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うつ病で返せない借金はどうすればいい?うつ病の方の借金解決方法
目次
「うつ病で借金返済ができない…」
「うつ病でお金がない・借金が返せないに活用できる支援制度はある?」
うつ病を患い、仕事ができなくなり休職の末、無職に…。生活費を補うために借金を重ねてしまった方もいるのではないでしょうか。また、うつ病によって収入が途絶え、借金の返済が難しくなったケースも考えられます。
この記事では、うつ病と借金の関係性について解説するとともに、具体的な解決方法をご紹介します。さらに、うつ病を患っている方が利用できる支援制度についても詳しく説明します。これらを知ることで、借金返済や生活費の問題を解消する手助けとなるでしょう。
うつ病は誰にでも起こりうる病気です。「自分には無縁だ」と思っている方でも、家族や自分がいつ同じ状況になるかわかりません。今のうちに知識を身に付け、いざというときに備えましょう。
うつ病と借金の関係。うつ病の借金は免除されない!
国際機関OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、新型コロナウイルスの影響で日本国内におけるうつ病・うつ症状の患者割合は、10年前と比べて約2倍に増加しています。また、厚生労働省の調査では、平成29年時点でうつ病を含む気分障害の患者数が124.6万人と報告されています。
これらのデータが示すように、うつ病やうつ症状はますます身近な病気となっています。当然、うつ病によって働けなくなると、経済的な困難にも直面することに。この記事では、うつ病と借金問題の関係性について詳しく解説します。
参考:国内の「うつ」は17.3%コロナ禍で割合増の申告|東洋経済ONLINE・参考資料|厚生労働省 うつ病と借金問題について
うつ病が原因で借金をする場合
うつ病が原因で借金を抱えるケースは少なくありません。うつ病になると、ストレスや過労によってエネルギーが不足し、休職や退職を余儀なくされる人も多くいます。その間、減少した収入を補うために、消費者金融や銀行のカードローンでお金を借りざるを得ない場合もあります。
1回の借入で済むなら良いのですが、働けない期間が長引くと、借金を重ねてしまうケースが増えてしまいます。また、双極性障害のように、そう状態とうつ状態が交互に現れる場合、そう状態で活動が活発になり、浪費癖やギャンブルにより借金を抱えることもあります。
借金が原因でうつ病になる場合
借金が原因でうつ病を発症する人も少なくありません。過度な心理的負担が引き金となり、借金の返済がストレスやプレッシャーとなってうつ病を招くケースがあります。特に、多額の借金や滞納が続いている状況では、精神的な負担が一層大きくなるでしょう。
返済日が近づくと、「返済できないなら死んでしまいたい」と考えたり、電話が鳴るたびに「取り立てではないか」と怯えるような状況に陥ることも。こうした状態が続くと、うつ病を発症して収入が途絶え、さらに借金返済が不可能になるという悪循環に陥る可能性があります。
うつ病の借金は免除にならない
うつ病などの精神疾患が原因で借金をしてしまった場合でも、原則として返済義務が免除されることはありません。貸金業法などの法律には「うつ病になった場合に借金返済を免除する」といった規定が存在せず、金融機関の規約にもそのような取り決めはほとんど見られないためです。
たとえうつ病で長期入院が必要になったとしても、債務者の事情が考慮されることはなく、借金の返済義務は引き続き残ります。そのため、うつ病になった場合でも借金返済について真剣に向き合い、適切な対処方法を検討することが重要です。
うつとは?うつ病になったらどうしたらいい?
うつ病で借金が返せなくなった場合は、病気と借金の両方に向き合い、それぞれを並行して解決していく必要があります。家族や専門機関の支援を受けながら、自分ができることから少しずつ取り組んでいきましょう。
うつという病気・治療方法は?
