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あける
借金を帳消しにする方法4選!返済が厳しいときに検討すべき手続きとは?
目次
借金の返済が厳しくなり、限界を感じている方も多いのではないでしょうか。「もう返済せずに済ませたい」と思っている場合、借金を帳消しにする方法が気になるところです。
借金を帳消しにできる手段としては、「自己破産」「過払い金請求」「時効援用」「一括返済」などがあります。ただし、これらの方法は個々の状況によって適用できるかどうかが異なります。そのため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
自己破産に対して「人生の終わり」というイメージを抱き、気が引ける方も少なくありません。また、過払い金請求や時効援用、一括返済が条件的に適用できない場合、「夜逃げでもするしかないのか?」と思い詰めてしまうこともあるでしょう。しかし、夜逃げでは借金から完全に逃れられる可能性は低く、生活に大きな影響を及ぼすリスクもあるため、おすすめできません。
こうした状況では、まず弁護士や司法書士に相談するのが得策です。専門家に相談することで、あなたの状況に合った適切な解決策を見つけられるはずです。借金を帳消しにする方法だけでなく、返済負担を軽減するための手段も提案してもらえるでしょう。
借金問題を抱えている方が「どの方法が自分に合っているのか?」を個人で判断するのは難しい場合があります。そのため、無料相談を利用して専門家にアドバイスを求めるのがおすすめです。当サイトでは、借金問題を積極的に扱う弁護士や司法書士を多数紹介していますので、ぜひ気軽にご相談ください。
借金を帳消しにする主な方法4選
返済が難しいほどの多額の借金を抱えている場合、借金を帳消しにして新たなスタートを切ることを検討するのも一つの選択肢です。
借金を帳消しにする方法としては、主に以下のような手段があります。
- 自己破産
- 過払い金請求
- 時効援用
- 一括返済
これらの方法について、次の項目でそれぞれ詳しく解説していきます。
1.自己破産とは?借金を帳消しにする方法
自己破産とは、財産や収入が不足して借金を返済できる見込みがない「支払不能」の状態であると裁判所に認めてもらい、借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。
裁判所の許可が下りて借金の支払い義務がなくなると、返済の負担から解放され、収入を生活費に回せるようになるため、生活再建が可能になります。
ただし、自己破産を行えば必ず借金が帳消しになるわけではありません。自己破産には「免責不許可事由」が設けられており、借金の理由や状況によっては支払い義務が免除されない場合もあります。
それでも、免責不許可事由がある場合でも必ず借金が残るとは限りません。借金の原因が悪質でない場合、裁判所が事情を考慮して支払い義務を免除することがあります。この裁判所の判断による免除を「裁量免責」といいます。
自己破産の条件と注意点
自己破産が認められるための条件は、以下の通りです。
- 支払不能状態であること
- 免責不許可事由に該当する行為がないこと
また、自己破産をしても免除されない支払い(非免責債権)も存在するため、注意が必要です。
これらについて、それぞれ詳しく説明します。
自己破産に関する詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。
支払不能の状態であることが条件
「支払不能状態」とは、客観的に見て借金を返済するための財力や能力が欠如している状態を指します。
一般的には、住宅ローンを除く借入総額を3年以内に返済できるかどうかが、一つの判断基準となります。
仮に本人が返済を苦しいと感じていたとしても、収入や財産の状況から「3年程度で完済が可能」と判断される場合、客観的には「支払不能状態」と認められない可能性があります。
なお、自己破産を規定する破産法では、「支払不能」について次のように定義されています。
第二条
11 「支払不能」とは、債務者が支払能力を欠くため、その債務のうち弁済期にあるものを、一般的かつ継続的に弁済できない状態(信託財産の破産の場合は、受託者が信託財産による支払能力を欠くため、信託財産責任負担債務のうち弁済期にあるものを一般的かつ継続的に弁済できない状態)を指します。
出典:破産法_e-Gov法令検索
自己破産でも免責されない非免責債権に要注意
自己破産は、ほぼすべての借金を帳消しにできる制度ですが、自己破産をしても支払い義務が免除されない「非免責債権」が存在します。
たとえば、所得税などの税金、国民健康保険や国民年金などの保険料、DVなどが原因で離婚した際の慰謝料、子どもの養育費などが該当します。
免責不許可事由に該当しないこと
「免責不許可事由」とは、自己破産において借金返済の免責が認められない可能性がある理由や事情を指します。
たとえば、以下のようなケースが免責不許可事由に該当します。
- 借金の原因が浪費や賭博などの射幸行為である場合
例:ブランド品や高級車の購入、パチンコや競馬などのギャンブル、または株取引やFXによる借金 - 返済できないと分かっていながら借入れを行った場合
例:すでに多額の借金がある状態で、それを隠して新たに借入れを申し込んだ場合 - 過去7年以内に自己破産で借金の免除を受けた場合
ただし、免責不許可事由に該当する場合でも、「裁量免責」という制度により免責が許可されるケースがあります。
これは、借金の事情や本人の反省の態度などを裁判所が考慮し、「免責が妥当」と判断した場合に、裁判所の裁量で免責が許可される制度です。
自己破産の免責不許可事由について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
自己破産のメリットとは?
自己破産には、以下のようなメリットがあります。
メリット
- 借金の返済が原則として免除(免責)される
- 生活保護受給者や無職でも手続きが可能
- 一定の自由財産を手元に残せる
これらについて、それぞれ詳しく説明します。
借金の返済義務が原則免除(免責)される
自己破産の最大のメリットは、ほぼすべての借金の支払い義務が免責されることです。
これによって、毎月の返済負担から解放されることになります。
さらに、自己破産を行うと返済の督促や差押えも停止されるため、借金の滞納が続いている場合でも生活を立て直しやすくなるでしょう。
生活保護受給者や無職でも申請可能
生活保護を受給している人や、無職で収入がない人でも、自己破産を申し立てることは可能です。
自己破産の手続きには一定の費用がかかりますが、条件を満たせば「法テラス(日本司法支援センター)」を利用し、費用の立て替えや免除を受けられる可能性があります。
参考:費用を立て替えてもらいたい|法テラス
生活保護受給者や無職の方が自己破産できるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
手元に残せる自由財産がある
自己破産をすると、一定以上の価値がある財産は回収され、債権者に配当されることになります。
しかし、すべての財産が取り上げられるわけではありません。
自己破産の目的は、債務者が経済的に再起できるよう支援することです。
そのため、一定額以下の現金など、生活の立て直しに必要な財産は手元に残せます。
このような財産を「自由財産」と呼びます。
自由財産には、以下のようなものがあります。
- 99万円以下の現金
- 自己破産の手続き後に得た財産(新得財産)
- 法律で差押えが禁止されている財産(差押禁止財産)
- 裁判所が所持を認めた財産(自由財産拡張)
自己破産のデメリットとは?
