娘がホスト通いで借金、親は売掛金を支払うべき?

娘がホスト通いで借金、親は売掛金を支払うべき?

目次

「ホス狂」という言葉があるように、ホストにのめり込み、返済できないほどの借金や売掛金を抱える女性は少なくありません。これにより、親も大きなトラブルに巻き込まれることがあります。女性がホストに支払わなければ、ホストがその女性の親に取り立てを行うこともあります。その結果、親が肩代わりして支払いをすることがよくありますが、これは根本的な解決にならない場合もあります。この記事では、娘がホストで作った借金や売掛金を親が支払う義務があるのか、取り立てを受けた場合にはどう対処すべきか、さらに娘自身が借金を解決する方法を解説します。娘のホスト通いに悩んでいる親御さんは、ぜひご一読ください。

そもそも、なぜホストクラブで借金をしてしまうのか?

ホストクラブに通うことで、適度なお金を使う限り、借金問題にはつながりません。しかし、ホストクラブで借金をしてしまう理由には、手元の金額以上にお金を使いたくなる仕組みが存在します。この記事では、実際にホストクラブで借金をした方の体験談を交え、以下の3つの点に焦点を当てて解説します。ホストクラブで借金をしてしまう主な理由を詳しく見ていきましょう。

他の客との競争意識を煽られる

ホストクラブでは、ホスト同士や女性客同士の競争によって、自然とお金を使いたくなる仕組みが作られています。
ホストクラブには「永久指名制」というルールがあり、一度指名したホストがその後もずっと担当としてつきます。

ホストは売り上げが良いほどランキング上位に入るため、女性客側にも「担当ホストの売り上げを支えるのは自分」というプライドや義務感が生まれます。
その結果、「担当をナンバーワンにしたい」と無理をしてお金を使ってしまう傾向があります。

さらに、同じホストを指名している他の客と競う形で、高級シャンパンを注文するなど、担当ホストのために大金を使うケースも少なくありません。
客同士にも競争や序列が存在し、指名したホストに最も多くお金を使う客を「エース」、頻繁に来店して担当を指名する客を「本数エース」と呼ぶ文化もあります。
「他の客に一目置かれる特別な存在になりたい」という思いから、無理をしてでもお金を使う仕組みがホストクラブには根付いています。


体験談

20代・女性

  • 借金額:50〜100万円
  • 借入先:ホスト(ツケ、売掛金)

キャバクラでお客として来ていたホストと連絡先を交換し、試しにホストクラブへ行ったところハマってしまいました。
担当の「エース」になるために、仕事を風俗に変えて努力を重ねました。

ある日、どうしても担当に「ラスソン」を歌わせたくて、70万円の売掛金をして高級シャンパンを注文しました。
その後も何度かツケをしましたが、月末までには鬼出勤をしてすべて返済しました。

担当が初めて入れたシャンパンや飾りを注文できたことがうれしく、ラスソンを聞けたときは本当に満足感を得ました。


30代・女性

  • 借金額:30〜50万円
  • 借入先:クレジットカード会社(キャッシング)、銀行カードローン

最初は全く興味がありませんでしたが、友人に誘われて軽い気持ちで入店したホストクラブにハマってしまいました。
他のお客さんに負けたくない、もっと自分を着飾りたいという気持ちが強くなり、結果として借金をしてしまいました。


用語解説

  • ラスソン:ラストソングの略で、ホストクラブの閉店時間にその日の売り上げ1位のホストが好きな歌を歌う慣例。
  • 掛けをする:売掛金(ツケ)制度を利用して支払いを後日にすること。

精神的な依存に陥ってしまう

ホストクラブへの依存と借金の実態

ホストクラブに通い借金を抱えてしまう背景には、ホストやホストクラブが提供する非日常的な空間や精神的な依存を生み出す仕組みが大きく関係しています。

ホストは女性客を「姫」と呼び、優しく接したり甘えた態度を見せたりすることで、普段の生活では味わえない特別な体験を提供します。このような空間に浸ることで得られる多幸感にハマると、たとえお金に余裕がなくても通いたい気持ちを抑えられなくなります。