うつ病は精神疾患の一種であり、自然に治る風邪のようなものではありません。そのため、以下に挙げる適切な治療や療養が欠かせません。
うつ病の症状があるなら医療機関を受診
うつ病の原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレスや環境の変化、性格、遺伝的要素などが影響していると考えられています。
また、うつ病と言っても、気分の状態がうつ状態のみの鬱病(単極性うつ病)と、うつ状態と躁状態または軽躁状態を繰り返す躁鬱病(双極性障害)というように症状の現れ方によって大きく分けて2パターンあります。
自然に治る病気ではないため、以下のような症状が現れた場合には、心療内科や精神科などの専門医を早めに受診することが重要です。
身体の症状
- 疲労感や倦怠感
- 食欲不振
- 睡眠障害(不眠・中途覚醒・過眠)
- 動悸や息切れ
- 頭痛や身体の痛み
心の症状
- 抑うつ感
- 意欲の低下
- 不安感や焦燥感
- 喜びや興奮が感じられなくなる
- 思考力や集中力の低下
- 自分を責める傾向
「診察を受けるお金がない」「仕事を休む余裕がない」などの理由で受診を後回しにすると、症状が深刻化し、寛解(症状が治まり穏やかな状態)まで時間がかかる場合があります。その結果、社会復帰が遅れたり、借金問題がさらに悪化したりすることも考えられます。「いつもと違う」「何かおかしい」と感じた時点で、早めに専門の医療機関に相談することをおすすめします。
無理せずに休職する
うつ病の症状が悪化した際には、無理をせず休職を検討することが重要です。うつ病は責任感の強い人がなりやすい傾向があり、「周囲に迷惑をかけたくない」「自分の仕事に穴を開けたくないし、クビになって無職になったらやばい」と考えてしまう方も少なくありません。しかし、ここで適切に休養を取らないと、うつ症状がさらに悪化し、最終的には仕事を続けることができなくなる可能性があります。回復にも長い時間を要することになりかねません。
「今休むことは、将来的に社会復帰を目指すために必要なステップ」と自分に言い聞かせ、まずは心と体の健康を最優先に考えましょう。休職が可能な期間や休職中の給与支給の有無などは、勤務先の規則によって異なります。まずは就業規則を確認し、総務担当者や人事部門に相談してください。その際、医療機関から診断書を取得するなどの準備も進めておくとスムーズです。
休職中は治療に集中する
仕事を休んでいる間は、医師の指導に従い治療に専念することが大切です。うつ病の治療には、以下の4つの方法があり、症状や状態に応じて適切な方法が選ばれます。
治療方法 | 内容 |
---|---|
休養・環境調整 | – 規則正しい生活 – 十分な睡眠 – バランスの取れた食事 – 職場での配置転換 – 残業時間の短縮 – 家事負担の軽減 |
薬物治療 | – 抗うつ剤 – 抗不安薬 – 睡眠導入剤 – 気分安定剤 – 非定型向精神薬 |
精神療法 | – 認知行動療法 – 対人関係療法 |
その他の治療 | – 運動療法 – 光療法 – 電気けいれん療法 – 磁気刺激法 |
責任感が強い方は、休むことに罪悪感を感じることがあるかもしれません。しかし、「社会復帰するためには、今は治療に専念することが最善策である」と前向きに考え、心と体をしっかり休めながら治療に取り組んでいきましょう。
うつ病に関する相談機関・支援機関
うつ病で仕事ができなくなり、誰かに相談したいと考えている場合には、以下のような支援機関を利用することができます。一人で抱え込んで悩んでいる方も多いかもしれませんが、これらの機関には精神疾患に関する知識を持った専門員が在籍しており、本人だけでなく家族や関係者の相談にも対応しています。
相談先 | 詳細 |
---|---|
精神保健福祉センター | – 精神疾患の患者をサポートするための機関 – 都道府県ごとに設置されており、本人やその家族、関係者の相談を受け付けています |
就労移行支援事業所 | – 病気や障害を持つ65歳未満の方で、一般企業への就職を希望する方を支援 – 仕事やメンタルに関する相談、自己管理方法の知識向上支援 – 専門家の診断書が必要な場合があります |
地域障害者職業センター | – 精神疾患や障害を持つ人向けに職業リハビリテーションサービスを提供 – 都道府県ごとに設置されており、職業評価や指導、訓練を無料で実施 |
障害者就業・生活支援センター | – 就労や日常生活で支援が必要な方を対象に、住居や金銭管理などの生活面も含めた相談対応 – 悩み相談だけでなく、職場や家庭訪問なども行います |
