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「慰謝料が払えないことを理由に自己破産はできるの?」
「支払いが免除される慰謝料とされない慰謝料があるってほんと?」
自己破産とは、借金を支払えないことを裁判所に認めてもらい、支払いを帳消しにしてもらう手続きです。これを「免責」と言います。
慰謝料の支払い義務がある人が自己破産をすると、慰謝料の内容によって免責が許可される場合とされない場合があります。
自分が支払っている慰謝料が免責になるのかならないのか自分で判断するのは難しいという方も少なくないと思います。
この記事では、どういった慰謝料だと免責の対象になりやすく、逆に対象になりにくいのか。詳しく解説していきます。
自己破産で免責になるかどうかは慰謝料の内容で決まる
目次
自己破産をすると、金融機関からの借入などの借金が免責になり、支払いの義務はなくなります。
多額の借金だけでなく、未払いの家賃なども免責になります。では、損害賠償といった慰謝料の支払いは免責されるのでしょうか。
慰謝料は内容によっては「非免責債権」にあたるものがあります。
非免責債権とは、自己破産をしても免責にならず、支払い義務が残るものです。代表として税金をあげることができます。
そのほかにも「悪意で加えた不法行為」または「生命または身体を害する不法行為」という2点に該当するかどうかで免責されるかされないかが決まります。
慰謝料のうち、免責になる可能性が高いものと、免責にならない可能性が高いものについて、以下の表にまとめましたので見てみましょう。
免責になる可能性がある慰謝料 | 浮気などの不貞行為の慰謝料 過失の小さい交通事故の慰謝料 |
---|---|
免責にならない可能性がある慰謝料 | 過失の大きい交通事故の慰謝料 暴行罪など刑事事件による慰謝料 |
判断が難しいもの | 傷害事件や名誉毀損の慰謝料 |
浮気や不倫などで発生した慰謝料は自己破産でなくすことができる
夫側が不倫をしてしまった場合、妻に対して慰謝料を支払わなければなりません。不倫の慰謝料は、自己破産をすることで支払い義務が免除になることが多いです。
また、結婚してなくても、不貞行為による婚約破棄で慰謝料が発生した場合も同様に支払い義務がなくなる場合が多いです。
浮気や不倫のみである場合は「悪意を加えた不法行為」とは判断されません。
しかし、相手に対して傷つける悪意があって不法行為が行われた場合は免責されない場合もあります。
交通事故による慰謝料は過失の重さで決まる
交通事故で相手にケガをさせてしまった場合の慰謝料は、事故の過失の大きさで免責されるかどうかが判断されます。
交通事故の慰謝料で、非免責債権になるかならないかを判断する基準は、大きく分けると以下の3つがあります。
- 悪意で害を加えたものかどうか
- 故意または重過失により人の生命を害したものかどうか
- 故意または重過失により身体を害したものかどうか
しかし、交通事故によって発生する慰謝料の免責は判断が難しい部分があります。
たとえば、脇見運転によって相手にケガをさせてしまった場合、悪意で事故を起こしたわけではないので、自己破産で免責になる可能性はあります。
しかし、ケガの程度によっては重過失として扱われ、非免責債権になる場合もあります。
重過失と判断されるかどうかは、専門的な法律の知識が必要です。自分で判断することはとても難しいので、弁護士や司法書士に相談した方がよいでしょう。
傷害事件や名誉毀損による慰謝料の判断は難しい
相手を傷つけてしまった傷害事件も、交通事故と同様に事例によって判断が難しい部分があります。
ただし、刑事事件になってしまうような傷害事件は悪意で加えた不法行為として、免責が許可される可能性は低いと考えられます。
名誉毀損による慰謝料については、場合によって免責される場合とされない場合があります。
たとえば、SNSなどの誹謗中傷の書き込みなどにより、名誉毀損の慰謝料を請求された場合は、自己破産により免責になる可能性があります。
