそ2カ月です。

特定調停のメリット

特定調停のメリットは以下の通りです。

  • 自分でできる
  • 費用が安く済む
  • 借金が減額できる
  • 債権者を選べる

自分でできる

特定調停は弁護士などに依頼せず、自分で手続きを進める方法です。手続き方法は裁判所の書記官が教えてくれます。

また、実際の調停は調停委員会が間に入って主導するので、借入先と直接交渉せずに済みます。

費用が安く済む

特定調停はもともと弁護士などに経済的な理由で依頼できない人のためにできた債務整理方法です。

弁護士などへの依頼費用がかからず、費用を安くおさえられます。具体的な費用は借入先1社あたり500円の手数料と、郵送費用2,000円ほどです。

引き直し計算による借金減額

特定調停は、任意整理と同じく引き直し計算を行います。

利息制限法の上限金利までさかのぼって計算し、不当な利息を取られていた場合には借金を減額できる可能性があります。

合意する債権者を選ぶことができる

特定調停は、任意整理と同じく合意する債権者を選べます。車のローンなど担保がついている債権を外せば財産を手放す必要はありません。

また、保証人がついている借入をはずせば、保証人に弁済の必要がなくなります。

特定調停のデメリット

特定調停には以下のデメリットがあります。

  • 債権者からの取り立てが止むまで時間がかかる
  • 過払い金の返還が受けられない
  • 差し押さえが簡単にされてしまう
  • 調停委員が債務整理の専門家でない場合がある
  • 調停が成立しない場合がある

債権者からの取り立てが止むまで時間がかかる

特定調停を申し立てると、取り立てはストップします。

ただし、自分で書類を作成して提出する必要があるため、書類作成などで時間がかかった場合取り立ては続いてしまうのです。

任意整理は弁護士に依頼するとすぐに取り立てはストップしますが、特定調停は書類提出のタイミングが遅れると、取り立てがしばらく続く場合があります。

過払い金の返還が受けられない

特定調停は引き直し計算によって過払い金が発生していることが分かっても、特定調停内で過払い金の請求はできません。

別途過払い金請求の手続きが必要です。

差し押さえが簡単にされてしまう

特定調停で合意にいたると、調停調書が作成されます。調停調書により、債権者は強制執行が可能です。

万が一調停調書どおりの返済ができなくなった場合、すぐに強制執行となり給料の差し押さえなどを受けてしまう可能性があります。

調停委員が債務整理の専門家でない場合がある

調停委員はかならずしも債務整理の専門家というわけではありません。

引き直し計算をしない、将来利息がついたまま、など返済計画が債務者にとって不利なものになってしまうことがあります。

調停が成立しない場合がある

特別調停に債権者が合意しなかった場合は、調停不成立となり債務整理ができません。

不成立となった場合は、任意整理などほかの債務整理方法に切り替えて一から手続きをする必要があります。

また、調停の成立日まで利息や延滞遅延金は発生しています。調停不成立となった場合もこれらの利息や延滞遅延金は支払う必要があります

まとめ

特定調手は、自分で手続きをするため費用をおさえたい人に向いています。

ただし、自分で手続きが難しく、裁判所に平日足を運ばなければいけないため面倒な面も多いです。

手続きの手間や面倒があるにも関わらず、調停が成立する確率は高くありません。

そのため、特定調停の件数は減少傾向にあります。

ただ費用がかからないからという理由で特定調停を考えているなら、弁護士などに依頼する任意整理をはじめとした債務整理方法のほうが結果的に有利となる可能性が高いです。

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