これらの支援機関は地域ごとに設置されており、インターネットで「○○(希望の支援機関) □□(お住まいの地域)」と検索すれば、最寄りの相談先を確認できます。
また、借金相談について無料で対応してくれる窓口も存在します。
うつ病の方の借金解決法
借金問題を抱えている方は、うつ病の治療と並行して借金の解決にも取り組む必要があります。ただし、症状が重いときは体が思うように動かなかったり、考えがまとまらなかったりすることもあるでしょう。そのような場合は、家族や親族の協力を得ながら、自分に無理のない範囲で進めていくことが大切です。
身近な友人や家族に相談
まずは信頼できる家族に借金で苦しんでいることについて相談してみてください。ひとりで抱え込んでいる場合でも、誰かに話すだけで気持ちが軽くなり、解決に向けてサポートを受けられる可能性があります。特にうつ状態では、返済が可能な借金額であっても悲観的になり、「もう終わりだ」「死ぬしかない」と考えてしまいがちです。
しかし、家族や親族に相談すれば、必要に応じてお金を借りて返済の助けを得たり、債権者に交渉して返済条件を緩和してもらえることもあります。また、自分では思いつかなかった解決策が見つかる場合もあります。これまで一人で抱えていた重荷を分かち合う気持ちで、思い切って借金の悩みを打ち明けてみましょう。
借金している金融機関に相談
回復の見通しが立ち、復職の可能性が高い場合には、借入先の金融機関に相談し、一時的に返済を待ってもらう方法があります。前述のように、うつ病が理由で借金返済の義務が免除されるわけではありませんが、返済再開の目処を具体的に示せる場合には、返済猶予が認められる可能性があります。
たとえ全額の返済猶予が難しくても、利息のみや最低弁済額だけの支払いに変更してもらえる場合もあります。次回の返済が困難だと感じたら、家族の協力を得ながら借入先に相談することをおすすめします。状況を率直に伝えることで、返済計画の調整が可能になる場合があります。
例えば消費者金融のアコムでは、次のような返済条件の変更に対応してもらえる場合があります。
- 返済金額の減額(最低弁済額や利息のみの支払いが可能な場合あり)
- 返済日の変更
※参考:アコム「ご返済」に関するよくあるご質問:「今月はいつもの返済金額だとちょっと厳しいのですが…」「次回の返済期日に間に合わないかも…」
※借入れや返済状況によっては変更が難しい場合もあります。
ただし、毎月の返済金額を減額すると、返済総額や返済期間が増加する可能性があります。また、利息のみの返済では元金が減らないため、借金がなかなか減らず根本的な解決にはなりません。これらは一時的な対処法として利用しましょう。
〈貸金業者の相談窓口例〉
会社名・連絡窓口 | 電話番号 / 受付時間 |
---|---|
三井住友カード信用管理部 | ・東京:03-6738-7117 ・大阪:06-7733-7424 10時~17時(土日祝・12/30~1/3を除く) |
dカード dカードセンター | ドコモ携帯から:*8010 ドコモ携帯以外の電話から:0120-300-360 10時~20時(年中無休)※オペレーター対応は18時まで |
JCBカード JCB調査デスク | 06-6944-2222 24時間・年中無休 ※オペレーター対応は平日9時~17時 |
ジャックスカード ジャックス・コンタクトセンター | 0570-055877 平日9時45分~18時10分 |
プロミス プロミスコール | 0120-24-0365 24時間 ※オペレーター対応は平日9時~18時 |
アコム 総合カードローンデスク | 0120-629-215 平日9時〜18時 |
※2023年3月20日現在の情報です。最新情報は各社のWebサイトでご確認ください。
相談のポイント
- 返済の意思があることをしっかり伝えましょう。
- 必ずしも希望通りの対応がされるわけではありませんが、誠意を持って相談することで対処法が提案される可能性があります。
弁護士に相談し精神的ストレスを軽減
収入が激減して借金返済が難しい方や、うつ病で仕事ができず収入が途絶えた方は、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。うつ病で返済が滞ると、借入先からの郵便や電話による督促が頻繁に届くようになり、そのプレッシャーが日常生活を圧迫するだけでなく、症状を悪化させる恐れがあります。
弁護士に債務整理などを依頼すれば、債権者からの督促を即座に止めることが可能です。さらに、借金返済を一時的に停止した状態で、生活の立て直しに専念することができるようになります。専門家の力を借りて、少しずつ解決に向けた一歩を踏み出しましょう。