さらに、ホストには「客を育てる」ためのノウハウがあり、時にはお金を使わせ、時には「無理しなくていい」と制することで、女性客の心を巧みに操作します。その結果、

  • 「優しい担当ホストのために何かしたい」
  • 「見捨てられたくない、嫌われたくない」

といった感情が芽生え、高額な注文をしてしまうケースも珍しくありません。

また、ストレス発散や自己肯定感を満たすために通う人もおり、一晩で何十万円もの大金を使うことで一時的な満足感を得ることもあります。以下は、実際の体験談です。


体験談①:親から借金をして返済

  • 年代・借金額:30代女性、50~100万円
  • 借入先:家族や友人

友人に連れられて新宿のホストクラブに行き、お姫様扱いに魅了され、親に嘘をついてお金を借りるまでのめり込みました。二日酔いで仕事に支障をきたし注意されたことで、自分の状況を改めて自覚。単発バイトで借金を返済しました。


体験談②:消費者金融で借金を重ねる

  • 年代・借金額:40代女性、50~100万円
  • 借入先:消費者金融

ママ友に誘われてホストクラブを訪れ、自分の理想のタイプのホストに出会ったことがきっかけで、通うたびに高額なシャンパンを注文するように。貯金が減り、ホストに会えなくなることを恐れて消費者金融に手を出すようになりました。不安を感じながらも、彼に会いたいという気持ちが勝っていました。


ホストクラブは一時的な幸せを提供しますが、その代償として経済的な負担を伴うことが少なくありません。冷静に現実を見つめることが、依存から抜け出す第一歩となります。

売掛金(ツケ)の制度によって金銭感覚が麻痺してしまう

売掛金(ツケ)とは、その日の売り上げを担当ホストが一時的に立て替えるシステムのことです。
ホストクラブでは、手持ちのお金が少ない日でも、売掛金(ツケ)を利用すればその場で支払う必要がありません。
そのため、「お金を気にせずどんどん注文しよう」という気持ちが生まれることもあります。

しかし、売掛金(ツケ)にはデメリットもあります。それは、お金を使ったという実感が湧きにくい点です。
月末に売掛金を清算する際、予想以上に高額になっていて驚くことも少なくありません。

娘がホスト通いで作った売掛金に親の支払い義務はない

娘がホスト通いで作った売掛金や借金は、基本的に娘自身の債務であり、親がその支払いを代わりに行う義務はありません。
たとえ親名義で借用証が作成されていたとしても、無断で作成されたものは偽造文書とみなされ、契約は無効です。
また、勝手に保証人にされている場合も同様に、保証契約は無効となります。

親に返済義務が発生するのは「表見代理」が成立する場合に限られます。
これは、ホスト側から見て女性客の親が代理権を持っていると判断される状況があった場合に成立しますが、通常、娘がホストクラブで浪費し売掛金や借金を作るために親が代理権を与えることは考えにくいでしょう。

したがって、娘がホスト通いで作った売掛金や借金に関して、親に支払い義務が生じるケースはほとんどないと考えて問題ありません。

ホストが娘の売掛金を親に請求する理由とは?

実際のところ、娘が売掛金や借金を支払わない場合、ホストが親に請求してくることは少なくありません。
しつこく電話をかけてきたり、自宅に取り立てに来たりするケースもあります。

ただし、ホスト側も娘の売掛金や借金について親に返済義務がないことは理解しています。
それでも親に請求する理由としては、次の2つが挙げられます:

  1. 娘に心理的圧力をかけてお金を用意させるため
  2. 親が心配して肩代わり返済してくれることを期待しているため

娘は、ホストが親に取り立てに来るのを避けようと、風俗店で働いて稼いだり、闇金から借りたりしてお金を用意することがあります。
また、親としても、娘の身を案じたり、取り立てへの恐怖、近隣の目を気にしたりして、肩代わりしてしまうケースもあります。

さらに、ホストからの取り立てに対応する際、親が支払いを約束したり、借用書にサインしてしまうと、法律上の返済義務が生じる可能性があるため、特に注意が必要です。

ホストから取り立てを受けた親の対処法

ホストから親が取り立てを受けた場合、すぐに肩代わりして返済するのはおすすめできません。
安易に肩代わりしてしまうと、娘が浪費を反省せず、ホスト通いを続けてしまう可能性が高いためです。