自己破産には、借金を帳消しにできる大きなメリットがある一方で、いくつかのデメリットが伴う点にも注意が必要です。
自己破産を行った場合に受ける可能性のあるデメリットには、以下のようなものがあります。
- 少額のものを除いて財産を処分しなければならない
- 個人信用情報に事故情報が記録される
- 自己破産した事実が官報に掲載される
- 手続き中は特定の職業に就けない
- 引っ越しや長期旅行が制限される
- 郵便物の管理ができなくなる
次の項目で、それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
少額の財産を除き処分が必要
自己破産とは、正確に言えば「自身の財産を処分してもなお返済できない借金を帳消しにする制度」です。そのため、自己破産をする際には、所有している車や家などの財産は、少額のものを除いて原則的に処分する必要があります。処分された財産は債権者に配当される仕組みです。
ただし、すべての財産を手放さなければならないわけではありません。自己破産後の生活に最低限必要とされる財産については、処分の対象外となります。
一般的に、自己破産時に処分される財産としては以下のようなものがあります。
- 不動産(家や土地など)
- 99万円を超える現金
- 売却や換価で1点あたり20万円を超える財産(車、預貯金、生命保険、宝石など)
なお、処分される財産の基準は裁判所によって異なる場合があるため、不安な場合は事前に弁護士や司法書士へ相談することをおすすめします。
自己破産の事実が官報に記載される
自己破産をすると、自己破産をした事実とともに氏名や住所などが官報に掲載されます。
官報とは、国が発行する新聞のようなもので、債務整理に関する情報のほか、国の政策や国民の権利義務に関わる内容を公告する目的で発行されています。
自己破産をした場合、官報には「破産手続開始決定時」と「免責許可決定時」の2回にわたり掲載されます。
ただし、官報に掲載されたことで、職場や知人など周囲の人に自己破産の事実が知られる可能性は非常に低いといえます。官報は裁判所横の書店など特殊な場所でしか入手できず、一般の人が購読しているケースはほとんどありません。仮に目にしたとしても、官報には膨大な情報が掲載されているため、その中から特定の個人を見つけるのは非常に困難です。
ただし、金融機関や不動産業者などは業務の一環として官報を定期的に確認している場合があります。これは業務上、破産者の情報を得るためのものであり、特定の個人を調べるためではありませんが、これらの業界に従事している場合には自己破産の事実が知られる可能性がある点を認識しておきましょう。
また、闇金などの違法業者は、自己破産をした人を貸付のターゲットとして官報をチェックしていることがあります。その結果、闇金からDMなどが届く恐れがあるため、十分に注意が必要です。
個人信用情報に事故情報が記録される
自己破産をすると、個人信用情報に事故情報が記録されます。
個人信用情報は、金融機関が貸付を行う際に確認することが義務付けられており、事故情報が掲載されていると審査に通らないため、新規の借入やクレジットカードの作成ができなくなります。
ただし、この事故情報は永久に記録されるわけではありません。事故情報は5〜10年で抹消されるため、その後は債務整理をする前と同じように借入が可能になります。
しかし、事故情報が抹消された後でも、債務整理の対象となった金融機関では永久に取引ができない、いわゆる「社内ブラック」となる場合があります。そのため、借入を行う際は、自己破産の対象にならなかった金融機関を利用することが推奨されます。
また、事故情報が抹消された後は、個人信用情報には借入やクレジットカードの利用履歴が全くない「スーパーホワイト」の状態となります。この状態は、ある程度年齢を重ねている場合、不自然と見なされることが多く、「過去に債務整理を行ったのではないか」と疑われ、審査に通らない可能性があります。
引っ越しや長期旅行に制限がかかる
自己破産手続き中は、居住地に制限がかかり、引っ越しや長期の旅行を行う際には裁判所の許可が必要です。許可を得ずに引っ越しなどを行うと、免責不許可事由に該当し、免責が認められない可能性があるため注意が必要です。
この制限は「管財事件」や「少額管財事件」の場合にのみ適用され、「同時廃止事件」の場合には制限がありません。
また、実際には裁判所は、連絡先が明確であれば移転を許可することがほとんどです。裁判所の許可をきちんと取るようにすれば、大きなデメリットにはならないでしょう。
手続き期間中は特定の職業に就けない
自己破産の手続き中は、一部の特定職業に就くことが制限されます。制限対象となる職業は、主に以下の通りです。
- 警備員
- 弁護士、税理士、司法書士、公認会計士などの士業
- 貸金業者、質屋・古物商、生命保険募集人などの金融関連業
- 旅行業務取扱管理者
- 公証人
- 商工会役員
ただし、この就業制限はあくまでも自己破産手続き中のみ適用されます。免責が認められるなどして破産者が復権を得れば、就業制限は解除されます。
郵便物の管理を受けることになる
管財事件の場合、自己破産手続き中に本人宛の郵便物はすべて管財人に転送され、その内容が確認されます。
自己破産では、所有する財産が原則として債権者に配当されるため、財産を隠していないかなどを確認する目的でこのような措置が取られるのです。
転送の対象となるのは、本人宛の信書類に限られ、家族宛の郵便物は転送されません。また、対象となるのは日本郵便が取り扱う郵便物のみであり、民間業者による配送物や宅配便などは転送対象外となります。
2.過払い金請求とは?