債務整理を検討し借金問題解決
うつ病で休職したばかりで復職の見通しが立たない場合や、症状が重く回復に時間がかかりそうな方には、借金問題を解決する手段として債務整理を検討することをおすすめします。債務整理は、法律に基づいた借金解決方法で、弁護士など専門家のサポートを受けながら、借金の減額や免除を目指す手続きです。
このパートでは、うつ病の状態で債務整理が可能かどうか、また債務整理の種類ごとの特徴や注意点について詳しく解説していきます。
うつ病でも債務整理はできる
うつ病であっても債務整理を行うことは可能です。主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類が債務整理の方法として挙げられます。任意整理では債権者と直接交渉を行い、合意が得られれば借金の減額が可能です。うつ病であることが交渉に影響することはなく、債権者が合意すれば手続きに問題はありません。
また、個人再生は「民事再生法」、自己破産は「破産法」という法律に基づいて進められますが、これらの法律において、うつ病などの精神疾患を理由に手続きを制限する条文は存在しません。
任意整理
任意整理は、債権者と交渉して利息や遅延損害金の免除、返済期間の延長などを求める手続きです。うつ病であっても、債権者が合意すれば借金を減額することが可能ですが、そのためには減額後の返済が確実に行えることを証明する必要があります。
復職して順調に働けている方や、うつ病の回復が進み復職予定が決まっている場合は、債権者に納得してもらいやすいでしょう。また、万一支払いが困難になった場合に備え、貯金を利用できる状況や、親族からの援助が見込めるかどうかも確認されることが一般的です。
一方で、うつ病の影響で収入が長期間途絶えている場合や、多額の借金を抱えている場合は、任意整理ではなく他の債務整理手続きが適している可能性もあります。弁護士に相談しながら、自分の状況に最も適した方法を選ぶようにしましょう。
個人再生
個人再生は裁判所を通じて行う手続きで、借金の総額を1/5~1/10まで減額できる制度です。減額された借金は、任意整理と同様に3年~5年の期間で返済していきます。ただし、この方法でも返済は継続するため、安定した収入があることが前提となります。そのため、うつ病である場合は、裁判所に診断書を提出したり、収入や返済能力が維持できることを証明する必要があります。
さらに、個人再生の手続きは非常に複雑で、通常でも半年から1年ほどの時間を要します。裁判所への出頭や、再生計画案の作成・提出が求められるため、手続きの負担が大きいのが特徴です。弁護士に依頼すれば、これらの手続きを代行してもらえるため安心ですが、うつ病の方が自身だけで進めるのは難しいと言えます。適切な支援を受けながら、計画的に進めていくことが重要です。
自己破産
自己破産は、一定以上の財産を処分する代わりに、借金返済が不可能な状態と認められた場合、すべての借金の返済義務が免除(免責)される手続きです。個人再生と同様に、裁判所へ破産を申し立てる必要がありますが、うつ病が原因であっても問題なく進めることができます。
ただし、裁判所を通じて行う手続きであるため、弁護士に依頼しない場合、自分だけで進めるのはほぼ不可能といえるでしょう。また、うつ病を理由に自己破産を申し立てる際には、事前に医療機関で診断書を取得する必要があります。この診断書には有効期限があり、通常「おおむね3カ月」とされています。裁判所に診断書を提出する際は、有効期限を十分に確認し、手続きに間に合うよう準備を進めましょう。
うつ病の方が債務整理する際の注意点
うつ病になった方が債務整理を検討する場合、以下のようなことに気を付けましょう。
うつ病の治療を第一に優先
借金問題を解決することも大切ですが、まずは何よりも、うつ病の治療を最優先に考えましょう。うつ病は早期の発見と治療を行えば、多くの人が回復できる病気です。「借金をどうにかしなければ」と自分を追い詰めてしまうかもしれませんが、無理をすると症状がさらに悪化してしまう恐れがあります。
うつ病の場合には、後ほど詳しくご紹介しますが、公的支援制度や年金制度など、利用できるさまざまなサポートがあります。これらの支援を活用しながら生活を維持することが可能です。過度に自分を責めることなく、まずは治療に専念することが、回復への第一歩となります。
生活保護を受けている場合は自己破産をおすすめ
うつ病で働けず、すでに生活保護を受けている方には、自己破産が最適な手続きと言えます。生活保護を受けながらでも自己破産の申し立てが可能で、自己破産が認められた後も引き続き生活保護を利用できる可能性が高いからです。
