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本項では個人再生手続きを利用するにあたっての条件面について見ていきます。
個人再生の条件は手続きの種類によって変わる
目次
他の債務整理法と比べると、個人再生はより複雑で分かりにくいという意見をよく聞きますが、それは同じ個人再生でも二種類の手続きが存在することが理由の一つです。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という二種類があり、どちらを利用するかによって条件も変わってきます。
名前のせいもあり、勤め人の方は「俺は給与所得者等再生って方になるんだな」と早合点してしまう人が多いですが、そのような決まりはありません。
ケースに応じて自分に都合の良い方を選べば良いのですが、どちらを選ぶかで個人再生が成功するか失敗するか、また返済額の負担にも影響してきます。
それぞれの利用条件を確認することで選択のポイントが見えてくるので、次の項から詳しく見ていきましょう。
個人再生を利用するための条件
それでは小規模個人再生と給与所得者等再生の両手続きについて、それぞれの利用条件を確認していきます。
小規模個人再生の利用条件
債務総額が5000万円以下であること
個人再生手続きを利用するには借金の総額が5000万円以下でなければなりません。
ただしこの中に住宅ローンにかかる負債は含まれません。
継続的な収入が見込まれること
再生計画に従って継続的に返済を続けなければならないことから、返済を続ける間(概ね3年)、継続、反復した収入が見込まれる必要があります。
会社勤めの方などは比較的問題ないことが多いですが、以下の方々はそれぞれの現状を考慮されます。
個人事業主
毎月の収入があればより好印象ですが、もし毎月の定期的収入が無い場合でも、およそ三か月に一回程度の割合で再生計画に沿って返済できるようであれば問題ありません。
年金受給者
老齢年金の受給者の場合は安定した継続収入とみられるので問題ありません。
しかし受給が今後将来にわたって確約されない障害年金の場合、個別に状況を確認しなければなりません。
障害の種類や程度などから、相当長期にわたって年金受給が確約されるようなケースでは、反復した継続収入とみることが可能です。
アルバイトなど
アルバイトなどの雇用形態であっても、かなりの長期間雇用が継続していて、今後も雇用が続く見込みの場合には、認められることもあります。
期間が限定される季節雇用だったり、短期のアルバイトを転々と繰り返すようなケースでは継続収入とみなされないこともあります。
債権者の多くが反対しないこと
小規模個人再生では各債権者に対して、債務者が個人再生を利用する旨の通知がなされ、債権者が希望すれば反対の意思を表明することができます。
以下のように多くの債権者が反対する場合は小規模個人再生を利用できません。
- 反対する議決権者が総議決権者数の半数以上である場合
- 反対する債権者の議決権の価額が、議決権総額の2分の1を超える場合
一般的に反対する債権者は多くないとされていますが、もし反対数が多い場合には給与所得者等再生を利用するか、自己破産を検討しなくてはなりません。
給与所得者等再生
次に給与所得者等再生を利用する場合の条件について見ていきます。
債務総額が5000万円以下であること
これは上の小規模個人再生の条件と同じです。
継続的な収入が見込まれること
こちらも同上となります。
所得の変動の幅が大きくないこと
給与所得者等再生は、収入額の変動が小さく、安定した継続収入がある者の利用を想定しています。
過去二年間の収入額の変動が20%を超えないことが条件となりますが、転職等で収入に変動が生じた場合は問題とならないこともあります。
最低でも可処分所得2年分以上の支払いをすること
個人再生は債務額に応じて最低弁済額が変動する特徴がありますが、給与所得者等再生の場合、2年分の可処分所得の価額と比べて、どちらか大きい方まで最低弁済額が増額されます。
可処分所得とは本人が余暇などに自由に利用できるお金のことです。
収入から税金や社会保険料、最低限の生活費などを控除して可処分所得を計算します。
「可処分所得の2年分」はかなり大きな金額となり、これが最低弁済額に設定されるケースが多くなるため、利用者の負担が大きくなることから、給与所得者等再生よりもまずは小規模個人再生の利用を考えることが多くなります。
清算価値保障の原則
個人再生は債務者の負担を大きく減らせますが、債権者から見ると債権回収ができなくなるという大きな不利益を強要するものです。
個人再生でも圧縮された債務の返済が行われるので多少の債権回収はできますが、もし債務者が自己破産をした方が多くの債権を回収できるのであれば、その方が債権者にとっては得ということになります。
そのため、個人再生を利用するとしても、仮に自己破産をした場合に考えられる配当額までは最低限弁済しなければならないというルールがあり、これを「清算価値保障の原則」といいます。
原則的な最低弁済額は以前の記事でお伝えしましたが、抜粋すると以下のようになります。
※原則的な最低弁済額
負債総額 | 必要な弁済額 |
100万円未満 | 全額弁済が必要(圧縮なしで分割払い) |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 債務額の五分の一 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円以下 | 債務額の十分の一 |
5000万円超 | 利用不可 |
つまり最終的な弁済額を決める基準は以下の3つあるということになります。
- 原則的な最低弁済額(上記の表のとおり)
- 清算価値保障の原則
- 可処分所得の2年分(給与所得者等再生のみ)
小規模個人再生を利用する場合、最低弁済額は①と②のどちらか大きい額の方、給与所得者等再生を利用する場合は①②③のうち最も大きい額の基準が採用されるということです。
弁護士等と相談し、最終的にどれくらいの弁済額を負担することになるのか見極めたうえで、小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらを利用するのが良いか、考えていくことになります。
個人再生に向いている人
では本項でどんな人が個人再生を利用すべきか考えてみます。
マイホームを手放したくない人
個人再生は住宅ローン特則を利用することができますので、ローンが残る自宅を手放さずに債務整理をしたい人にとって大きな利点になります。
住宅ローンの債務自体は圧縮や免除されることはありませんが、その他の圧縮された債務と合わせて弁済できればマイホームを手放さずに済みます。
自己破産では必ず自宅を手放さないといけないので、それまでの生活の拠点を失うことになります。
任意整理では弁済が難しい人や借金を大幅に減額したい人
個人再生は任意整理よりもかなり大きな債務負担を免除してもらうことができます。
任意整理では解決できない金額の借金がある人、大きな債務減額を望む人は個人再生が選択肢になります。
自己破産を避けたいorできない人
自己破産はギャンブルや浪費など自己責任が大きい場合は免責されないこともあります。
また一定期間就ける仕事に制限が出るなどのデメリットもあるので、自己破産のデメリットを避けたい人や自己破産できない人は個人再生を検討することになります。
まとめ
本章では個人再生手続きを利用する場合の条件について見てきました。
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の二種類の手続きがあり、どちらを選ぶかによって条件が変わってきます。
両者を比べると、給与所得者等再生の方が弁済価額が大きくなりがちで不利になる可能性があるので、小規模個人再生を先に検討することが多くなるでしょう。
ただし債権者の反対がネックになることもあるので、個別のケースで弁護士と相談し有利な方を選ぶようにしましょう。