過払い金とは、利息制限法で定められた金利の上限を超えて支払った利息のことを指します。
過払い金は本来支払う必要のない利息であるため、過払い金請求を行うことで後から取り戻すことが可能です。その結果、貸金業者から返金を受けられる場合や、現在の借金の残額を減らせる可能性があります。
さらに、現在の借金残高よりも高額な過払い金を取り戻すことができた場合には、借金を帳消しにすることも可能です。
過払い金請求の条件と注意点
過払い金返還請求ができる条件は、以下の通りです。
- 2010年6月17日以前に消費者金融やクレジットカード会社から借り入れをしていたこと
- 過払い金の時効がまだ成立していないこと
- 請求先の消費者金融やクレジットカード会社が倒産していないこと
ただし、近年では貸金業者やクレジットカード会社との和解条件が厳しくなってきているため、注意が必要です。
これについて、詳しく解説します。
2010年6月18日以前の借入が対象
過払い金は、「消費者金融やクレジットカード会社からの借入れ」かつ「2010年6月18日以前の借入れ」にのみ発生します。
過払い金は、利息制限法の上限利率を超えた「グレーゾーン金利」での貸付に対して発生するものです。しかし、2010年6月18日以降は法律の改正により、違法な高金利の貸付は行政処分や刑事罰の対象となっています。
また、2010年6月17日以前の借入れであっても、銀行や公的機関の貸付利率はもともと利息制限法の範囲内だったため、過払い金は発生していません。
過払い金請求先の会社が倒産していないことが条件
過払い金返還を請求する相手である借入先の会社が倒産してしまった場合、基本的には過払い金を請求することはできません。
ただし、倒産した借入先が別の貸金業者に吸収合併された場合などは、過払い金返還請求が可能なケースもあります。これは、借金の返済請求権が別の貸金業者に譲渡されている可能性があるためです。
過払い金請求が可能な会社については、こちらの記事で詳しく解説しています。
和解条件が厳しくなっているため注意が必要
2007年以降、過払い金返還請求件数の増加や返還される過払い金の総額が増えたことに伴い、消費者金融やクレジットカード会社の対応が厳しくなってきています。
過払い金返還請求では、貸金業者と「いくらまで返還するか」などの和解交渉を行いますが、以前よりも低い金額を提示されるケースが増えているようです。
このような交渉を債務者自身が行うのは容易ではありません。そのため、交渉に慣れた弁護士などの法律の専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
過払い金の時効が成立していないこと
過払い金は、借入先との最後の取引日から10年が経過すると「消滅時効」が成立し、返還請求ができなくなります。
ただし、一度完済した場合でも、1年以内に同じ借入先から再び借金をした場合、「取引が継続している」と見なされ、最後の取引日が更新されるケースがあります。これにより、過払い金の請求が可能になることもあります。
時効の条件は複雑であり、取引が継続しているかどうかの判断が難しい場合もあります。そのため、確実に判断するためには、弁護士などの法律の専門家に相談することをおすすめします。
過払い金請求のメリットとは?
過払い金返還請求には、以下のようなメリットがあります。
メリット
- 過払い金で借金を相殺できた場合、信用情報機関に事故情報が登録されない
- 借入額を超える過払い金がある場合、差額分の返金を受け取ることができる
これらについて、詳しく解説していきます。
過払い金が借入額を超えれば返金される可能性も
過払い金返還請求を行った結果、借り入れた元金を超える過払い金が返還されるケースもあります。
特に、長期間にわたって借入れを続けていた場合、高額の過払い金が発生する可能性が高いでしょう。
借金が相殺されれば信用情報に事故情報が記録されない
前述のとおり、自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。
一方、過払い金返還請求では、過払い金によって借金を全額相殺できる場合、信用情報機関に事故情報が登録されることはありません。
ただし、過払い金が戻ってきても借金が残る場合は、債務整理(任意整理)として扱われるため、自己破産と同様に事故情報が登録されてしまう点に注意が必要です。
過払い金請求のデメリットとは?
過払い金返還請求には、以下のようなデメリットがあります。
デメリット
- 過払い金返還請求を行った会社のクレジットカードやローンは利用できなくなる
- 期待していた金額の過払い金が全額戻ってこない場合がある
これらについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
適用条件が非常に限られている
過払い金は、すべての借金を抱えている人に発生しているわけではありません。さらに、過払い金が発生している場合でも、誰でも必ず過払い金請求によって返還を受けられるわけではありません。
過払い金請求で過払い金を取り戻せるのは、一定の条件を満たしている人に限られます。具体的な条件は以下の通りです。
- 借入時期が2010年6月18日より前であること
- 借入金利が15%を超えていること
- 最後に借入または返済をしてから10年以内であること
最後の借入または返済から10年以内であること
過払い金には時効があり、時効が成立した過払い金は返還請求をしても取り戻すことができません。
過払い金の時効は、「最後の取引(借入または返済)から10年が経過したとき」に成立します。
そのため、過払い金を取り戻したい場合は、最後に取引を行った日から10年以内に返還請求を行う必要があります。
もし、最後の取引日が曖昧で分からない場合は、弁護士や司法書士に相談することで、過払い金の有無を確認することが可能です。ぜひ無料相談を活用してみてください。
借入時の金利が15%を超えていること
前述のとおり、利息制限法で定められた金利の上限は、借入金額に応じて以下のように決められています。
借入金額と金利の上限
- 10万円未満:年率20%
- 10万円以上100万円未満:年率18%
- 100万円以上:年率15%
