自己破産したもん勝ち?理由とデメリット・後悔しない対策は?

自己破産したもん勝ち?理由とデメリット・後悔しない対策は?

目次

自己破産は、国が認めた合法的な借金解決方法で、免責を得ることができれば借金をゼロにすることが可能です。そのため、「借金返済ができなくても、自己破産さえすれば大丈夫だ」と考える人もいます。しかし、本当に「自己破産はしたもん勝ち」なのでしょうか?

この記事では、自己破産が「したもん勝ち」と言われる理由や、迷ったときの対処法について詳しく説明します。また、手続き方法や自己破産のデメリットについても解説しますので、自己破産を選ぶべきかの参考にしてください。自己破産にはメリットもあればデメリットもあるため、十分に理解して後悔しない選択をしましょう。

自己破産が「したもん勝ち」とされる理由

自己破産は本当に「したもん勝ち」と言える手続きなのでしょうか。このように考える人々の中には、破産した相手にお金を貸してしまい、最終的にそのお金を返してもらえなかったというケースも存在します。他人の意見に惑わされることなく、なぜ自己破産が「したもん勝ち」と言われるのかを深く考えてみましょう。

借金のストレスから解放される

自己破産が「したもん勝ち」と言われる理由の一つに、借金返済のストレスから解放されることが挙げられます。毎月の返済に悩まされ、精神的に圧迫されていた人々にとって、自己破産によって借金の返済義務がなくなることで、精神的な負担から解放され、心身ともに健康を取り戻すことができます。実際に、このような体験をした人々の中には、「ある意味、自己破産はしたもん勝ちだ」と感じる人も少なくありません。

借金が帳消しになる

自己破産が「したもん勝ち」と言われる最大の理由は、借金がゼロになることです。自己破産をすると、一定以上の財産を手放す代わりに、銀行や消費者金融などの債権者に対する返済義務が免除(免責)されます。借金が100万円であろうと1億円であろうと、免責が認められれば返済しなくても済むことになります。一方、貸した側の債権者にとっては、貸したお金が一切返ってこなくなり、大きな損失となります。自己破産の手続きが開始されると、債権者はその人に対して取り立てを行うことができなくなるため、貸した側からすると非常に厳しい状況です。このような事情から、自己破産は「したもん勝ち」に見えることもあります。

借金の返済催促が停止するため

債権者は、弁護士から受任通知を受け取ると、弁護士が代理人となるため、弁護士以外の者に対して取り立てを行うことはできません。そのため、債務者は借金の取り立てによるストレスから解放され、「してよかった」と感じる方が多いでしょう。

最悪の状況を避けるために必要

自己破産は、借金返済が不可能になった結果、最悪の事態を避けるために必要な手段です。もし自己破産という制度が存在しなければ、借金が膨れ上がり、返済の見込みが立たなくなった人が逃げ道を失い、最終的に自ら命を絶つ可能性も考えられます。実際に、経済的な理由から自殺を選ぶ人も少なくありません。借金が返済できなくなった背景には、事故や病気、会社の倒産、災害など、本人の力ではどうしようもない状況がある場合もあります。そのような状況で、自己破産は「したもん勝ち」という概念ではなく、命を守るために欠かせない制度であると言えます。

政府が認めた借金解決方法

自己破産が「したもん勝ち」と言われる理由の一つに、日本の法律が認めた借金解決方法である点があります。言い換えれば、国のお墨付きで借金をゼロにできる方法だと言えるでしょう。自己破産は「破産法」という法律に基づいて進められます。このため、自己破産を選択することに対して、後ろめたい気持ちを持つ必要はありません。

一方、自己破産と似た行為に「借金の踏み倒し」があります。どちらも借金を返済しないという点では同じですが、借金を踏み倒した場合、社会的立場の保証は一切ありません。返済を完了するまでしつこい取り立てや裁判で財産を差し押さえられるリスクも存在します。

しかし、自己破産は借金返済が不可能になった人を助けるために設けられた救済手段です。借金を返せなくなった結果、最悪の選択をせずに済むよう、日本の法律が認めた手続きです。破産後でも最低限の生活は保障されるため、「自己破産すると人生が終わる」といった心配はありません。

連帯保証人に返済責任が移る

返済不能に陥り自己破産をした場合、連帯保証人がいる借金はそのまま免除されず、連帯保証人に支払い義務が移ります。結果として、連帯保証人やその家族から「借金から逃げるために自己破産して、借金を押し付けるのはずるい」と思われる可能性が高いでしょう。

しかし、連帯保証人は債務者と同じ支払い義務を負っています。つまり、債務者の借金は連帯保証人の借金でもあるということです。感情的には「ずるい」と感じるかもしれませんが、連帯保証人はその権利が非常に強いため、連帯保証人になる前に慎重に考えることが重要です。

自己破産が「ズルい」とされるのは誤解

自己破産が「したもん勝ち」や「ズルい」と思われる原因は、その仕組みに対する誤解にあります。自己破産に関して「手続きさえすれば借金がなくなる」「貸し倒れになる」といったイメージが広まっているためです。

しかし、自己破産には破産法に基づく明確な条件やルールが存在します。借金の理由によっては、免責が認められないこともあり、養育費や慰謝料、税金などは自己破産をしても免除されることはありません。