娘の売掛金や借金については、後述するように、娘自身が問題を解決するのが最善の方法です。
親としては、返済義務がないことを前提に、以下の対応を心がけましょう。

  • 毅然と支払いを拒否する
  • 悪質な取り立てを受けた場合は警察に相談する
  • 取り立てが止まらない場合は弁護士に相談する

支払いを毅然と拒否する

親として返済義務がない以上、取り立てを受けても毅然と支払いを拒否することが重要です。
ホストから罵詈雑言を浴びせられることがあっても、「娘の借金は親には関係ない」と冷静に対応しましょう。

少しでも支払う意思を見せると、ホストに肩代わりを期待され、取り立てがエスカレートして止まらなくなる可能性があるため、十分注意してください。
また、言葉巧みに借用書へのサインを求められることもありますが、絶対にサインしてはいけません。

悪質な取り立てを受けた場合は警察に相談する

警察は民事不介入の原則により、金銭問題には基本的に介入しません。
しかし、取り立ての際に以下のような犯罪行為が行われた場合は、警察への相談が有効です。

  • 殴る、蹴る、小突くなどの暴力を振るわれた(暴行罪・傷害罪)
  • 脅された(脅迫罪)
  • 暴行や脅迫により支払いを迫られた(恐喝罪)
  • 借用書へのサインを強要された(強要罪)
  • 自宅に無許可で押し入られた(住居侵入罪)
  • 帰ってくれと言っても居座られた(不退去罪)
  • 自宅の玄関などに貼り紙や落書きをされた(器物損壊罪)

多くの場合、警察に通報するだけでホストによる悪質な取り立ては止まります。
もし犯罪行為を伴う取り立てが続く場合は、被害届の提出や刑事告訴を検討することも重要です。

取り立てが続く場合は弁護士に相談する

ホストによる取り立てが止まらない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
相談するだけでも、効果的な対処法についてのアドバイスを受けることができます。

取り立てに犯罪行為が伴っている場合は、弁護士に刑事告訴の手続きを依頼することも可能です。
刑事告訴は被害者本人が行った場合、受理されないケースも多いですが、弁護士に手続きを代行してもらうことで受理され、警察が動いてくれる可能性が高まります。

また、ホストによる取り立てが犯罪に至らない場合でも、弁護士に交渉を依頼することができます。
弁護士が法律の専門家として、親に返済義務がないことをホストに説明し、交渉を行うことで、親とホストとの関係を断ち切ることが可能です。

娘もホストクラブの売掛金を支払う必要がない4つのケース

娘がホスト通いで売掛金や借金を作った場合、親が肩代わりをするのではなく、娘自身が解決できるようサポートすることが大切です。
まず、娘に支払い義務があるかどうかを確認することが重要です。
ホストクラブで作った売掛金や借金でも、以下のようなケースでは支払い義務がない、または消滅する可能性があります。

次の4つのケースに該当する場合、娘に支払い義務はないため、ホストからの請求を拒否することができます:

  1. 脅されてツケをした場合
  2. 騙されてツケをした場合
  3. 未成年者がツケをした場合
  4. 消滅時効が成立した場合

ツケを脅された場合

ホストから脅されてツケをした場合、売掛の契約を取り消せる可能性があります。
ホストクラブでは、ホストの強い働きかけによって、女性客がやむを得ずツケをするケースが少なくありません。
以下のような状況では、ホストの行為が民法上の「強迫」に該当するため、売掛の契約を取り消すことが可能です:

  • 注文しなければ帰さない などと脅された場合
  • 注文しなければ風俗で働いていることをバラす などと脅された場合
  • 注文しなければ裸の写真をばらまく などと脅された場合

契約の取消しが認められれば、売掛はなかったこととなり、支払い義務は発生しません。
しかし、実際には「強迫」を理由に取消しが認められるケースはあまり多くありません。
ホストから懇願されてツケをした場合、多少しつこく迫られていても、通常は強迫には該当しないことがほとんどです。

ツケを騙された場合

ホストに騙されてツケをした場合も、売掛の契約を取り消せる可能性があります。
以下のような状況では、ホストの行為が民法上の「詐欺」に該当し、売掛の契約を取り消すことができます:

  • 1本5万円と言われたボトルを注文したのに、請求額が50万円だった
  • 売掛金の半分をホストが負担すると言われたが、全額請求された
  • サービスだと言われたのに、実際はツケになっていた

ただし、これらの詐欺行為があったことを証明する責任は客側にあります。
立証が難しい場合も多いため、詐欺を理由に契約を取り消したい場合には、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