そのため、借入時に年率15%を超える金利が設定されていた場合、利息制限法の上限を超えた金利で貸付が行われていた可能性があります。借入時の契約書などを確認し、過去に年率15%を超える金利で借入をしていないか見直してみましょう。
一方で、過去に一度も年率15%を超える金利で借入をしたことがない場合、過払い金は発生していないため、過払い金請求を行っても借金を帳消しにすることはできません。
生活保護の受給が制限される可能性がある
生活保護を受けている場合、各都道府県や市区町村の福祉事務所によって、取り戻した過払い金が「収入」と判断される可能性があります。その結果、生活保護の受給が停止される、または福祉事務所へ返還しなければならなくなる恐れがあります。
さらに、取り戻した過払い金を福祉事務所に申告せず、そのまま生活保護を受け続けた場合、不正受給とみなされ、受け取った生活保護費を返還請求されるリスクもあるため、十分な注意が必要です。
金融機関やそのグループ会社とは今後取引不可となる可能性がある
過払い金請求を行うと、請求先の金融機関やそのグループ会社から今後の借入ができなくなる可能性があります。
金融機関では、過払い金請求などの債務整理や延滞の情報を、独自の顧客データベースに記録するのが一般的です。これにより、その金融機関の借入審査に通らなくなることがあります。この状態を「社内ブラック」と呼びます。
また、社内ブラックの情報は、同じグループ内の金融機関とも共有されることが多いため、過払い金請求を行った金融機関のグループ会社でも借入が難しくなる可能性が高いでしょう。
ただし、実際に過払い金請求をしたことで必ず社内ブラックになるとは限らず、最終的な判断は各金融機関によって異なります。そのため、過払い金請求後に改めて借入審査を申し込んでみないと、本当に借入ができなくなるかどうかは分かりません。実際に審査に通ったケースもあるようです。
さらに、クレジットカードのキャッシング利用分について過払い金請求を行った場合、請求後にそのクレジットカード会社が発行したカードはすべて利用できなくなる可能性があります。特に、家賃や公共料金の支払いに利用しているカードがある場合は、事前に支払方法を変更しておく必要があります。
期待した金額の過払い金が返還されない場合もある
過払い金返還請求を行っても、請求した全額が借入先から返還されない場合があります。
借入先との交渉で十分に納得できる条件で和解できない場合、「過払い金返還請求訴訟」を提起するという選択肢もあります。
ただし、訴訟を起こすには費用がかかるうえ、債権者が抵抗することで訴訟が長期化するリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
弁護士に相談し、総合的に検討するのがよいでしょう。
3.借金の時効援用
債権者が一定期間にわたり債務者に対して請求を行わない場合、借金は時効を迎えます。
ただし、時効が成立したからといって返済義務が自動的に消滅するわけではなく、「時効援用」という手続きを行う必要があります。
時効援用とは、時効が成立している借金に対して「この借金は時効になっています」と債権者に主張する手続きのことです。
この手続きを適切に行い、時効が正式に成立すれば、借金の返済義務は消滅し、借金を帳消しにすることができます。
借金の時効援用を適用できる条件と注意点
借金の消滅時効が成立し、時効援用によって返済義務がなくなるのは、返済期日または最後の返済から5年もしくは10年が経過している場合です。
しかし、「時効の更新事由(中断事由)」がある場合は、5年または10年が経過していても時効が成立せず、時効援用を行うことはできません。
詳しくは、以下で解説します。
時効の更新事由(中断事由)に要注意
前述のとおり、返済期日または最後の返済から5年もしくは10年が経過している場合でも、「時効の更新(旧称:中断)」が発生していると時効は成立しません。
時効の更新事由(時効を更新させる行為)には、以下のようなものがあります。
- 債務者が借金の存在を認めた場合(例:借金の一部を返済する、返済を猶予してもらうよう依頼するなど)
- 債権者が債務者に対し、支払督促など法的な返済請求手続きを行った場合
- 債権者が債務者の財産に対して、差押えなどの法的措置をとった場合
さらに、債権者が書面などで支払いを請求する「催告」の手続きを行った場合、時効のカウントが6か月間停止します。この手続きは「時効の完成猶予(旧称:停止)」と呼ばれます。
通常、金融機関などの債権者は時効が完成しないよう、これらの手段を講じることが一般的です。
※2020年4月施行の改正民法により、「中断」という用語が「更新」に変更されました。
返済期日または最後の返済から5年または10年が経過していること
返済期日または最後の返済から5年もしくは10年が経過している場合、時効が成立する可能性があります。
2020年3月31日以前に締結された貸金契約に関しては、時効が成立するまでの期間(時効期間)が以下のように異なります。
- 消費者金融、クレジットカード会社、銀行などからの借金:5年
- 信用金庫、住宅金融支援機構、個人からの借金、奨学金:10年
また、民法改正に伴い、2020年4月1日以降に借り入れた借金については、以下のいずれか早い方が時効期間となります。
- 債権者が借金の請求権を行使できることを知った時から5年
- 債権者が借金の請求権を行使できる時から10年
借金の時効援用によるメリットとは?
借金の時効援用には、以下のようなメリットがあります。
メリット
- 裁判所を介さずに借金の返済義務をなくせる
- 信用情報機関の事故情報が消える場合がある
これらのメリットについて、詳しく解説します。
裁判所を介さずに借金の返済義務を免除できる
借金の時効援用のメリットは、時効成立の条件が整えば、裁判所を通さずに借金の返済義務を消滅させることができる点です。
時効援用の手続きを行う際は、「時効援用通知書」という書面を作成し、内容証明郵便で債権者に送付するのが一般的です。
信用情報機関の事故情報が削除される可能性もある
借金の時効援用を行うことで、信用情報機関によっては、借金の滞納時に登録された事故情報が訂正される場合があります。
その結果、クレジットカードが再び利用できるようになったり、新たにローンやキャッシングの借入れが可能になる可能性があります。
時効援用の注意すべきデメリットとは?