しかし、免責にしたことを借入先の金融機関から「これは悪意があるので非免責債権だ」と訴えられ裁判が複雑になってしまうこともあります。
そのため自分で判断せず、弁護士や認定司法書士に相談した方がよいでしょう。
また、弁護士に依頼することで、借入先の金融機関から訴えを起こされた場合にも、代理人となってくれます。
養育費などは自己破産をしても免責にはならない
慰謝料と混同されやすいものに、養育費や婚姻費用があります。養育費や未払いの婚姻費用は、自己破産しても支払いが免除されません。
養育費の取り決めをしていた場合、自己破産をして勝手に支払いをやめると相手から財産の差押えをされてしまうこともあります。
ただし、離婚時の財産分与や離婚に伴う解決金などは自己破産時に免責となる可能性があります。
自分の支払い義務については、内訳が書いてある書面があるものは、申立書類とともに裁判所に提出して確認しましょう。
免責可能な慰謝料が免責されなくなる場合もある
免責になった慰謝料は、破産手続の完了と同時に支払いをする必要はなくなります。
しかし、破産手続で免責不許可事由と判断されると、自己破産が認められなくなってしまいます。免責不許可事由とは、裁判所が免責を許可しない理由のことです。
具体的には、破産者に、免責を認めるのにふさわしくない違反行為や不誠実な行動があったと判断されたとき、免責不許可事由となります。
代表的な免責不許可事由を二つあげましたので、確認してみましょう。
借金をした理由や財産隠しを行った場合
自己破産をする理由が、ギャンブルや浪費によるものだと、免責不許可事由として、自己破産が認められない可能性があります。
ただし、裁判所の裁量により免責許可をする、裁量免責が認められます。破産事件で免責不許可になることは少なく、ほとんどで免責許可が下りています。
一方で、免責不許可事由に該当する内容が悪質な場合、免責許可が下りないこともあります。
たとえば、自己破産をしたとしても財産を残すために、財産を申請せず自己破産をしようとする財産隠し。
財産隠しは自己破産では特に悪質な行為と見なされます。最悪、罪に問われてしまうこともあります。
債権者一覧表に慰謝料の支払いを記載しなかった場合
また、借金や慰謝料の支払いを正直に申告しなかった場合も、自己破産が認められなくなります。
自己破産の申立書類の中には「債権者一覧表」という、誰にいくら支払う義務があるのかをまとめた書類を提出します。
ここに、記載しなかった借金は、免責が認められなくなる可能性があります。
記載漏れの理由が、ついうっかり忘れていた、と裁判所が認めた場合は、免責が認められる場合もあります。
しかし、以下の2つの条件がそろうと、自己破産が認められても該当する支払いについては免除が認められない「非免責債権」となります。
- 債務者の不注意のせいで債権者一覧表に借金が記載されなかった
- その借金の債権者が、債務者が自己破産したと知らなかった
しっかりと債権者一覧表に記載さえすれば支払いは免除されます。
しかし、慰謝料を支払う相手に自己破産をしたことを知られたくない、などの理由により、わざと記入しなかったことが発覚した場合は、支払いが免除されなくなる可能性が高くなるので、注意しましょう。
まとめ
自己破産をすることで、原則慰謝料は免責となり支払いは発生しません。
しかし、「非免責債権」と判断され、支払い義務が残るものとしては、以下が挙げられます。
- 過失の大きい交通事故の慰謝料
- 悪意を持って加えられた傷害事件の慰謝料
- 誹謗中傷の名誉毀損に関する慰謝料
- 慰謝料とは異なる養育費などの費用
自己破産をしても慰謝料が免責となるかどうかは、慰謝料の種類や場合に応じた専門家の判断が必要です。
弁護士や司法書士事務所によっては、借金の相談は無料としている事務所も多くあります。
費用や敷居の高さを気にして自分だけで悩んで抱え込むよりも、弁護士に相談して慰謝料の問題を解決へ進めることを検討してみてはいかがでしょうか。