特定調停にはどれくらいの費用がかかる?他の債務整理よりも安く抑えられる?

特定調停はもともと弁護士などに依頼できない人の債務整理方法のため、費用はほかの方法よりも低めになっています。

ただし、特定調停自体は弁護士への依頼も可能です。自分で行う場合と、弁護士などに依頼する場合とでかかる費用を解説します。

特定調停にかかる費用

印紙代・切手代

印紙代と切手代は、自分で行う場合でも、弁護士に依頼する場合でもかならずかかる費用です。

以下の費用は最低限でもかかることを覚えておきましょう。

  • 申立手数料として債権者1社につき500円(印紙代)
  • 裁判所から申立人への書類送付などに使う切手が、債権者1社につき420円
  • 切手代は追加になる場合がある

申立手数料として、債権者1社あたり500円がかかります。500円は収入印紙を購入し、提出する書類に添付して納めましょう。

また、裁判所から債権者あてに書類を送付するさいに使用する切手代として、債権者1社あたり420円がかかります。

切手は手続きの進行状態によって追加となることがあります。

いずれの場合でも、自分で特定調停を行う場合は、収入印紙代と切手代のみでそれほど多くの費用はかからないと覚えておきましょう。

弁護士に依頼した場合

特定調停は弁護士への依頼も可能です。ただし、上記の収入印紙や切手代のほか、弁護士への依頼費用もかかります

特定調停を弁護士へ依頼した場合の費用の相場は、10~30万円です。

特定調停を弁護士に依頼すれば、書類の作成や裁判所の出廷など、すべての手続きを弁護士に代行してもらえます。

自分で手続きをする時間がない人や、手間を省きたい人には有効です。ただし、費用が安くなるという特定調停のメリットが失われることになります。

弁護士へは、ほかの債務整理方法も依頼できます。

たとえば、特定調停と同じく債権者を選択して手続きできる、引き直し計算をするなどの共通点が多い任意整理は、弁護士に依頼すると同時に過払い金請求ができるなどのメリットが得られるのです。

弁護士に依頼する場合は、費用面から見て特定調停ではなく、ほかの債務整理方法を選んで依頼した方がメリットは大きくなります。

特定調停は安いだけでデメリットが多い

特定調停の最大のメリットは、費用を安く済ませられることです。ただし、弁護士へ依頼しない代わりにすべての手続きを自分で行うことになります。

実は、費用を安く済ませられる以外はメリットがなく、デメリットが多いのも特定調停の特徴です。知っておきたい特定調停の5つのデメリットは以下になります。

  • すべて自分でやらなければならない
  • 時間も手間もかかる
  • 調停委員が債務整理専門じゃない場合もある
  • 過払い金請求には別の手続きが必要
  • 周囲にバレる可能性が高い

すべて自分でやらなければいけない

弁護士に依頼しない特定調停は、申立人本人がすべての手続きを行う必要があります。

申立申請書をはじめとした調停に必要な書類の作成から提出まで、場合によっては何度も裁判所に足を運ぶことになります。

また、書類を作成する際には裁判所の職員に聞いたり、ネットなどで情報を得たりと自分で知識をフル活用して作成します。

裁判所から指定された期日への出廷も、自分で足を運びます。期日として指定されるのは、平日です。

平日仕事をしている人の場合、仕事を休んで裁判所に出向く時間を確保しなければいけません。

時間も手間もかかる

すべての手続きを自分でするため、弁護士に依頼するよりも時間も手間もかかります。

その結果、債権者からの取り立てストップが遅れることがあるのです。特定調停は申立申請書を裁判所が受理してから、数日で債権者からの催促や取り立てがストップします。

けれども、申立申請書の作成に時間がかかり、裁判所への提出が遅れるとその分受理するまでの時間が長くなるのです。

当然その間の取り立てや催促は止まりません。

書類を作成したり、裁判所へ足を運んだりするのにも手間がかかります。仕事などで忙しい人は、書類作成や裁判所への出廷のための時間を作らなければいけません。

調停委員が債務整理専門じゃない場合もある

特定調停では債権者と債務者が交渉をして合意を目指しますが、直接交渉はせず調停委員が間を取り持ちます

調停委員が主導で交渉が進むため、債権者と債務者が顔を合わせないように配慮されているのです。

ところが、調停委員が債務整理にくわしくない場合があります。調停委員に任命されるのは、弁護士資格を持っている人ですがかならずしも債務整理が専門というわけではないのです。

引き直し計算が間違っているなど、調停委員によっては債務者側に不利となる可能性があります。

依頼人に依頼された弁護士は、依頼人の利益のために動きます。一方調停委員は任命されて交渉を取り持つだけで、債務者側の利益のために動くわけではありません。

調停員によっては、任意整理よりも条件が不利となってしまうのです。

過払い金請求には別の手続きが必要

特定調停では、任意整理と同じく借入金額の利息制限法の利息への引き直し計算が行われます。

このさい、利息制限法の利息を超えるグレーゾーン金利での貸付があった場合、払いすぎた利息として過払い金返還請求ができます。

ただし、特定調停はあくまで債権者と債務者の合意を目指す調停の場のため、過払い金があっても同時に請求はできません

過払い金がある場合は、特定調停と別に過払い金請求手続きが必要です。

一方、任意整理で引き直し計算によって過払い金があった場合は、残りの借金と相殺するなど同時に手続きができます。

周囲にバレる可能性が高い

特定調停は裁判所からの郵送物などが債務者のもとに郵送されます。

申立申請書には、裁判所からの郵送物の送付先を指定できますが、家族にも勤務先にも債務整理をしたことがバレたくない場合、ほかの親族などを送付先に指定するなど工夫が必要になります。

裁判所からの郵送物を自宅に指定した場合は家族に、勤務先にした場合は勤務先の人に債務整理がバレてしまう可能性があります。

一方、任意整理は弁護士が債務者の代理となるので、債権者からの郵送物はすべて弁護士のもとへ行くため、バレる可能性はほぼありません。

まとめ

特定調停は経済的な理由などで弁護士に依頼ができない人のためにある債務整理方法です。

そのため、自分で手続きをした場合収入印紙と切手代のみで済むので、費用を安くおさえられるメリットがあります。

ただし、特定調停のメリットは費用が安くなることのみです。手続きを自分でするため手間や時間がかかる、調停委員によっては債務者側に不利になる、周囲にバレる可能性があるなどのデメリットが多くなっています。

デメリットの高さから、実際に特定調停をする人は減少傾向にあります。

手間をかけたくない、有利な条件で合意したいなどの理由で特定調停を弁護士へ依頼すると費用がかかるため、費用が安く済む特定調停のメリットがなくなることになります。

一方、弁護士へ依頼するとほかの債務整理方法も選択肢となるため、自分に一番よい形での債務整理が可能です。

費用面のみで特定調停に決めてしまうまえに、自分にとって借金を整理できる最善の方法は何か、弁護士に相談してみましょう。