借金の時効援用には、主に以下の2つのデメリットがあります。
デメリット
- 援用に失敗すると、一括返済を求められる可能性がある
- 時効援用を行った会社のクレジットカードやローンが利用できなくなる
これらのデメリットについて、詳しく解説していきます。
時効が更新される可能性があり、成立が難しい
借金の時効を成立させるのは、実際のところ非常に難しいのが現実です。
時効が成立するまでの期間中でも、一定の条件を満たすことで時効が更新されることがあります。主に、以下のようなケースで時効が更新されます。
- 債権者が裁判上の請求を行った場合
- 差押え、仮差押え、仮処分が実施された場合
- 債務者が借金の返済意思を示した場合
特に、債権者が裁判を起こし、訴状や支払督促が届いた場合、時効は更新されてしまいます。債権者の行動は債務者側で制御できないため、時効の更新を阻止することは難しいのが実情です。
債務者の所在不明でも裁判を起こすことは可能
時効を更新するために裁判上の請求を行うには、裁判所から債務者の現住所へ通知を送る必要があります。この仕組みを知っている場合、裁判を避けるために姿を隠そうと考える人もいるかもしれません。
しかし、金融機関は住民票や戸籍を通じて債務者の居住地を把握することが可能です。さらに、住民票を移さずに引っ越しをして居住地が不明になったとしても、金融機関は「公示送達」という制度を利用することで裁判を起こすことができます。
時効援用した会社のクレジットカードやローンが利用不可になる
借金の時効援用手続きが成功した場合でも、時効援用を行った会社のクレジットカードやローンは、半永久的に利用できなくなる可能性が高いでしょう。
これは、時効援用をした会社の顧客情報に、返済の滞納や時効援用の事実が事故情報として記録されるためです。(いわゆる「社内ブラック」)
時効成立に失敗すると、遅延損害金などのリスクが増大
時効援用を行い、すでに時効が成立していれば借金を帳消しにできる可能性があります。しかし、時効の成立に失敗した場合には、大きなリスクが伴うことを十分に考慮する必要があります。
時効を成立させるためには、借金の返済や返済意思を示す行動を避ける必要があります。そのため、借金の返済を延滞することになりますが、この間、通常の利息に加えて遅延損害金が発生し、借金はどんどん膨れ上がる可能性があります。
さらに、時効が成立するまでの間、金融機関から繰り返し督促を受けたり、個人信用情報に事故情報が登録されるため、新たな借入やクレジットカードの作成ができなくなる点にも注意が必要です。
これらのリスクを許容できたとしても、もし時効が更新されてしまった場合、膨れ上がった借金を返済しなければならないという大きなリスクが残ることを忘れてはなりません。
4.一括返済の方法
一括返済とは、その名のとおり、現在残っている借金を全額まとめて返済することを指します。
一括返済は、借金残高と同額の資金を、金融機関が指定する方法で支払うだけで完了するため、これまで紹介した方法の中でも最も簡単で、最短で借金を帳消しにできる手段です。
一括返済を希望する場合は、まず借入先の金融機関へ連絡し、支払方法を確認しましょう。手続きがスムーズに進めば、早ければ当日中に借金がゼロになり、以降の返済義務もなくなります。
デメリットなしで最も健全な借金帳消し方法
一括返済の最大の利点は、デメリットがなく、これまで紹介した4つの借金帳消し方法の中で最も健全な手段であるという点です。
自己破産のように所有している財産を強制的に没収されることもなく、自己破産の事実が官報に掲載される心配もありません。さらに、過払い金請求のように請求先の金融機関で「社内ブラック」となり、今後の借入や取引が永久にできなくなるリスクもありません。
また、時効援用のように、時効成立まで長期間にわたって借金を延滞し、「いつ時効の成立が更新されるかわからない」という不安に耐え続ける必要もないのです。
借金を確実に返済するためのコツ
一括返済が難しい場合でも、確実に借金を返済していく方法はあります。
この項目では、「確実に借金を返済していくためのコツ」について詳しく解説します。
具体的には、以下の方法が挙げられます。
- 毎月の返済額を増額する
- 繰り上げ返済や一括返済を活用する
- 金利の高い借金から優先的に返済する
繰り上げ返済で早期完済を目指す
借金は返済期間が長くなるほど、支払う利息総額と総返済額が増えてしまいます。
そのため、ボーナスや臨時収入などで余裕があるときには、積極的に繰り上げ返済を行い、できるだけ早く借金を減らすことをおすすめします。
繰り上げ返済とは
月々の決められた返済額にプラスαの金額を上乗せして返済する方法です。繰り上げ返済した分は全額が元金に充当されるため、元金の減少スピードが早まり、結果的に支払う利息総額を抑えることができます。
しかし、繰り上げ返済の資金を確保するのが難しい場合は、以下のような方法を活用できないか検討してみましょう。
- 親族や友人に金銭的援助をお願いする
- 保険会社の「契約者貸付」を利用する
- 不用品を売却する
親や友人に借金のことを相談できる場合は、一時的にお金を借りて返済に充てられないか検討してみてください。無利息や低金利で借りられれば、借金の大幅な減額につながる可能性があります。
また、積立型の生命保険や個人年金に加入している場合は、保険会社の契約者貸付を利用するのも一つの手段です。契約者貸付の金利は一般的に2〜8%程度と、消費者金融のカードローンやクレジットカードのキャッシングより低金利で借りられることが多いです。
さらに、最近ではフリマアプリを活用すれば、誰でも簡単に不用品を売買できるようになりました。リサイクルショップよりも高値で売却できるケースも多いため、不要なものをお金に換える方法として検討してみるのもよいでしょう。
高金利の借金を優先して返済する
消費者金融のカードローンやクレジットカードのキャッシングは、銀行カードローンと比べて金利が高い傾向にあります。
金利が高いということは、同じ金額を借りても支払う利息が多くなるため、返済が長引くほど総返済額が想像以上に膨らんでしまう可能性があります。
そのため、返済額の増額や繰り上げ返済を行う際には、金利の高い借金から優先的に返済するようにしましょう。
金利の高い借金をできるだけ早く完済し、金利の低い借金のみの状態にすることで、支払う利息総額を抑えることができます。
毎月の返済額を増やして返済を加速する
家計を見直し、返済に充てるお金を捻出できそうであれば、毎月の返済額を増額することを検討してみましょう。
少しでも返済額を増やせば、元金の減少ペースが早まり、返済期間を短縮することができます。さらに、返済期間が短くなることで、支払う利息総額を抑える効果も期待できるでしょう。
もし、増額した返済額を継続して支払うのが厳しいと感じる場合は、以下の方法を活用できないか検討してみてください。
- 節約して返済に充てる資金を増やす
- 副業をして収入を増やす
- 公的支援を利用する