自己破産は、借金を返済できない人を助ける制度ですが、その目的はあくまで経済的な再建です。債権者が異議申し立てをする権利もあり、債務者が資産を持っていれば、その資産の分配が行われる場合もあります。決して債権者を無視するようなルールではありません。

自己破産とは何か?手続き方法と申立ての条件

では、自己破産とは実際にどのような手続きで、申立ての条件はどのようになっているのでしょうか。

自己破産は借金問題を解決するための最後の手段

前述のように、自己破産は借金問題を解決するための最終手段です。借金解決の方法としては、自己破産のほかに任意整理や個人再生もありますが、これらの方法では、手続き後も返済すべき借金が残るため、現在、返済能力が全くない方には適しません。

一方で、自己破産が適用されるのは、借金の返済が不可能であると判断された場合に限ります。返済ができるだけの収入がない方や、収入に対して返済額が過剰な方にとって有効な手段です。破産法第253条には、破産者が破産手続きによる配当を除いて、破産債権の責任を免れることが記されています。

引用:破産法|e-Gov法令検索
自己破産により、裁判所から免責が認められると、その後の借金(破産債権)に対する返済義務はなくなると規定されています。

申立てを行う人に多い経済的な背景

自己破産を検討する人々の多くには、以下のような経済的背景が見られます。このような状況に該当する場合、自己破産を選択することが適切であると考えられます。

  • 安定した収入がなく、無職である
  • 任意整理や個人再生では完済が難しい
  • 借金返済に充てる財産がない
  • 借金総額が非常に大きい
  • 借金返済のために新たに借入を繰り返している
  • やむを得ない事情で借金をしてしまった

自己破産を選ぶ方々の共通点としては、借金が急激に膨れ上がるか、収入が極端に減少するという状況が多く見られます。また、やむを得ない事情で借金をしたものの、返済が不可能となった方々にも自己破産は適した選択肢と言えます。

申立ての条件

自己破産は借金解決の最後の手段として位置づけられていますが、借金返済ができないからといって必ずしも免責が認められるわけではありません。破産法において、自己破産を申立てるための条件は次のように定められています。

  • 支払不能であること(収入や資産がない、または返済が不可能)
  • 借金が非免責債権に該当しないこと
  • 免責不許可事由に該当しないこと

非免責債権とは、自己破産手続きをしても返済義務が残る借金を指します。また、免責不許可事由は、自己破産で免責が認められない理由を意味します。これらの詳細については、後述で説明します。免責を受けるためには、非免責債権を除いた借金が返済不能または完済できる見込みがなく、免責不許可事由に該当しないことが必要です。

手続きの進め方

自己破産には、破産手続き開始決定とともに破産事件が廃止される「同時廃止」と、免責不許可事由や財産がある場合に破産管財人が選任される「管財事件」の2種類があります。それぞれの手続きについて、詳しく解説します。

同時廃止

同時廃止は、破産者の財産が20万円未満(現金の場合は33万円未満)で、かつ免責不許可事由がない個人の破産に適用される簡便な自己破産手続きです。この手続きは費用や時間が少なく、期間は約4ヶ月~半年で、弁護士費用を含めた費用は20万~40万円程度です。同時廃止手続きは、以下のような流れで進行します。

  1. 弁護士に相談・依頼
  2. 弁護士から受任通知を送付し、取引履歴を開示請求
  3. 取引履歴をもとに、引き直し計算で利息を再計算
  4. 裁判所に自己破産の申立て
  5. 裁判所での面談(裁判官、本人、弁護士)
  6. 破産手続開始・同時廃止決定
  7. 免責審尋
  8. 免責許可決定
  9. 免責許可決定確定

管財事件

管財事件とは、破産管財人が裁判所により選任され、免責不許可事由がある場合や一定以上の財産がある場合に、これらを調査し、財産を債権者に分配する手続きです。また、免責を認めるかどうかの判断も必要となります。この手続きには、7ヶ月から1年以上かかることがあり、破産管財人への予納金として50万円程度の支払いが必要となり、総額で100万円近くかかることもあります。管財事件は以下の流れで進行します。

  1. 弁護士に相談・依頼
  2. 弁護士が受任通知を送付し、取引履歴の開示請求
  3. 取引履歴を基に、引き直し計算で利息の再計算
  4. 裁判所に自己破産の申立
  5. 裁判官との面接(即日面接・開始前尋問)
  6. 破産管財人候補者との面接
  7. 破産手続開始決定
  8. 破産管財人の選任と予納金の支払い
  9. 破産管財人による財産調査・処分
  10. 債権者集会
  11. 破産手続きの終結および廃止
  12. 免責審尋
  13. 債権者への配当
  14. 免責許可決定
  15. 免責許可決定確定

「したもん勝ち」とは言えないデメリットも存在する

自己破産は「したもん勝ち」とは言えないデメリットや注意点があります。自己破産を考えている方は、そのデメリットもしっかり理解しておくことが重要です。

既に返済が不可能な状態にあるため

自己破産は、借金が膨らみすぎて返済が不可能な状態を救済する手段です。借金を返せない状況で自己破産を選ぶことは、決してずるいことではありません。返しきれない借金を抱えると、一生借金を返す生活を送ることになり、終わりの見えない返済にモチベーションも低下するのは避けられません。借金返済を続けることは、日本経済にも良い影響を与えません。再スタートを切るためにも、自己破産は重要な制度と言えるでしょう。