さらに、生活保護を受給している場合、弁護士費用や裁判所費用が免除されるか、法テラス(日本司法支援センター)の「民事法律扶助」制度を利用して立て替えを受けることができます。この制度では、援助終結まで立替金の返済が猶予されるほか、状況に応じて返済そのものが免除されるケースもあります。詳細については、法テラスの公式ホームページを確認してみてください。
弁護士にうつ病であることを伝えておく
債務整理を弁護士に依頼する際は、最初にうつ病であることを弁護士に伝えてください。裁判所に個人再生や自己破産を申し立てる場合、借金の原因や申し立ての理由を詳細に記載する必要があるためです。
また、自己破産の手続き中には、申立人本人が裁判所に出向き、裁判官と面接を行う「免責審尋(めんせきしんじん)」という手続きがあります。ただし、弁護士が「うつ病のため裁判所に出頭できない」と裁判所に説明した場合、免責審尋が免除されるケースもあります。
いずれの場合も、医師の診断書が必要となるため、診断書を準備し、状況に応じて提出できるようにしておきましょう。
借金の種類次第では、債務整理以外でも解決できる
借金の原因が何かによっては、解決方法として債務整理以外の選択肢を選ぶことができます。以下のような借金である場合は、債務整理をしなくても解決できる可能性も高いと言えます。
奨学金
奨学金の返済が難しくなった場合、日本学生支援機構が提供する救済制度を利用することができます。同機構では、返済が困難な人のために以下のような救済策を設けています。
救済制度と内容
- 減額返還
経済的理由や傷病、災害などで返還が困難になり、収入が一定基準以下の場合に申請可能。
・1回の申請で最長1年間、最大15年間まで延長可能。
・月々の返済額を1/3~1/2に減額できる。 - 返還期限猶予
経済的な事情で返済が困難な場合、収入が条件を満たせば最長10年まで返済を一時的に猶予可能。
・返済総額は変わらないが、督促が停止し信用情報への影響も回避できる。 - 返還免除
奨学金を借りた本人が死亡した場合、または精神・身体の障害によって返還が不可能となった場合に適用。
・精神障害の場合、症状が固定し回復が見込めず、労働能力が喪失または高度に制限されていることが条件。
住宅ローン
住宅ローンを抱えている場合、債務整理を行うとローンを借りている金融機関が抵当権を行使し、住宅を差し押さえて競売にかけることがあります。その結果、住んでいる家を失い、住む場所を確保できなくなる恐れがあります。しかし、そうなる前に実行できる対策がいくつかあります。
取れる対策とその内容
- 任意売却
・金融機関の同意を得て、市場価格に近い金額で住宅を売却。
・引っ越し費用や次の住居の賃貸料を調達してもらえる可能性あり。
・一般的な不動産売却と同じ扱いのため、借金滞納の事実を周囲に知られにくい。
・オーバーローン(借入額>売却価格)でも、残額を分割で返済可能。 - リースバック
・自宅を売却後も家賃を支払うことで引き続き住み続けられる方法。
・短期間で借金を解消でき、引っ越しの手間がかからない利点がある。 - 親族に買い取ってもらう
・親族の現金や親族名義のローンで住宅ローンを返済し、自宅を親族名義に変更。
・名義変更後も家賃を支払う形で同じ家に住み続けることが可能。
・親族間で正式な賃貸借契約を結び、毎月適正な賃料を支払うことでトラブルを防ぐ。
これらの対策を早めに検討することで、住居を失うリスクを軽減できます。状況に応じて最適な方法を選びましょう。
自己破産する場合の借金理由には注意
うつ病が原因で借金を抱え、その借金を自己破産で解決しようとする場合、借金の理由に注意が必要です。たとえ双極性障害でそう状態に陥った際のギャンブルや遊興が原因だったとしても、これらは自己破産における「免責不許可事由」に該当する可能性があるためです。
破産法第252条では、「浪費や賭博、その他の射幸行為」を免責を認めない理由として明記しています。そのため、免責不許可事由が認められると、破産管財人が選任され、借金の理由について詳しく調査が行われます。ただし、多くの場合、裁判所の裁量によって「裁量免責」が適用され、免責が許可される可能性が高いです。
しかしながら、免責不許可事由がある場合、通常よりも手続きに時間がかかり、破産管財人への費用が必要になることもあるため、その点を事前に理解しておくことが重要です。
うつ病の支援・控除制度について