特に、毎月の支出として固定費を見直すことで、返済資金を確保しやすくなります。携帯料金や家賃、保険料などの固定費を削減できるかどうか検討してみましょう。
また、副業で収入を増やすのも有効な方法です。本業が平日勤務なら週末のみのアルバイトをする、または在宅でできるデータ入力や内職などの副業を活用すれば、空いた時間を有効活用して収入を増やせます。
さらに、生活が苦しく借金の返済が難しい場合は、国や自治体の公的支援を受けられる可能性があります。公的支援の種類は、「うつ病で休職を余儀なくされた」「ひとり親家庭で生活が厳しい」など、借金の返済ができない理由によって異なります。詳細は各自治体の窓口で相談し、自分が受けられる支援を確認してみるとよいでしょう。
借金を逃げたり踏み倒したりするのは避けよう
借金が返済できないからといって、踏み倒したり逃げたりするのは避けるべきです。
なぜなら、借金を踏み倒したり逃げたとしても、最終的には状況をさらに悪化させるだけだからです。
踏み倒しや逃亡を選ぶくらいなら、正規の手続きを踏んで借金を帳消しにするほうが、はるかに健全で確実な解決策といえます。
次の項目では、借金の踏み倒しと借金帳消し制度の違い、そして借金を踏み倒したり逃げたりすることで状況がどのように悪化していくのかについて詳しく解説していきます。
借金を踏み倒す行為と借金帳消し制度の違い
多くの人が考える「借金の踏み倒し」とは、引っ越しや夜逃げをして借金から完全に逃げ切り、返済義務を免れることを指すでしょう。
しかし、実際には引っ越しや夜逃げをしても、借金から完全に逃れることは極めて困難であり、現実的な解決策とはいえません。さらに、前述のとおり、借金の返済義務を免れるためには、自己破産や時効援用といった正式な手続きを行う必要があります。そのため、単に逃げ続けるだけでは、返済義務がなくなることはありません。
一方で、前項で紹介した借金を帳消しにする4つの方法は、国が認めた制度であり、合法的に借金を整理できる手段です。正規の手続きを踏むことで、安心して借金問題を解決することができます。
借金帳消し制度は合法的な手続き
「借金を帳消しにする」と聞くと、「人としてやるべきではないこと」といったネガティブなイメージを抱く人も少なくないでしょう。
しかし、借金帳消し制度は国が正式に認めたものであり、決して悪いことをしているわけではありません。そのため、必要であれば迷わず手続きを行い、借金問題を解決することが大切です。
また、この制度は、借金に苦しむ人を救済するためのものであり、「人生が終わる」「すべてを失う」といったものではありません。メリットやデメリットを正しく理解し、納得したうえで手続きを進めることで、借金問題の解決に向けた有効な手段となるでしょう。
借金踏み倒しは問題を悪化させるだけ
前述のとおり、金融機関は住民票を取得できるため、引っ越しをしても新しい居住地を把握し、再び督促を行うことが可能です。
なかには「住民票を移さずに引っ越せば、追跡されることはないのでは」と考える人もいるかもしれません。しかし、住民票を移さないままでは、就職や教育などの行政サービスを受けることが難しくなり、日常生活に大きな支障をきたすことになります。
さらに、金融機関は戸籍も取得できるため、苗字を変更したとしても同一人物であることが判明し、完全に逃げ切ることは不可能です。
加えて、返済能力があるにもかかわらず返済をしない場合、詐欺罪に問われる可能性があるため注意が必要です。借金の返済義務は民事上の責任であるため、返済しなかったからといって即座に逮捕されることはありません。しかし、最初から返済する意思がなく借金をしたことが裁判で立証されれば、懲役10年以下の詐欺罪に問われる可能性があります。
借金を逃げることで状況はさらに悪化する
前の項目でお伝えしたとおり、借金を踏み倒したり逃げたりしても、問題はさらに深刻化するだけです。
では、借金から逃げ続けると、具体的にどのような事態が発生するのでしょうか?
借金を滞納し続けた場合、一般的な流れは以下のようになります。
滞納期間の目安と生じるペナルティ
- 返済日の翌日~完済まで:遅延損害金が膨らんでいく
- 3日~1ヶ月:督促が厳しくなる
- 2ヶ月~3ヶ月:信用情報にキズがつく
- 2ヶ月~3ヶ月:残債を一括請求される
- 3ヶ月~半年以降:最終的に給料や財産が差し押さえられる
次の項目では、この流れに沿って、それぞれのリスクについて詳しく解説していきます。
督促が次第に厳しくなる
返済期日を過ぎて数日が経過すると、金融機関から電話やメールで連絡が入ります。通常、連絡があるのは本人の携帯電話のみで、その内容は滞納状況の確認や返済可能日の確認など、事務的なものがほとんどです。
しかし、金融機関からの電話やメールを無視し続けると、次に郵便で督促状が送られてきます。最初の督促状は「入金をお忘れではありませんか?」といった優しい表現で返済を促す内容ですが、2通目、3通目と回数を重ねるごとに、文面が次第に厳しくなっていくのが一般的です。
さらに、督促状も無視し続けると、自宅の固定電話や実家、勤務先にも督促の連絡が入る可能性があります。金融機関が債務者以外に対して社名や借金の詳細を明かすことはありませんが、何度も身元や要件が不明瞭な電話がかかってくると、家族や同僚に怪しまれる恐れがあるでしょう。
電話やメール、郵便での督促をすべて無視し続けると、最終的には金融機関の担当者が自宅を訪問することがあります。その際、同居している家族が対応すれば、借金の事実が発覚する可能性があるため、十分な注意が必要です。
遅延損害金が増え続ける
返済が遅れると、返済日の翌日から遅延損害金が発生します。滞納分を返済する際には、通常の利息とは別に、遅延損害金も支払わなければなりません。
遅延損害金の金額は、以下の計算式で求められます。
遅延損害金 = 元金 × 遅延損害金利率 ÷ 365(日) × 滞納日数
例えば、50万円の借金を30日間滞納した場合、遅延損害金がいくらになるのかを計算すると、以下のとおりです。(遅延損害金利率を20%とする)
50万円 × 0.2 ÷ 365 × 30(日) = 約8,219円
この計算式からも分かるように、滞納期間が長くなるほど遅延損害金の額は増えていきます。さらに、遅延損害金の利率は通常の利息よりも高く設定されていることが多いため、借金が急速に膨らんでいくことが予想されます。
残りの借金を一括で請求される
滞納期間が2〜3ヶ月に及ぶと、金融機関から内容証明郵便で一括請求の通知が届くことがあります。
一括請求の対象となるのは、滞納している元金や利息、遅延損害金だけではなく、借金残高の全額であるのが一般的です。
これは、一括請求の通知が届いた時点で、債務者が期限の利益を喪失しているためです。
期限の利益とは、債務者が借金を分割で返済する権利のことを指します。しかし、この権利を喪失すると、金融機関は債務者に対し、残りの借金を一括で請求できるようになります。
また、借入時に締結する契約書には、「分割払いの返済が遅れた場合」などを期限の利益喪失の条件として定めているケースがほとんどです。