ツケをしたのが未成年者の場合

娘がツケをした時点で18歳未満であれば、親権者の同意がない限り、契約を取り消して支払いを拒否することができます。
しかし、娘が成人であると偽ってホストクラブでツケをした場合、契約の取消しは認められません。

この場合、成人であると偽った事実はホスト側が証明する必要があります。
ただし、娘が身分証明書を偽造または変造していた場合は、言い逃れが難しくなります。

一方、ホストクラブで身分証明書の提示を求められなかった場合には、契約を取り消せる可能性もあります。
このような場合は、弁護士に相談して適切に対処することをおすすめします。

時効が消滅している場合

売掛金や借金には消滅時効があり、時効が成立している場合には、時効を援用することで支払いを拒否できます。
ただし、民法改正により時効期間が複雑化しているため、以下の表を参考に注意してください。

消滅時効成立までの期間

項目2020年3月31日以前2020年4月1日以降
売掛金の場合注文したときから1年注文したときから5年
借用書を作成した場合作成したときから10年作成したときから5年

2020年3月31日以前にツケをした場合は、「1年」の消滅時効が成立していることも少なくありません。
娘さんが売掛金を長期間支払っていない場合、詳しい事情を確認し、消滅時効が成立しているかどうかを確認することをおすすめします。

ホストで作った借金を返せない場合はどうなる?

ホストで作った借金の返済が難しいと感じた場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
売掛金(ツケ)については、脅迫や詐欺、違法金利での貸付が認められた場合、返済義務がなくなる可能性があります。
また、未成年者の法律行為であれば、契約を取り消すことが可能です。

違法行為がない場合でも、以下の方法で借金を減らしたり、ゼロにしたりすることができます:

  • 時効の援用
  • 任意整理
  • 自己破産
  • 個人再生

弁護士に相談することで、状況に適した解決方法を提案してもらえるため、早めに対処を検討しましょう。
以下で、各対処法について詳しく解説します。

新規の借り入れやカードの利用ができなくなる

カードローンで借りたお金を返済できない場合、支払期日の翌日から最短で新たな借り入れやカードの利用が停止される可能性があります。
利用限度額が残っていても、それに関わらず利用できなくなります。

損害金の遅延分が加算される

返済が期日から1日でも遅れると、滞納に対する損害賠償金として遅延損害金が発生します。
遅延損害金は以下の計算式で算出されます:

支払いが遅れている金額 × 遅延損害金利率 ÷ 365(日) × 延滞日数

遅延損害金利率は通常の利息よりも高く設定されており、金融業者による貸付けでは上限が20%と定められています。
たとえば、遅延損害金の利率が20%、借金の元本が20万円、滞納日数が15日だった場合:

20万円 × 20.0% ÷ 365日 × 15日 = 1,644円

この金額が返済額に加算されます。
返済を放置すると遅延損害金がどんどん増え、総支払額が膨らみ続けるので注意が必要です。

消費者金融やカード会社からの督促が開始される

返済期日を過ぎて数日が経つと、電話やメール、ハガキで返済日の確認連絡が届くようになります。
郵送される督促状には、支払いを促すための情報として、滞納分の支払期限や振込先が記載されています。

督促状を無視すると、次に個人の携帯電話や自宅の電話に連絡が入ります。
これにも対応しない場合、最終的には勤務先に電話がかかる可能性があります。
勤務先への連絡では、利用者への配慮から消費者金融業者名やカード会社名は名乗らず、個人名で連絡をしてくることが一般的です。

しかし、何度も電話があると「何かトラブルがあるのでは」と思われる可能性があり、借金が発覚するリスクがゼロとは言えません。

いわゆるブラックリストに登録される(信用情報機関に事故情報が記録される)

返済期日から2ヶ月以上滞納すると、クレジットカード会社や消費者金融が加盟している信用情報機関に、滞納が金融事故情報として登録されます。
これが、一般的に「ブラックリストに載った」と言われる状態です。

信用情報機関には以下の3社があります:

  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
  • 株式会社シー・アイー・シー(CIC)

銀行や消費者金融、クレジットカード会社などの金融業者は、これらのいずれかに加入しています。
滞納により登録された事故情報は、すべての金融業者が共有するため、次のような影響を受ける可能性があります:

  • 新規借り入れができなくなる
  • クレジットカードの利用や新規契約ができなくなる
  • スマートフォンや携帯電話端末の分割購入ができなくなる
  • 保証人や連帯保証人になれない
  • 賃貸住宅の契約が難しくなる

ブラックリストに登録される期間は、完済から約5年程度とされており、その間はこれらの制約を受けることになります。

ホストの売掛金の場合

ホストクラブは信用情報機関に加盟していないため、売掛金を滞納しても金融事故情報として登録されることはありません。
ただし、貸金業者よりも厳しい取り立てが行われるケースもあるため、滞納時には十分注意が必要です。

借金全額と遅延損害金の一括支払いを求められる

返済を滞納して2~3ヶ月が経過すると、借入残高を一度にまとめて返済するよう求められることがあります(これを一括請求といいます)。
また、長期滞納に対する最終的な警告として、催告書が送られてくるのもこのタイミングです。
催告書が届くということは、裁判などの法的措置が進行する段階に入る可能性があることを示しています。

この時点では、すでにいわゆるブラックリストに登録されているため、新たに借り入れをして返済資金を調達することは難しい状況といえるでしょう。

一括請求を求められる理由

借金をしている人には、契約で定められた返済期日までに返済すればよいという権利があります。これを期限の利益といいます。
たとえば、10万円を借りて、2ヶ月後の12月31日に返済する契約を結んだ場合、それまでの間は返済を求められることはありません。

しかし、この期限の利益は、返済が2~3ヶ月滞納すると喪失します。
期限の利益を失うと、「一括で返済してほしい」と求められた際、これを断ることができない状況となります。

訴訟を提起され、給与や財産が差し押さえられる

催告書を無視し続けると、消費者金融やカード会社から訴訟を起こされ、裁判所から支払督促や訴状が送られてくる可能性があります。
これらをさらに放置してしまうと、最終的に強制執行が行われ、財産が差押えられる恐れがあります。

差押えとは、借金をした人の財産を強制的に換金や処分して、借金の回収に充てることを指します。
差押えの対象となる主な財産は以下の通りです:

  • 手取り給与の4分の1(手取りが44万円を超える場合は33万円を超過した分)
  • 一定以上の現金、預貯金、生命保険など
  • 自動車、バイク、貴金属、骨董品など
  • 土地や建物などの不動産

差押えは、借入残高の全額が回収されるまで続く可能性があります。
ただし、以下の手段を取ることで途中で解除することが可能です:

  • 借入残高の一括返済
  • 個人再生や自己破産

差押えのリスクを回避するためにも、早めの対応が重要です。

【注意】売掛金の取り立てが激化するケースも

ホストクラブでの売掛金(ツケ)が支払えない状態になると、ホストから取り立てを受けることがよくあります。
ホストには貸金業法の制約がないため、消費者金融業者やカード会社よりも取り立てが手荒くなる可能性があります。

用語集:貸金業法とは?

貸金業法は、消費者金融やカード会社などを対象とした法律です。この法律では、上限金利や借入金額の制限(総量規制)を定め、借り手が安心して借り入れできる環境を整備しています。また、以下のような取り立て行為を禁止しています:

  • 正当な理由なく不適当な時間帯に取り立てを行うこと
  • 職場への訪問
  • 暴力的な態度や大声を上げること
  • 本人以外の家族への支払い請求

ホストクラブの取り立ての特徴

売掛金(ツケ)はホスト自身が立て替えていることが多く、回収できない場合はホストの給与から天引きされることもあります。そのため、ホストは売掛金を回収するために次のような行動を取る場合があります:

  • 自宅や職場まで訪れて取り立てをする
  • 風俗店で働かせ、その収入で支払わせようとする
  • 売春やヤミ金からの借金を強制する

ホストクラブでの飲食代は当然支払うべきものですが、返済を迫る過程で脅迫や暴力が行われた場合は刑法に違反します。被害に遭った場合は、警察や弁護士に相談することをおすすめします。実際に、売掛金の回収を目的として事件に発展したケースも報告されています。

注意点

担当ホストから「ナンバー上位になるために売り上げに協力してほしい」と頼まれると、つい協力したいと思うかもしれません。しかし、売掛金(ツケ)をしてまで貢献を迫るホストは、客を金づるとしてしか見ていない可能性があります。