免責されない借金(債務)が存在する

自己破産で免責が認められた場合でも、支払い義務が免除されない「非免責債権」が存在します。自己破産は消費者金融からの借金、クレジットカードの支払い、銀行からのローン、個人からの借金返済を免除する手続きですが、次に挙げる「非免責債権」の支払い義務はなくなりません。このような債務を抱えている場合、支払いを放置していると、最終的に裁判所から差し押さえを受ける可能性があります。

借金がゼロにならない「免責不許可事由」が存在する

自己破産には、申し立てをしても免責が得られない「免責不許可事由」が11項目あります。これらは破産法第252条1項に以下のように規定されています。

  • 債権者を害する目的での財産処分
  • 手続きを遅延させるための不当な債務負担
  • 特定の債権者の利益になるような支払い
  • ギャンブルや浪費が原因の借金
  • 詐欺的な信用取引
  • 帳簿や書類の隠蔽、偽造
  • 虚偽の債権者名簿提出
  • 裁判所への虚偽の説明や拒絶
  • 管財業務への妨害
  • 過去7年以内の免責受給歴
  • 破産法上の義務違反行為

特に、ギャンブルや浪費が原因で借金をして、申立て前に財産隠しを行ったり、返済不能だと分かっていながら借金を繰り返した場合が多く見受けられます。自己破産の申立て時には、裁判所が借金の内容や繰り返し借金を重ねた経緯を徹底的に調べるため、ギャンブルや浪費を理由に借金を作り、自己破産で逃げることは基本的に不可能です。

ただし、「今後は絶対にギャンブルをしない」「生活態度を改める」といった反省の態度が認められれば、裁判所の裁量によって免責が与えられることもあります。この場合、管財事件として扱われ、破産管財人が借金の経緯を詳しく調査し、反省文や家計簿の提出が求められることもあります。そのため、手続きには時間や費用がかかることを覚悟しておく必要があります。

ギャンブルや投資などが原因の借金

ギャンブルや趣味、娯楽、飲食費などの遊興費に多額の借金を使っていた場合、免責は認められません。また、仮想通貨や不動産投資などで自己資産に見合わない投機的な借金も対象となります。

破産を見越した借金

破産すれば免責されると考え、無計画な借金や浪費を繰り返した場合、免責は認められません。

債権者を騙し借入れした借金

実際には返済能力がないにもかかわらず、返済できるように見せかけて相手を欺いて借り入れを行う行為は、免責が認められません。悪質な場合、詐欺罪が適用される可能性もあります。

自己破産は何度も行うことができない

自己破産は、何度も借金をゼロにできる手続きではありません。破産法において、免責不許可事由として「過去7年以内に免責を受けたことがある」と定められており、1回目の自己破産から7年以内に2回目の自己破産は認められません。仮に7年以上が経過した場合でも、2回目以降の自己破産は非常に厳しくなる可能性が高いです。法律上、自己破産に回数制限はありませんが、同じ理由で再度自己破産を申立てると「前回から反省していない」と見なされ、免責が認められないことが多いです。さらに、2回目以降の自己破産は管財事件として扱われます。自己破産は気軽に繰り返すことのできる手続きではなく、「借金で困ったら何度でも自己破産すればよい」という考え方は誤りです。

個人の信用情報に傷がつく

自己破産のデメリットの一つとして、信用情報機関に「事故情報」として記録が残ることがあります。信用情報機関には、個人のクレジットやローンの申込、契約、利用履歴などが保存されています。自己破産をすると、この情報が5年から10年にわたり「事故情報」として掲載されることになります。これがいわゆる「ブラックリスト状態」や「信用情報にキズがつく」状態です。この期間中は、以下のような申し込みや取引ができなくなります。

  • 新規クレジットカードの発行ができない
  • 既存のクレジットカードが使用できなくなる
  • 新規ローンを組むことができない
  • 携帯やスマホの分割購入ができない
  • 保証人になれない
  • 家賃保証会社を通じた賃貸契約ができない

特に、現代はキャッシュレス社会であるため、クレジットカードが使えないと以下のような影響を受けることがあります。

  • ETCカードが利用できない
  • 公共料金や家賃のカード支払いができない
  • ネットショッピングが困難になる
  • 海外旅行で不便を感じる

自己破産によって借金問題は解決しますが、その影響で最大10年間、信用情報に事故情報が残り、この期間中はクレジットカードを作れない、ローンを組めないといった不便が生じます。また、就職や結婚など今後の人生にも影響を与える可能性があるため、慎重に考慮する必要があります。

税金・社会保険料

住民税や国民年金保険、国民健康保険などの社会保険料は、自己破産をしても免除されません。借金返済が困難になると、税金や社会保険料の支払いが滞りがちです。「自己破産で全ての借金がなくなる」と安心してしまうかもしれませんが、税金や社会保険料の支払い義務は残ることに注意が必要です。これらの支払いを滞納し続けると、金額が膨らむことがあります。支払いが難しい場合は、税務署や自治体の窓口に相談すると、支払猶予や分割払いが可能なこともあります。まずは担当者に相談してみることをおすすめします。