最後に、うつ病の際に利用可能な公的支援や控除についてご紹介します。これらの経済的支援制度を活用することで、金銭面の不安を軽減し、安心して治療に集中することができるでしょう。自身が利用できる制度を確認し、有効に活用して自分や家族の生活を支えましょう。
生活保護
生活保護は、憲法第25条に基づき「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための公的制度です。うつ病で働けず、生活費が確保できない場合には、以下のような経済的支援(扶助)を受けることが可能です。
- 生活扶助
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
また、生活保護には障害者加算があるため、申請時に診断書や障害者手帳を用意すると、より多くの支援を受けられる可能性があります。さらに、支給額は住んでいる地域、世帯人数、子どもの有無、ひとり親家庭かどうかなどによっても異なります。
なお、生活保護を受給するには、収入や資産に関する一定の条件を満たす必要があります。詳しい条件や申請方法については、お住まいの地域の福祉事務所にお問い合わせください。
福祉手帳
うつ病で精神障害者保健福祉手帳を交付されると、所得税や住民税、自動車税といった税金の控除をはじめ、以下のような割引制度が利用可能になります。
- 公共交通機関の運賃
- 携帯電話料金
- 上下水道料金
- 公共施設の入場料
- NHK受信料
さらに、公営住宅への優先入居や「障害者雇用枠」を利用した再就職も可能です。ただし、精神障害者福祉手帳を申請するには、初診から6カ月以上経過していることが条件となります。まだ医療機関を受診していない場合は、できるだけ早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
失業保険
うつ病が原因で会社を退職した場合、その症状によっては「失業保険」を受給できる可能性があります。失業保険とは、働く意思を持つ人が次の仕事を見つけるまでの一定期間、給付金を受け取れる制度です。失業理由や年齢、雇用保険の加入期間によって、受給額や期間が異なります。
失業保険を受け取るためには、以下の条件を満たしている必要があります:
- 積極的に就職しようとする意思がある
- 求職活動を行っているが、就職できない失業状態にある
- 離職日の前2年間で、雇用保険に12カ月以上加入している
うつ病の方が失業保険を受給する際に注意すべき点は、「うつ病が原因で直ちに働けない」と判断されないかどうかです。病気やけが、妊娠・出産などの理由ですぐに就職できない場合、失業保険の受給資格が認められないことがあります。
ただし、失業保険の受給には最大3年間の猶予があります。治療を優先し、医師から「就労可能」と判断された時点でハローワークで手続きを行えば、受給を開始することが可能です。
生活福祉資金貸付制度
「生活福祉資金貸付制度」は、うつ病などで生活が不安定になった際に低金利で融資を受けられる公的な支援制度です。この制度は主に低所得者、高齢者、障がい者の生活を経済的に支えることを目的としています。生活福祉資金貸付制度には以下の5種類があり、うつ病の方の場合は「総合支援資金」を利用できる可能性が高いでしょう。
生活福祉資金の種類と内容
種類 | 内容 |
---|---|
総合支援資金 | 日常生活を維持するための融資 |
福祉資金 | 仕事を営むために必要な経費を補う融資 |
教育支援資金 | 低所得世帯の進学に必要な教育資金の融資 |
不動産担保型生活資金 | 不動産を担保にした生活資金の融資 |
緊急小口資金 | 緊急時に一時的な生活資金が必要な場合の少額融資 |
総合支援資金は、やむを得ない理由で収入が減少した方を対象に、最長12カ月間、毎月15万~20万円を融資してもらえる仕組みです。返済期限は最長10年で、連帯保証人を付けた場合は無利子、付けられない場合でも年1.5~3%の低金利で利用可能です。
労災保険
うつ病の原因が職場や仕事にある場合、「労災保険」の給付を受けられる可能性があります。労災保険は、通勤中や業務中のケガや病気など労働災害が発生した際に、労災と認定されれば長期的な補償を受けられる制度です。
うつ病などの精神障害で労災が認められるためには、過重労働やパワハラなど、強いストレスが原因であると判断される必要があります。申請の際には、まず発病の事実を証明する診断書を準備し、申請書を作成して労働基準監督署長宛てに労災保険給付の申請を行います。通常、会社が対応を行うケースが多いため、まずは担当部署に相談してみるとよいでしょう。
自立支援医療制度