借金で生活が苦しくなった場合、まずはホストクラブ通いをやめるという強い意思を持つことが大切です。そのうえで、信頼できる人に相談し、解決への第一歩を踏み出しましょう。

娘がホスト通いで作った売掛金や借金を支払えない場合の対処法

娘がホスト通いで作った売掛金や借金の支払い義務を負っており、金額が大きすぎて本人が返済できない場合には、以下の対処法を検討するようすすめてあげましょう。

減額や分割払いの交渉を行う

まずは、ホストと交渉し、分割払いや減額を認めてもらうことを検討するのがよいでしょう。
この際、親が支払いを手伝うのではなく、あくまで娘自身が支払える範囲での和解を目指すことが重要です。

交渉の際、親が同席したり、代わりに交渉を行うことも可能ですが、その場合でも肩代わり返済を承認してしまわないよう十分に注意が必要です。
安心して交渉を進めるためには、弁護士など専門的な第三者に任せることをおすすめします。

整理を債務で行う

娘が売掛金や借金の返済が厳しい状況であれば、債務整理を検討することをおすすめします。
ホスト通いで作った売掛金や借金も債務整理の対象となるため、状況に応じた手続きを選択すれば金銭問題を解決できる可能性があります。

また、消費者金融やクレジットカード会社からの借金がある場合も、債務整理を通じてまとめて解決することが可能です。

債務整理には、主に以下の3種類の手続きがあります:

  1. 任意整理
    債権者と直接交渉し、借金の減額や返済期限の延長を認めてもらう手続き。
  2. 個人再生
    裁判所の手続きを通じて借金を大幅に減額する手続き。
  3. 自己破産
    裁判所の手続きを通じて借金を全額免除する手続き。

ただし、ホスト通いで多額の売掛金や借金を作った場合、これが「著しい浪費」に該当すると判断される可能性があり、自己破産が認められない場合があります。

最適な手続きを選ぶには専門的な知識が必要となるため、弁護士に相談のうえで対応を検討することを強くおすすめします。

売掛金(ツケ)に違法行為があった場合は無効となる

売掛金(ツケ)が発生した際に違法行為が認められる場合、売掛金(ツケ)そのものが無効となる可能性があります。
具体的には、次のようなケースが該当します。

売掛金(ツケ)を脅迫や詐欺によって利用させられた場合

たとえば、以下のようなケースが該当します:

  • ホストから脅され、高額な酒やシャンパンタワーを注文させられた場合
  • 「いずれ結婚しよう」などとだまされ、来店した場合

このような場合には、その意思表示を取り消すことが可能であり、支払いが不要になる可能性があります(民法第96条第1項)。

遅延損害金の金利が非常に高い

一部のホストクラブでは、遅延損害金の金利を非常に高く設定しているケースがあります。
このような場合、売掛金(ツケ)が無効となり、支払い義務がなくなる可能性があります(民法第90条)。
民法第90条は、公の秩序や善良の風俗に反する内容を目的とした法律行為を無効とする規定です。

飲食時に未成年であった場合、売掛金(ツケ)の返済義務はなくなる

ホストクラブで飲食した客が未成年だった場合、売掛金(ツケ)の返済義務はなくなります。
これは未成年者が単独で有効な法律行為を行えない制限行為能力者とされるためです。

用語集:法律行為とは?

法律行為とは、意思表示によって権利や義務などが発生することを指します。
たとえば、売り手と買い手の意思表示が一致して売買契約が成立した場合、売り手にはモノを引き渡す義務が、買い手には支払いの義務が発生します。

民法第5条第1項により、未成年者が行う法律行為には親権者など法定代理人の同意が必要です。同意のない場合、その法律行為は取り消しの対象となります。これが未成年者取消権です。

未成年者取消権の適用

未成年者取消権により、未成年者が保護者の承諾を得ずに売掛金(ツケ)で飲食をした場合、その契約は無効となり、返済義務がなくなります。

成人年齢の改正に伴う変更点

民法改正により、2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。この変更により、未成年者取消権の適用が次のように変わります:

  • 2022年3月31日に満18歳でホストクラブで飲食をした場合
    → 未成年者取消権を行使できる
  • 2022年4月1日に満18歳でホストクラブで飲食をした場合
    → 未成年者取消権を行使できない