慰謝料・養育費

慰謝料や子どもへの養育費は、自己破産をしても支払い義務がなくなることはありません。また、別居時に支払う婚姻費用や、重過失に基づく損害賠償請求権も同様に支払い義務が残ります。これらの非免責債権は、特定の債権者を保護したり、公共の利益を守るために、法律で免責を認めないと定められています。さらに、罰金や過料も非免責債権に該当し、これらの支払い義務は免除されません。未払いの債務がある場合、自己破産後も確実に支払う必要があることを忘れないようにしましょう。

ヤミ金からの借金

非免責債権には該当しませんが、闇金からの借金は自己破産で免除されません。なぜなら、闇金からの借金は法律で認められた借金ではないためです。闇金業者は違法な高金利で融資を行い、ほとんどの場合、利息制限法を超えた金利を設定し、貸金業者としての登録もしていません。自己破産は、法律に基づいた正当な借金に対してのみ免責が認められる手続きであり、闇金からの借金はその対象外となります。そのため、闇金から借りたお金については自己破産をしても免責されません。もしも闇金からの借金が多い場合、自己破産以外の方法で解決することを考えるべきです。

一定額以上の財産は処分しなければならない

自己破産をしても最低限の生活は可能ですが、一定以上の価値がある財産を手放す必要があります。破産管財人がそれらの財産を現金化し、債権者への返済に充てるためです。一般的に、20万円以上の価値があるとみなされる次のような財産は処分されることになります。

  • 99万円以下の現金
  • 不動産
  • 車やバイク
  • 株式などの有価証券
  • FXや暗号資産
  • 貸付金や売掛金などの債権
  • 貴金属やブランド品
  • 一部の退職金
  • 生命保険や個人年金の解約返戻金

もし今まで高価な車やマイホームに住んでいた方は、自己破産後は全く違った生活を送ることになります。しかし、すでに処分するべき財産がない場合、生活に必要な財産は「自由財産」として保持できるため、破産後も生活への影響は少ないと言えるでしょう。

手続き中に制約が生じる場合がある

自己破産手続き中には、以下のような制限が適用されることがあります。

職業や資格に対する制限

自己破産申立から免責許可決定が下りるまでの期間、特定の職業に就くことが制限される「資格・職業の制限」が課せられることがあります。該当する職種には、以下のようなものがあります。

  • 弁護士、弁理士、司法書士、行政書士、税理士、公認会計士、不動産鑑定士などの士業
  • 生命保険募集人
  • 貸金業関連職
  • 質屋業務
  • 警備員
  • 宅地建物取引主任者
  • 旅行業務取扱管理者 など

これらの職業に従事している場合、自己破産を申し立てると、所属団体の規定に基づき、一時的に資格停止処分や業務停止命令が下されることがあります。自己破産手続きが完了し免責が許可されると、これらの制限は解除されますが、その期間中は休職や部署異動を余儀なくされる場合もあります。

移動に対する制限

破産手続き中には、引っ越しや海外旅行などの移動に制限がかかることがあります。これは破産法第37条に基づいています。具体的には、次のように規定されています。

(破産者の居住に関する制限)
第三十七条 破産者は、裁判所の許可を得ずに居住地を離れることはできない。
(引用元:e-GOV法令検索|破産法)

しかし、完全に移動が不可能というわけではありません。弁護士や破産管財人を通じて裁判所の許可を得ることで、引っ越しや旅行は可能です。

郵便物の受領

破産者の財産を清算するため、裁判所の許可を得て破産者宛の郵便物が破産管財人に転送されることがあります。破産管財人とは、裁判所が選任した人物で、破産者の財産を管理・処分する権限を持っています。通常、弁護士が破産管財人に選任されます。なお、破産手続きとは関係のない個人的な手紙などの郵便物は、基本的に破産管財人から受け取ることができます。

手続きには一定額の費用がかかる

債務整理を行うためには、自己破産だけでなく、ある程度の費用が必要です。以下は、それぞれの債務整理にかかる費用の相場です。

債務整理方法弁護士費用裁判所費用
任意整理債権者1件当たり 5万~10万円
個人再生40万~60万円20万~30万円
自己破産20万~50万円2万~60万円

任意整理は裁判所を通さず、債権者1件ごとの費用が変動します。一方、個人再生や自己破産はそれぞれ異なる特則や種類に応じて、弁護士費用と裁判所費用が異なります。もし債務整理の費用を工面するのが難しい場合、「法テラス」に相談することで、弁護士費用を立て替えてもらえる可能性もあります。

官報に氏名や住所が記載される

自己破産をすると、「官報」に氏名や住所が掲載されるというデメリットがあります。官報とは、政府が発行する機関誌で、紙媒体として購入できるほか、インターネットでも閲覧可能です。債務者の氏名や住所、破産手続きの内容や日時は以下のタイミングで掲載されます。