信用情報に傷がつく
滞納期間が2ヶ月を超えると、その事実が信用情報に事故情報として登録されます。
信用情報に事故情報が記録されると、以下のような影響が生じます。
- 新規の借入やキャッシング、ローンの契約ができなくなる
- クレジットカードの新規発行や、すでに持っているカードの利用が制限される
- スマホや携帯電話の分割払いができなくなる
- 奨学金などの保証人になれなくなる
- 賃貸物件の審査に通らない可能性がある
ただし、事故情報は永久に残るわけではなく、債務整理をした場合や借金を完済した後、一定期間が経過すれば削除されるのが一般的です。
しかし、借金を放置したまま返済しない場合、滞納が解消されないまま事故情報が残り続けるため、注意が必要です。
最終的には給料や財産が差し押さえられる
一括請求の通知を無視し続けると、金融機関から裁判を起こされ、裁判所から通知が届くことがあります。
裁判所から送付される通知には、主に「支払督促」と「訴状」の2種類があります。どちらも放置すると、金融機関に有利な判決が下され、金融機関は債務者の財産を差し押さえる権利を得ることになります。
差し押さえの対象となる財産
- 給料
- 銀行口座の預貯金
- 生命保険の解約返戻金
- 不動産(自宅を含む)
- 車
中でも、給料と銀行口座の預貯金は優先的に差し押さえの対象となります。特に給料は、一度差し押さえが決定すると、手取り額の1/4※を毎月回収されるため、金融機関が最優先で狙う財産といえます。
※手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超えた金額すべてが差し押さえの対象となります。
さらに、給料の差し押さえが実行されると、勤務先にも裁判所から通知が届くため、職場に借金の事実が知られるだけでなく、会社に迷惑をかけることにもなりかねません。
借金減額の合法的手段とは?デメリットを最小限に抑える方法
これまで紹介してきた借金を帳消しにする方法には、適用できる条件が限られていました。
「自分には難しそう…」と感じる場合でも、借金の減額を目指せる「任意整理」であれば、厳しい条件を満たさなくても返済の負担を軽減できる可能性があります。
さらに、任意整理は自己破産よりもデメリットを抑えられる方法ともいえます。
また、借金の理由を問われず、自宅を手元に残したまま借金を大幅に減額できる「個人再生」という選択肢もあります。
それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
任意整理とは、債権者と交渉し返済プランを見直す方法
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉し、無理のない返済計画を立てる債務整理の手続きです。
この方法では、借金の元本は減りませんが、将来利息(これから支払う利息)などをカットすることで月々の返済負担を軽減し、3〜5年での完済を目指すのが一般的です。
任意整理の条件と注意すべき点
任意整理を行うには、以下の条件を満たす必要があります。
- 借入金から利息などをカットした金額を、3〜5年で完済できる収入があること
- 返済を継続する意思があること
任意整理後も返済が続くため、一定の収入が求められますが、雇用形態は問われません。
会社員・契約社員・アルバイト・パート・年金生活者など、毎月安定した収入があれば、任意整理を行うことが可能です。
また、専業主婦(主夫)であっても、家計をやりくりして返済を続けられる場合は、任意整理ができる可能性があります。
任意整理のメリットとは?
任意整理のメリットは、以下のとおりです。
- 裁判所を通さずに手続きできるため、家族や勤め先にバレにくい
- 家や車などの財産を処分せずに済む
- 保証人や連帯保証人に影響を与えずに手続きができる
また、任意整理の大きな特徴として「対象とする借金を選べる」点が挙げられます。
そのため、保証人や連帯保証人がついている借金や、家・車などのローンを任意整理の対象から外すことで、周囲への影響を最小限に抑えることが可能です。
任意整理のデメリットとは?
任意整理のデメリットは、以下のとおりです。
- 借金の減額幅が、自己破産や個人再生などの他の債務整理と比べて小さい
- 減額後の借金を完済してから約5年間、信用情報機関に事故情報が登録される
- 債権者によっては、交渉が思い通りに進まず、減額が期待どおりにならないこともある
任意整理は財産への影響を最小限に抑えられる方法ですが、信用情報機関への事故情報の登録は避けられません。
任意整理のデメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生とは裁判所に借金減額を認めてもらう方法
個人再生とは、裁判所から再生計画の認可決定を受けることで、借金を大幅に減額する手続きです。
この方法を利用すると、借金を5分の1〜10分の1程度に減額できる可能性があり、原則3年(最長5年)で分割返済していくことになります。
個人再生については、以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生の条件と注意点
個人再生を利用できる条件は、以下のとおりです。
- 借金総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること
- 個人再生で減額された後の借金を、3年以内で返済できるだけの収入があること
また、個人再生では申立人が最低限返済しなければならない金額(最低弁済額)が定められています。
特に、借金が100万円未満の場合は全額を返済する必要があるため、個人再生を利用する意味がなくなってしまう点には注意が必要です。
個人再生の最低弁済額については、以下の記事で詳しく解説しています。
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個人再生の最低弁済額とは?返済額の計算方法や払えないときの対処法を解説
なお、個人再生には、主に会社員を対象とした「給与所得者等再生手続」と、個人商店や小規模事業者向けの「小規模個人再生手続」の2種類があります。
給与所得者等再生手続を利用する場合、以下の条件も満たす必要があります。
- 継続的な収入があり、給与として安定し、変動が小さいこと
- 過去7年以内に自己破産または給与所得者等再生を行っていないこと
個人再生のメリットとは?
個人再生のメリットは、以下のとおりです。
- 任意整理よりも借金の減額幅が大きい
- 原則として、借金の理由や経緯を問われない
- 「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用すれば、住宅ローンが残っている自宅を手放さずに済む
借金額が大きく、自宅を守りたい場合、これらのメリットは非常に大きな意味を持つでしょう。
個人再生のデメリットとは?