時効が成立した場合、返済義務はなくなる

借金には時効(消滅時効)があります。
5年または10年が経過した後に「時効の援用」という手続きを取れば、時効が成立する可能性があります。
時効が成立すれば、売掛金(ツケ)や消費者金融などからの借金の返済義務がなくなります。

ただし、注意が必要なのは、時効が成立するまでに以下のような行為があると時効が更新(中断)され、時効期間がゼロから再スタートとなることです:

  • 相手が裁判所を通して支払督促や訴訟、差押えを行う場合
  • 「少しでも返済しよう」として1円でも支払ってしまう場合
  • 自ら「返済を待ってほしい」と猶予を求めてしまう場合

これらの行為により、時効が更新されるだけでなく、財産が差し押さえられると生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

そのため、時効成立を待つという方法は、現実的ではない場合も多いことを理解しておきましょう。

「飛ぶ」という選択は現実的か?

客が売掛金(ツケ)を支払わず姿をくらますことを「飛ぶ」と言います。
最終手段として思い浮かぶかもしれませんが、生活に支障をきたさずに「飛ぶ」のは現実的ではありません。

確かに、「飛ぶ」ことで時効が成立すれば返済義務がなくなる可能性はあります。
しかし、住所が判明すれば、ホストなどお金を貸した側からの取り立てが続く可能性があります。
さらに、先述の通り、借金の消滅時効を妨げるために、貸した側が裁判所を通じて督促手続きを行う場合も考えられます。

生活をきちんと立て直すためには、「飛ぶ」よりも、任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理を検討する方が現実的で安全です。
債務整理は、合法的に借金返済の負担を軽くするための手続きです。

次の項では、それぞれの方法について詳しく解説します。

個人再生により借金を圧縮できる場合もある

借金の額が膨らんだ場合、個人再生という手続きを利用することで、借金額を大幅に減額できる可能性があります。
個人再生とは、裁判所に申立てを行い、借金を5分の1から10分の1に減額してもらう手続きです。
減額後の借金は、原則3年(最長5年)で完済を目指します。
ただし、個人再生では最低100万円を返済する必要があり、他の借金もすべて手続きの対象に含める必要があります。

個人再生のメリット

  • 借金を元金ごと大幅に減額できる
  • 金融機関からの取り立てや強制執行が停止される
  • 住宅ローンを返済中でも、持ち家の処分を免れる可能性がある(住宅ローン特則適用)

個人再生のデメリット

  • 裁判所を介した手続きのため、家族や職場に知られる可能性がある
  • 保証人付きの借金がある場合、保証人に一括請求が行われる
  • 完済後5年程度、または手続き開始後7年程度はブラックリストに登録される

個人再生の手続きは複雑で、時間がかかる場合があります。
しかし、任意整理では十分な減額が難しい場合や、自己破産が選べない状況(詳細は後述)では、有効な選択肢となる可能性があります。

自己破産を行えば、借金を原則としてゼロにすることができる

安定した収入が見込めず、自分で借金を返済する見込みが立たなくなった場合、自己破産によって借金を原則すべて免除(免責)してもらうことが可能です。
自己破産とは、裁判所に支払い不能を申立て、一部を除くすべての借金の支払い免除を認めてもらうための手続きです。

自己破産のメリット

  • 借金を原則全額免除してもらえる
  • 手続きが始まると、金融機関からの取り立てや強制執行が停止される
  • 自己破産後に得た財産や収入は自分のものになる
  • 生活を立て直すために必要な財産(生活用品など)は残せる

自己破産のデメリット

  • 家や車など、一定以上の価値のある財産は回収される
  • 保証人がついている借金の場合、保証人が一括請求を受ける可能性がある
  • 裁判所を介した手続きであるため、家族や職場に知られる可能性がある
  • 手続き後、5~7年程度はブラックリストに登録される

注意点

自己破産には、該当すると手続きが認められない「免責不許可事由」があります。
ホストクラブでの借金がこの免責不許可事由に該当する可能性について、次の項で詳しく解説します。

免責不許可事由に該当し、自己破産ができないケースもある

免責不許可事由とは、裁判所が借金返済の免除(免責)を認めない理由のことで、破産法第252条第1項で定められています。
ギャンブルや浪費が原因の借金による自己破産は原則として認められておらず、ホストクラブでの借金も免責不許可事由に該当します。