  • 破産手続き開始決定時
  • 破産手続き廃止決定または終結決定時
  • 免責許可決定時

官報に個人情報が掲載されるのは、罰則目的ではなく、自己破産の事実を知らない債権者に通知したり、反対意見を募るためです。一般の人々が官報にアクセスする機会はほとんどなく、主に金融機関や一部の職業の人々が閲覧するものです。そのため、官報によって自己破産の事実が職場や周囲に知られる可能性は非常に低いと言えます。

クレジットカードを作ることができなくなる

審査でブラックリストが確認されると、「支払いができずに自己破産した」という情報がわかり、支払い能力に不安があると見なされて審査に落ちてしまいます。クレジットカードは後払いの仕組みを採用しているため、金銭的に信頼できない顧客とは取引しないのです。カード会社は、後先を考えずにクレジットカードを使い過ぎて支払いができなくなる事態を避けたいと考えているためです。

また、クレジットカードの滞納が原因で自己破産した場合、カード会社独自のブラックリストに登録されていることがあります。もしもそのようなリストに載っていた場合、同じカード会社や系列の企業では、10年以上経過しても審査に通らない可能性があるので注意が必要です。

分割払いが使用できなくなる

クレジットカードの作成と同様に、ブラックリストに載っているために分割払いが断られることがあります。分割払いも「後払い制度」を採用しているため、滞納のリスクが高いと見なされると審査に通らなくなります。もし分割払いが利用できなくなると、スマホや家電などの高額商品を一括で購入する必要が出てきます。どうしても欲しいものがある場合は、貯金をしてから購入することを考えましょう。

保証人に負担がかかる

自己破産をすると、保証人や連帯保証人に大きな負担がかかる可能性があります。特に親が保証人となっていることが多い奨学金の場合、自己破産により借りた本人の返済義務は消えますが、代わりに親に支払い請求が行くことになります。

保証人に返済義務が移行すると、法的には奨学金の残りの金額が一括で請求されるため、親の負担は非常に大きくなります。一括で返済できない場合、親も自己破産を選ばざるを得なくなることがあります。

保証人や連帯保証人がついている借金で自己破産を考えている場合は、必ず事前にその旨を相談し、状況を十分に理解してもらうことが重要です。

結婚や職業への影響

自己破産後の結婚や仕事への影響を心配する人もいます。一般的には、自己破産が理由で解雇されることはありませんが、業界や役職によっては信用度の低下が原因で再就職が難しくなることがあります。特に、以下のような職業は個人の信用情報に大きく影響を受けるため、雇用継続や再就職が困難になる場合もあります。

  • 銀行員
  • 証券会社の社員
  • 保険会社の代理店
  • 法律関係の職業
  • 企業の経営者や役員

また、結婚についても、相手やその親族からの反対や影響がある可能性があります。特に、結婚後に自己破産の事実が発覚した場合、信頼関係に亀裂が入ることも考えられます。自己破産後に結婚を考える場合は、事前に相手に相談したり、伝えたりすることをおすすめします。

周囲の信頼を失うリスク

自己破産をすると、周囲の人々からの信頼を失うリスクがあります。事故情報が信用情報に登録されることで社会的な信用が低下する可能性も否定できませんが、特に家族からの信頼を失い、辛い思いをする場合もあります。信用情報に登録された事故情報は一定の期間が過ぎると消え、社会的な信用を回復することは可能です。

しかし、家族の信頼を取り戻すには、さらに長い時間が必要となることがあります。特に自己破産は同居している家族にも一定の影響を与えるため、家族の信頼を失わないようにするには、自己破産のデメリットをしっかりと理解し、借金の問題を隠さずに家族に打ち明け、その上で自己破産を考えていることを伝えることが大切です。もし他の債務整理の方法が可能であれば、専門家に相談することも一つの有効な手段です。

自己破産を迷っている方へ・後悔しないための自己破産の選び方・対策

自己破産を決断する際や、自己破産後に「しなければよかった」と後悔しないためには、次に挙げる点をよく考慮し、専門家の意見を参考にすることが重要です。

自力での返済が極めて難しい

借金が非常に多く、自力での返済が困難な場合、他の債務整理方法では解決が難しいことがほとんどです。このような状況では、借金問題を解消するために、すべての債務を免除する自己破産の選択が最も適切であると言えるでしょう。

職業制限によるデメリットが適用されない

制限される職業に従事している方は、破産手続き中に収入源がなくなる可能性があります。手続き期間中の収入に不安がある方には、自己破産は適していないかもしれません。しかし、もし破産手続き中だけ職業制限を受け入れることができるのであれば、自己破産を選ぶことも一つの選択肢です。

手続きと条件を十分に理解する

自己破産の手続きや費用、条件について十分に理解した上で選ぶことが重要です。自己破産は、借金の返済が不可能になった個人が裁判所に申し立てを行い、返済義務から解放される制度です。ただし、免責を受けるためにはいくつかの条件があり、裁判所に認められなければ免責は許可されません。多くの人が免責できない非免責債権や免責不許可事由に該当するため、自己破産が認められない場合があります。自分が自己破産の条件を満たしているか、しっかり確認しましょう。