個人再生のデメリットには、以下のような点があります。
- 信用情報機関に事故情報が登録される(いわゆる「ブラックリスト」に載る状態)
- 国の機関紙「官報」に名前が掲載される
- 連帯保証人や保証人に影響が出る可能性がある
- 手続きが複雑で、完了までに1〜2年程度かかることがある
このように、個人再生は借金の元金を大幅に減らせる可能性がある一方で、デメリットも決して小さくはありません。
また、手続きが複雑なため、弁護士と相談しながら慎重に進めることをおすすめします。
借金返済が難しい場合は、専門家に相談することが重要
借金を帳消しにしたいと考えるほど返済が厳しい状況にあるなら、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
専門家に相談することで、今後の返済について適切なアドバイスを受けられるだけでなく、債務整理といった返済負担を軽減できる手続きを依頼することも可能です。
この項目では、返済が厳しくなった借金について弁護士や司法書士に相談するメリットや、債務整理を行った際に期待できる具体的な効果について詳しく解説していきます。
弁護士や司法書士への借金相談は無料で受けられます
「相談料が払えないから、弁護士や司法書士に相談するのを諦めている…」という人もいるかもしれません。
しかし、特に借金問題を積極的に扱う弁護士や司法書士であれば、借金に関する相談を無料で受け付けている場合がほとんどです。
さらに、そのような専門家は費用の工面が難しい債務者の事情を理解しているため、依頼費用の分割払いに対応してくれることが多いです。
弁護士や司法書士などの専門家に相談するメリットとは?
ここからは、返済が厳しくなった借金について、弁護士や司法書士などの専門家に相談するメリットを紹介します。
具体的には、以下のような点が挙げられます。
- 具体的な解決策を提示してもらえる
- どのくらい借金が軽減できるのか、見通しが立つ
- 債務整理を依頼すれば、返済が一時的にストップする
- 一人で悩み続ける必要がなくなる
次の項目から、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
明確な解決方法を提案してもらえる
借金の返済が厳しくなり、「どうすればよいかわからない…」と悩んでしまう人は多いのではないでしょうか?
そのような場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、具体的な解決策を提示してもらえるため、おすすめです。
特に、滞納が続いている場合、悩んでいるうちに時間が経ち、債権者から督促状が届いたり、裁判を起こされるなど、状況がさらに悪化してしまうことも少なくありません。
そうなる前に、弁護士や司法書士に相談し、適切なアドバイスを受けることで、スムーズに解決へと進めることができます。
債務整理を依頼すると、返済が一時的に停止される
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、その時点で債権者への返済を一時的にストップすることが可能になります。
通常、債務整理の手続きには半年〜1年程度かかりますが、その期間中は債権者への返済を止めて問題ありません。
さらに、貸金業法により、弁護士や司法書士が介入している間、債権者は債務者に対して直接取り立てを行うことが禁止されています。
そのため、返済をストップしても取り立ての心配がなく、安心して弁護士・司法書士への費用支払いに専念できるでしょう。
借金がどれくらい減額されるか見通しが立つ
前述のとおり、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、具体的な解決策が提示され、「どのくらい借金を減らせるのか」が明確になり、見通しを立てやすくなります。
これまで、返済の目処がまったく立たなかった人にとっては、借金の負担がどの程度軽減できるかがわかるだけでも、精神的な負担が大きく和らぐでしょう。
また、弁護士や司法書士が債権者との間に入り交渉することで、個人で対応するよりも柔軟な返済計画に見直してもらえるケースも少なくありません。
たとえば、利息のカットや月々の返済額を抑えた分割払いに応じてもらえれば、借金の返済負担を大幅に軽減できるでしょう。
一人で悩む必要がなくなる
借金問題は、身近な人には相談しづらい悩みの一つです。 そのため、誰にも打ち明けられず、一人で抱え込んでしまう人が非常に多いのが現状です。
しかし、弁護士や司法書士に相談することで、適切な解決策を知れるだけでなく、誰にも言えなかった不安を吐き出し、精神的な負担を軽くすることができるでしょう。
なお、当サイトでは、借金問題を積極的に扱う弁護士・司法書士を多数紹介しています。
相談は無料なので、一人で悩まず、まずは気軽に利用してみることをおすすめします。
まとめ
借金を帳消しにする方法には、「自己破産」「過払い金請求」「時効援用」「一括返済」など、いくつかの選択肢があります。
ただし、それぞれの方法には利用条件やデメリットが異なるため、自分の状況に合った手段を選ぶことが重要です。
また、条件を満たせず、これらの方法を利用できない場合でも、借金の返済負担を軽減する手段は残されているので、必要以上に不安になる必要はありません。
まずは、無料相談を活用し、弁護士や司法書士に相談してみましょう。専門家の視点から、最適な解決策について具体的なアドバイスを受けることができます。
自己破産に関するよくある質問
自己破産を考えている方の多くが抱える疑問について、まとめています。
自己破産をすると、借金は免除されるのですか?
はい。
自己破産の手続きにおいて、裁判で免責が認められれば、借金の返済義務は消滅します。
自己破産をすると、仕事を失うことになるのでしょうか?
自己破産を理由に会社を解雇されることはありません。
解雇が認められるのは、正当な理由がある場合に限られ、自己破産はその「正当な解雇理由」には該当しないためです。
ただし、自己破産による資格制限の対象となる職業については、一定期間、職務に就くことができないため注意が必要です。
自己破産すると、全ての財産が差し押さえられるのでしょうか?
いいえ。
自己破産をしても、生活に必要な最低限の家具や家電、99万円以下の現金、20万円以下の預金などは手元に残すことができます。
詳しくは、弁護士に相談して判断してもらうことをおすすめします。
親が自己破産をすると、子供の将来にどのような影響があるのでしょうか?
基本的に、親が自己破産したとしても、進学や就職、結婚などに影響を及ぼすことはありません。
ただし、自己破産をすると信用情報に事故情報が登録され、いわゆるブラックリストに載ることになります。
その期間中は、親が子供の奨学金の連帯保証人になれないといったデメリットがあるため、その点は把握しておくとよいでしょう。
自己破産でなぜ借金の返済義務が免除されるのですか?
自己破産では、一定の価値を超える財産をすべて債権者への弁済に充てることで、借金の返済義務を免れることが可能です。
ただし、裁判において借金の理由や生活再建の意思が確認され、裁判所に認められる必要があります。