ただし、以下のような事情がある場合には、裁判所の裁量で免責が認められることがあります(裁量免責):

  • 借金が膨らんだ経緯に特別な事情がある場合
  • 借金をしたことを反省している場合
  • ホストクラブへの通いをすでにやめていることを示した場合

自己破産を検討している場合は、事前に弁護士など法律の専門家に相談することをおすすめします。

娘のホスト通いに困った場合は弁護士に相談を

娘がホスト通いでトラブルを抱え、親が困ったときには、まず弁護士に相談することが最善の対処法です。相談するだけでも、次のようなメリットが得られます:

  • 親がホストから取り立てを受けた際の正しい対処法がわかる
  • 娘に売掛金や借金の返済義務があるかどうかを判断できる
  • 娘に返済義務がある場合でも、最適な解決方法を提案してもらえる
  • ホストとの交渉や債務整理が必要な場合、弁護士が代理人として対応してくれる

問題解決には娘自身が弁護士に相談する必要がありますが、初回は親が代理で相談することも可能です。
まずは親御さんが弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることを検討してみてください。

また、もし親が肩代わりして多額の売掛金を支払った場合、その支払いに関して当事者となります。
このようなケースでは、弁護士に依頼して返金を求めることも可能です。その際は、親御さんご自身が弁護士に相談してください。

弁護士への相談でホストでの借金を解決した方の体験談

弁護士への相談を通じてホストでの借金問題を解決した方の体験談をご紹介します。

任意整理で160万円の借金を解決

借金と解決方法の概要

  • 借入総額:160万円
  • 借入先:4社(消費者金融、カード会社など)
  • 解決方法:任意整理

以前から買い物や旅行などで一時的な出費を賄えず、借金を繰り返していました。
さらに、1年ほど前からホストにハマり、複数の金融機関から借金をする生活に陥りました。
ホストの人からも直接借り入れるようになり、総額がいくらになるのか把握できなくなってしまい、不安でいっぱいになったことが相談のきっかけです。

同居している両親には絶対に言えず、周囲に知られない解決方法がないかと思い、無料相談を利用しました。
相談する前は「こんな問題に解決方法なんてない」と怒られるのではと心配していましたが、優しく話を聞いてもらい、力になってもらえて本当に助かりました。

借金そのものがゼロになったわけではありませんが、現実的な金額に減額され、返済の終わりが見えるようになったことで、心機一転して頑張ろうという気持ちになりました。
本当にありがとうございました。

※この体験談は一例であり、すべてのケースが同じように解決するわけではありません。

任意整理で500万円の借金を解決

借金と解決方法の概要

  • 借入総額:500万円
  • 借入先:5社(消費者金融など)
  • 解決方法:自己破産

ホストクラブに通うきっかけは、友人に誘われて軽い気持ちで行ったことでした。
思いのほか楽しく、ストレス発散にもなったので、2回、3回と通うようになり、次第にお金が足りなくなっていきました。
「もう行けない」と思っていた矢先、ホストから連絡が来て、断れずに通い続けてしまい、週2回ほど通うようになりました。

「お金を払わなくてもいいから来てほしい」と言われて行った結果、立て替えが発生し、支払いをカードで続けるうちに限度額を超えてしまいました。
そこでアイフルやアコムといった消費者金融から借金をするようになり、気づけば借金総額がわからなくなるほど膨らんでいました。

当時、別に交際していた彼氏との結婚が決まっていましたが、借金の事実を隠し続けるのが辛くなり、思い切って彼に打ち明けました。
彼は色々と調べてくれ、弁護士に相談することをすすめてくれたので、無料相談ができる弁護士事務所を探して相談しました。

自分でも借金の詳細を把握しておらず、調査は大変でしたが、弁護士の方が親身に対応してくれたおかげで、無事に自己破産の手続きを終えることができました。
支えてくれた彼にも、丁寧に対応してくれた弁護士の方にも感謝しています。

※これは一例であり、同じような結果になるとは限りません。

まとめ

娘がホスト通いをしていることで、親が売掛金や借金の取り立てを受けても、親には返済義務はありません。
親としては、安易に肩代わりして解決しようとせず、娘が適切な解決方法を見つけられるようサポートすることが重要です。

取り立てを止めるためにも、また娘自身の問題を根本から解決するためにも、まずは親御さんが直接弁護士に相談することをおすすめします。