破産後の生活に関する情報を収集する

自己破産を後悔しないためには、破産後の生活について事前に情報を集めることが重要です。特に家族がいる場合、生活に与える影響を考慮する必要があります。破産前と同じような生活を維持するために、以下の点を考えたり、情報を集めたりしましょう。

  • 月々の生活費を見積もる
  • 非免責債権の返済計画を立てる
  • 収入減を補う方法を考える
  • マイホームを処分する場合、住まいの確保を考える
  • 家族への影響を考慮し、自己破産の話をするタイミングを決める
  • 生活が困難な場合、生活保護を含む公的支援を検討する

自己破産後、収入が減少する可能性があるため、生活費に必要な金額を事前に把握しておきましょう。また、十分な収入が確保できない場合は、生活保護などの公的支援を利用する選択肢も考えましょう。

弁護士に相談する

自己破産を検討中の方や、自己破産後に後悔したくない方には、債務整理や借金問題に詳しい弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士に相談することで、以下のような点が明確になります:

  • 他の債務整理方法が適しているかどうか
  • 自己破産のメリットとデメリット
  • 手続きにかかる費用
  • 免責許可が得られるかどうかの判断
  • 手続きの流れや期間

可能であれば、借入時の書類など、借金に関する詳細な資料を持参しましょう。早めに相談することが重要です。借金の返済が難しくなる前に相談すれば、自己破産以外の方法を選択する余地があるかもしれません。また、借金返済を放置することで、遅延損害金が増加するなど、状況が悪化していく可能性があります。

「借金返済が厳しい」と感じたら、早急に弁護士に相談することが重要です。

日常生活での不便を解消する方法

自己破産後、信用情報機関に事故情報が記録されるため、日常生活に不便を感じることがあります。この情報は5~10年間掲載されるため、できるだけ不便を避ける工夫が必要です。特にクレジットカードを使えないことによる不便や問題が考えられますが、以下のカードやサービスを利用することで解消できる場合があります。

カード・サービス名内容
デビットカード買い物時に、あらかじめ紐づけた銀行口座から金額が引き落とされます。ブラックリスト状態でも作成可能で、デパートやコンビニ、量販店などで使用できます。
プリペイドカード予めカードに電子マネーを入金し、残高内で使用できます。多くの店舗やネットショップで使用可能ですが、高速道路やガソリンスタンド、一部のホテルでは使用できません。
家族カード破産者以外の同居家族名義で発行されたクレジットカードを使って、破産者もカード利用が可能です。
ETCパーソナルカードデポジット(保証金)を入金しておくことで、ETCカードのように利用できます。利用料金は、指定した銀行口座から引き落とされます。
電子マネーSUICAやPASMO、nanaco、WAONなど、専用カードに入金して利用するものです。ブラックリストでも利用可能です。
スマホ決済QRコードを利用して代金を支払うサービスです。PayPay、LINEPay、auPay、楽天ペイなどのアプリをスマホにインストールすることで利用できます。

さらに、子どもが奨学金を借りる際に保証人になることができない場合、「人的保証」ではなく「機関保証」を選ぶ方法があります。また、賃貸物件を借りる場合、信販系の保証会社を避けることで、ブラックリストに載っていても契約できる場合があります。

の解決策を検討する

自己破産はあくまで最終手段として、まずは他の解決策を検討することが重要です。自己破産以外にも、任意整理や個人再生といった債務整理の方法があります。これらは、債権者と直接交渉したり、裁判所に申し立てることで返済可能な金額に減額することができます。

任意整理では、利息や遅延損害金の減額が可能で、個人再生では借金総額に基づいて減額割合が決まりますが、どちらも完済を目指す方法です。これらの債務整理を通じて完済が実現可能か、借金総額と現在の収入を照らし合わせて、適切な選択を検討しましょう。

自己破産ができる条件

自己破産を裁判所に申し立てるには、次の条件を満たす必要があります。まず、支払い不能状態であること、借金が非免責債権に該当しないこと、そして借金の経緯が免責不許可事由に該当しないことが求められます。自己破産は、債務整理手続きの中でも、借金が非常に多くて自力で返済できない場合に最終的な手段として利用されます。しかし、返済が困難であっても、借金の種類やその経緯によっては自己破産が認められないこともあります。支払不能状態とは、収入や資産がない、または収入や資産が借金に比べて少ないために完済が不可能な状況を指します。例えば、借金が500万円あり年収が800万円の場合、返済能力があると判断され、自己破産が認められない可能性があります。

自己破産を「ずるい」と感じる場合の対応策

これまで、自己破産が「ずるいものではない」と言える理由と、破産後に課せられるペナルティについて説明しました。しかし、「自己破産は結局借金を払わずに済むのでずるい」とか「ペナルティが厳しすぎて破産は避けたい」と感じる方もいらっしゃるでしょう。その場合、少額であっても借金を返し続けて完済する方法を選ぶのが良いかもしれません。

自己破産以外の債務整理方法には、「任意整理」と「個人再生」があります。これらは自己破産とは異なる特徴を持っていますが、いずれも国が認めた合法的な借金解決手段なので、安心して選べます。

任意整理を選ぶ

任意整理は、借金の金額や支払い条件を債権者と交渉して減額を目指す手続きです。裁判所を介さず直接交渉を行うため、周囲に知られにくく、手続きもスムーズに進めることができます。