「自立支援医療制度」は、うつ病の治療にかかる医療費の自己負担を、公費により3割から1割に軽減することができる制度です。うつ病は継続的な通院が必要となることが多く、この制度による負担軽減は非常に助かる仕組みです。また、向精神薬など処方された薬代にも適用されます。
この制度では、所得に応じて1カ月あたりの医療費負担の上限額が設定されており、高額な治療が長期間続く場合には、さらに負担が軽減される措置も用意されています。
心身障害者医療費助成制度
「心身障害者医療費助成制度」は、心身に障害を持つ方を対象に、通院や入院時にかかる医療費の一部を助成する制度です。この制度は多くの市区町村で導入されており、利用するには登録申請が必要です。助成の範囲は基本的に保険診療分の1/2で、まず医療機関で全額を支払い、後日、市区町村の窓口で払い戻しの手続きを行います。
対象となるのは以下の障害者手帳を所持している方で、所得制限があります。また、生活保護を受給している方は支給の対象外となります。
- 身体障害者手帳1級・2級・3級
- 愛の手帳1度・2度
- 精神障害者保健福祉手帳1級
助成の内容や条件はお住まいの自治体によって異なるため、詳しくは担当窓口にお問い合わせください。
障害年金
国民年金や厚生年金などの公的年金に加入している方が、病気やけがによって障害を負い、日常生活や仕事に支障をきたしている場合に受給できるのが「障害年金」です。この年金は障害の程度に応じて1級~3級に分かれており、等級に応じて支給額が異なります。
初めてうつ病で医師の診察を受けた時点で国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」を請求することが可能です。また、障害年金に該当するほどの重度の障害ではなく、状態が比較的軽い場合には、一時金として「障害手当金」を受け取ることができます。
ただし、いずれの年金も受給には年金の納付状況などの条件があります。また、すでに傷病手当金を受給している方は併用できず、生活保護を受給している場合は障害年金が満額支給されない点に注意が必要です。
傷病手当金
全国健康保険協会の被保険者であれば、病気やケガにより働けなくなった際に「傷病手当金」を受給できます。傷病手当金は、病気やケガで勤務を休み、連続して3日間欠勤した後の4日目以降の休業日に対して支給される制度です。
支給金額は、支給開始前の12カ月間の標準報酬月額の平均額の約2/3に相当する額で、令和4年1月1日から支給期間が最大1年6カ月に延長されました。ただし、休業中に給与が支給されている場合や、過去に労災保険から休業補償給付を受けた場合は、傷病手当金が支給されない可能性がありますので注意が必要です。
※参考:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
うつ病の方の借金問題でよくある疑問
うつ病の方の借金問題でよくある疑問は以下です。
借金返済を滞納するとどうなる?
うつ病などが原因で借金の返済が滞り、支払いを滞納すると、次のような影響が生じます。
支払期日の翌日から遅延損害金が発生
カードローンやキャッシングで支払いを期日までに行わないと、期日の翌日から入金日までの間、遅延損害金が発生します。
遅延損害金の利率は通常の借入利率よりも高いため、滞納すると総返済額が増えてしまうことに注意が必要です。
遅延損害金についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
あわせて読みたい
[遅延損害金とは?上限利率14.6%の謎と滞納するリスク・免除について解説]
借入先からの督促
支払いが滞ると、電話やメール(SMS)で督促が行われます。また、「督促状」が自宅に郵送される場合もあります。この督促状には、滞納金の返済期日や振込先が記載されています。
信用情報機関に登録され、ブラックリストに載る
滞納が2~3カ月以上続いたり、クレジットカードが強制解約された場合、信用情報機関に事故情報が登録されます。
いわゆる「ブラックリストに載る」状態となり、その後一定期間、新規のクレジットカードやローン契約の審査が通らなくなる可能性があります。この情報は完済後約5年間は消えず、その間の生活に影響を及ぼすことがあります。
裁判所からの支払督促や訴状
滞納が3カ月以上に及ぶと、裁判所から「支払督促」や「訴状」が特別送達(特殊な郵便)で届く場合があります。
支払督促が届いても返済せず、一定期間内に異議申立てを行わないと、財産の差押えなど強制執行が行われる可能性があります。
借金返済が難しい場合は、早めに借入先に相談したり、専門家の力を借りて解決策を探ることが重要です。
うつ病を相談できる窓口は?