基本的には、借金の元金ではなく、利息や延滞金を減額することを目的とした交渉となるため、借金の総額が少なく、支払い能力がある方に適しています。また、減額したい借金を選んで交渉できる点も大きなメリットです。持ち家や車など、失いたくない財産がある場合や、連帯保証人がついている借金がある場合には特に有効な方法と言えるでしょう。

任意整理によるメリット

任意整理の主なメリットは3つあります。まず、裁判所への出廷や書類提出が不要であること。次に、財産を手元に残せる点。最後に、周囲に知られるリスクが低いことです。任意整理は債権者と直接交渉する手続きであり、裁判を必要としないため、時間と労力を大幅に削減できます。また、裁判手続きや官報への掲載もないため、周囲に知られる可能性は比較的低いと言えるでしょう。

任意整理によるデメリット

ただし、任意整理にはメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。まず、返済を続ける必要がある点です。自己破産と異なり、任意整理では免責が認められないため、手続き後も借金の返済を続けなければなりません。また、将来的には完済が前提となります。そのため、安定した収入がない場合、任意整理の交渉に応じてもらえない可能性が高くなります。

個人再生を選ぶ

個人再生は、借金総額を大幅に減額する手続きです。自己破産と同様に裁判所の許可が必要で手続きには時間がかかりますが、借金を元本の5分の1から10分の1に減らすことができるため、任意整理よりも完済を目指しやすくなります。

個人再生の利点は、持ち家や車を処分せずに借金を減額できる点です。失いたくない財産があるものの、現在の借金では返済が難しい方に適しています。また、自己破産では免責不許可事由に該当する場合でも、個人再生であれば手続きを進めることが可能です。自己破産が難しい場合は、個人再生を選択肢として検討するのが良いでしょう。

個人再生によるメリット

個人再生には、次のようなメリットがあります。借金が大幅に減額され、持ち家を手放さずに済む可能性がある点です。個人再生では、一定の基準に従って減額される額が決まりますが、任意整理よりも借金総額を大きく減らせる可能性があります。個人再生の最低弁済額は以下の通りです。

  • 債務額が100万円以下:全額
  • 債務額が100万円超〜500万円以下:100万円
  • 債務額が500万円超〜1,500万円以下:総額の5分の1
  • 債務額が1,500万円超〜3,000万円以下:300万円
  • 債務額が3,000万円超〜5,000万円以下:総額の10分の1
  • 債務額が5,000万円超〜:利用不可

(参照元:民事再生法231Ⅱ)

個人再生では、上記の最低弁済額を3年〜5年程度の分割払いで返済します。サラリーマンを対象とした給与所得者等再生手続きでは、上記の最低弁済額と「可処分所得の2年分」を比較し、いずれか高い方の金額を支払います。また、「自分の財産を全て処分した場合に得られる金額」の方が大きい場合、その額を36回分割して支払うことになります。

さらに、個人再生には持ち家を手放さずに住宅ローンを継続できる「住宅資金特別条項」があります。条件は以下の通りです:

  • 本人が所有し、居住している住宅であること
  • 住宅ローンがその住宅を建築または購入するためのものであること
  • 住宅ローンの担保として抵当権が設定されていること
  • 住宅ローン以外の抵当権や差押えの登記がないこと
  • 住宅ローンを滞納している場合、保証会社の弁済後6ヶ月が経過していないこと

なお、別荘やセカンドハウスは住宅資金特別条項の対象にはならず、通常は手放さなければなりません。

個人再生によるデメリット

次に、個人再生のデメリットについて確認しましょう。まず、返済を継続する必要がある点です。個人再生は免責が適用されないため、借金を返済し続けなければなりません。また、裁判所を通じた手続きが必要であり、手続きが複雑なため、個人で行うのは非常に難しいです。そのため、一般的には弁護士などの専門家に依頼することが多くなります。さらに、裁判所への書類提出に収入証明書などが必要となるため、家族や勤務先の人に手続きが知られるリスクもあります。

借金の一本化を選ぶ

借金の一本化とは、複数の借入先がある場合に、金利が低い金融機関などを利用して借金をまとめる手続きです。裁判所を通さず、金融機関が提供するおまとめローンなどを活用することで、利息や毎月の支払額を減らすことができます。

借金の一本化によるメリット

借金の一本化には、どのようなメリットがあるのでしょうか。まず、毎月の支払額を減らすことができる可能性があります。現在支払っている利息の総額を見直し、より低金利で一本化することで、利息負担を軽減できる場合があります。また、他の債務整理の手続きと異なり、信用情報機関に事故情報が登録されないため、信用情報に傷がつくことがない点も大きなメリットです。

借金の一本化によるデメリット

借金の一本化には以下のデメリットがあります。まず、借金の元金は基本的に減額されない点です。借金の一本化は主に利息を見直す手続きであり、元金を減らすことはありません。さらに、毎月の支払額を減らすために返済期間を延長すると、最終的に支払う総額が増える可能性もあります。また、おまとめローンを利用する際には、金融機関の審査に通過する必要があり、これが条件となるため、審査に通らない場合もあります。

特定調停を選ぶ

特定調停とは、簡易裁判所の仲介を受けて債権者と話し合い、返済計画を立てる手続きです。自己破産よりも迅速で簡便な手続きであり、債権者との和解を目指すことができます。

特定調停によるメリット

自己破産や個人再生は、一般的に手続き開始から完了までに約半年を要します。しかし、特定調停では原則として裁判期日が2回程度で、手続き開始から約2ヶ月で終了します。そのため、迅速に手続きが完了し、心理的負担が軽減されるでしょう。

特定調停によるデメリット

特定調停のデメリットは以下の通りです。まず、裁判所を介した手続きが必要で、親族や勤務先に手続きが知られる可能性があります。個人再生と同様に裁判所を通じて手続きが進められ、書類の準備や期日通りの出頭が求められます。ただし、自己破産や個人再生に比べて、提出する書類や手続きは比較的簡単です。収入申告などのための書類を準備する過程で、関係者に手続きが知られることがあります。

まとめ

「自己破産はしたもん勝ち」と言われることがありますが、これはお金を貸した側の立場から来ていることが多いです。その理由としては、借金の返済義務がなくなることや、国が認めた借金解決手段であることが挙げられます。しかし、自己破産は最悪の事態を回避するための手段であり、決してズルい方法ではありません。

自己破産は「破産法」に基づいて行われ、破産が認められるためには条件があり、デメリットも少なくありません。これらをよく理解せずに手続きを進めると、自己破産に迷ったり、後悔する結果になることもあります。また、破産後の生活設計をしっかり検討し、不便を最小限に抑える工夫が必要です。

もし自己破産について不安がある場合は、弁護士に相談することが最適です。専門家から自分に合った借金解決方法をアドバイスしてもらい、手続きを任せることができます。自己破産は「したもん勝ち」な方法ではありませんが、内容をしっかり理解した上で選択すれば、借金から解放され、新たなスタートを切るチャンスを得られるでしょう。

自己破産に関するよくある質問

自己破産の「したもん勝ち」についてよくある質問は、以下の通りです。自己破産をして良かった点は?自己破産した場合、費用は誰が負担するのか?自己破産で処分される財産の基準は?自己破産後、スマートフォンはどうなるのか?これらの質問に対して、それぞれお答えします。

自己破産で免除された借金は誰が負担しているのか?

自己破産が認められると、破産者本人の借金は免除されます。しかし、闇金などから借り入れをしている場合、自己破産後に家族に返済を求めるケースもあります。ですが、自己破産をした本人の家族には返済義務はありません。このような請求は貸金業法違反となり、悪質な場合は弁護士や警察に相談することが必要です。ただし、家族が保証人になっている場合、その保証人として返済義務が生じます。法人においては、借金は会社の債務であり、代表者個人には返済義務はありません。ただし、代表者が法人の借金の保証人であれば、その代表者には返済義務が残ります。したがって、代表者が法人の保証人となっている場合、法人と共に代表者も自己破産するケースが多いです。

自己破産で処分される財産の基準は何か?

処分対象となる財産は、一般的に換金価値が20万円以上のものです。次のような財産は処分される可能性が高くなります。自宅などの不動産、自動車やバイク、株式や社債などの有価証券、仮想通貨を含む金融資産、売掛金や貸付金などの債権、貴金属やブランド品、生命保険の解約返戻金、受給予定の退職金の一部などです。

一方で、破産者が生活できなくなることを避けるため、次のような財産は原則として処分されません。99万円以下の現金や預貯金、家具や家電といった生活必需品、その他20万円以下の財産です。また、破産手続きが開始された後に取得した財産は「新得財産」と呼ばれ、処分対象外となります。

自己破産後、スマホはどう扱われるのか?

自己破産をしても、スマホ端末が没収されることはほとんどありません。もしスマホの端末料金を一括で支払い購入している場合は、そのまま使用を続けることができます。しかし、端末代金を分割払いで支払っている場合、自己破産によって分割払い中の契約は解除されます。これは、分割払いの残額が自己破産の免責対象となり、支払い義務が免除されるためです。

その場合、別のスマホを一括で購入すれば、新たに契約した端末を利用することができます。また、破産者の名義から家族名義に変更することで使用を継続できることもあるため、事前に携帯電話会社に確認しておくと良いでしょう。さらに、信用情報機関に登録された情報は5年から10年で消去され、その後は再度分割払いで端末を購入できるようになります。

自己破産をして得られたメリットは?

自己破産の最大の利点は、債務が免除されることにより、経済的および精神的な負担が軽減され、生活を再建できる点です。自己破産後でも、滞納している税金など一部の債務は返済を続ける必要がありますが、金融機関からの借入れなどのほとんどの債務は免除される場合が多いです。自己破産を選択する人の中には、返済の督促や圧力で精神的に追い詰められ、再起が難しくなっているケースもあります。特に、闇金などから借入れをしている場合、厳しい督促を受け、心身共に疲れ切ってしまっていることが少なくありません。こうした状況では、自己破産の申立てに加えて、債権者との対応を弁護士に委任することができます。借金の負担から解放され、生活の再建が可能になる点が最大のメリットです。