うつ病などの精神疾患が疑われる場合、全国にある保健所や保健センター、精神保健福祉センターで無料相談を受けることができます。
※ただし、借金問題の相談はできません。
保健所
居住地域の担当保健師、医師、精神保健福祉士などの専門職が、電話や面談、家庭訪問などを通じて相談に応じます。
詳しい情報は、以下で確認できます:
市区町村の保健センター
地域の保健センターでは、障害福祉サービスに関する相談や、保健師による家庭訪問などの支援を提供しています。
詳細は、居住地域の保健センターや市区町村役場にお問い合わせください。
精神保健福祉センター(こころの健康センター)
各都道府県や政令指定都市に1カ所以上設置されており、心の健康や精神科医療に関する相談を受け付けています。
医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、公認心理師、作業療法士などの専門職が常駐している場合もあります。
必要に応じて、これらの窓口を活用し、適切な支援を受けましょう。
配偶者がうつ病になったら離婚できる?
配偶者がうつ病であることを理由に離婚をするのは、原則として難しいとされています。
離婚を成立させるためには、まず当事者同士で話し合い、離婚について合意する必要があります。この段階で双方が同意すれば、協議離婚が成立します。
しかし、特別な事情がある場合には、裁判で離婚が認められる可能性もあります。たとえば、強度の精神病は法律で定められた離婚事由の一つとされています。
具体的には、配偶者がうつ病にかかった後、数年間治療に協力しながらも回復の見込みが全くない状況などが挙げられます。このような場合、裁判所が離婚を認める可能性は高くなるでしょう。
うつ病が原因で無職になったらどうしたらいい?
無職になった際には、失業保険(雇用保険)を受給できる可能性があります。病気などが原因で職を失った場合は、ハローワークで失業保険の申請手続きを行いましょう。
失業保険を受け取るための条件は以下の通りです。
- 原則として、離職の日以前2年間に12カ月以上の被保険者期間があること。
- 倒産・解雇などによる離職、期間の定めがある労働契約が更新されなかった場合、その他やむを得ない理由による離職の場合は、離職の日以前1年間に6カ月以上の被保険者期間があること。
さらに、基本手当日額には年齢ごとに上限額が設定されています。
基本手当日額の上限額
離職時の年齢 | 基本手当日額の上限額 |
---|---|
29歳以下 | 6,835円 |
30~44歳 | 7,595円 |
45~59歳 | 8,355円 |
60~64歳 | 7,177円 |
※参照元:厚生労働省ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
※2023年3月25日時点の情報です。最新の情報は公式Webサイトでご確認ください。
また、無職でも可能な債務整理の手続きとして「自己破産」があります。
無職で債務整理を進める方法については、以下の記事をご参考ください。
生活保護を受給している場合、自己破産できる?
生活保護を受給している場合でも、自己破産の手続きは可能です。
ただし、生活保護受給中に自己破産を行う際には、以下の点に注意が必要です。
- 生活保護費を借金返済に充てることはできない
- 生活保護受給中に新たに借金をすることはできない
自己破産にはメリットだけでなくデメリットも伴います。実際に手続きを行う際は、その内容をしっかりと理解しておくことが重要です。
自己破産に関してさらに詳しく知りたい方や、手続きを検討している方は、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
うつ病と借金問題は密接に関連しています。うつ病で働けなくなり、生活費を補うために高金利の借金に手を出してしまうこともあれば、双極性障害の影響で浪費やギャンブルにより借金が増えるケースもあります。どちらの場合も、うつ病と借金問題の双方に適切な対応が求められます。
うつ病を改善するには、精神科医など専門家による治療が不可欠です。また、できるだけ休職し、心身を休ませることが大切です。借金問題に関しては、家族や周囲の協力、弁護士などの専門家の支援を受けながら、状況に応じた最適な解決方法を見つけていきましょう。
生活費が厳しい場合は、生活保護などの公的支援制度の利用を検討してください。また、回復が進んで働けるようになった場合には、地域障害者支援センターで求職支援を受けることもできます。うつ病は早期の治療で回復が期待できる病気です。まずは治療を最優先し、無理をせず少しずつ前進していくことが重要です。