※この記事は、広告を含む場合があります。
任意整理に応じない業者はいる!業者一覧・断られた場合の対処法
目次
任意整理の対応は業者の判断に委ねられており、一部の業者は応じないことがあります。さらに、任意整理に対応する業者でも、状況によっては応じない場合もあります。このような場合、弁護士や司法書士への相談が有効です。
任意整理は、債権者との交渉を通じて借金を減額する債務整理の手段であり、裁判所を介さず進められるため、他の債務整理手続きよりも負担が軽いというメリットがあります。しかし、借金減額の幅は債権者との交渉結果に左右されるため、応じない業者があることに注意が必要です。
この記事では、任意整理に応じない会社の例を紹介し、もし債権者に応じてもらえなかった場合の適切な対処法を解説します。
任意整理に応じない業者の理由
任意整理に応じるかどうか、またその条件については業者ごとに方針が異なります。特に、任意整理に応じないことで知られている業者は以下の通りです。
- アペンタクル株式会社(旧ワイド)
- 株式会社日本保証(旧武富士)
- 株式会社クレディア(旧スタッフィ)
- フクホー株式会社
アペンタクル株式会社、株式会社日本保証、株式会社クレディアは貸金業登録を廃止し、新規貸付を停止し、債権回収のみを行っています。このような業者は「みなし貸金業者」として、基本的に任意整理には応じません。フクホー株式会社は、他の大手消費者金融よりも比較的緩やかな条件で融資を行っていますが、任意整理の依頼をすると、訴訟や支払い督促など、法的手続きに進む傾向があります。
このリストに挙げた業者以外にも、任意整理に応じない業者が存在します。自身が利用している業者が任意整理に応じるか確認したい場合は、債務整理の実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
任意整理とは何か
任意整理とは、裁判所を通さずに債権者と直接交渉を行い、将来の利息を減額してもらい、残りの借金の返済期間や月々の返済額を変更する手続きです。通常、元金については3年から5年の分割返済を提案されることが一般的です。交渉を経て双方が合意し、和解が成立することで、初めて借金の減額が実現します。裁判所の強制的な手続きではなく、あくまで合意に基づくため「任意」という言葉が使われています。
業者には任意整理に応じる義務がない
任意整理は、あくまで話し合いを通じて行う手続きであり、業者には話し合いに応じる義務は法的に存在しません。一方、個人再生や自己破産は法律に基づいた手続きであり、法律の要件を満たせば、業者の意向に関係なく、借金の減額または免除が強制的に行われます。しかし、任意整理の場合、業者が交渉に応じるかどうかはその業者の「任意」に任されており、債務者側が和解を強制することはできません。これが、任意整理に応じない業者が存在する理由です。
業者がどこまで交渉に応じるかは、その意向に左右される
業者が任意整理の交渉に応じる場合でも、その対応の範囲は業者の「任意」によります。以前は多くの業者が遅延損害金のカットに応じていましたが、現在ではほとんどの業者が将来利息のカットにのみ応じるようになっています。返済期間に関しても、5年(60回払い)を提供する業者もあれば、3年(36回払い)までしか認めない業者も存在します。このように、和解内容は業者の意向に左右されるため、任意整理によって得られる結果は一律ではありません。
任意整理に全く応じない業者は非常に少ない
任意整理に一切応じない業者は会社の方針として存在しますが、その数は非常に少数です。もし任意整理に応じなければ、債務者が個人再生や自己破産を選ぶ可能性が高くなります。業者は個人再生の場合、回収できる金額がわずかであり、自己破産では一切回収できません。その点、任意整理であれば少なくとも元金を回収できる可能性があるため、ほとんどの業者は交渉に応じるのです。任意整理に全く応じない業者の多くは、新規の貸し付けを停止し、債権回収に専念している業者であり、債務者が滞納をすると早い段階で裁判を起こして債権回収を試みる傾向があります。
会社の方針により、任意整理に応じない業者も存在する
任意整理に応じない貸金業者の一覧は以下の通りです。
- 日本保証(旧:日栄、ロプロ)
- 住所:東京都港区虎ノ門一丁目7番12号虎ノ門ファーストガーデン12F
- 支店:東京・大阪
- アペンタクル(旧:ワイド)
- 住所:栃木県宇都宮市下戸祭2丁目3番25号
- クレディア(フロックスと合併)
- 住所:静岡県静岡市駿河区南町10番5号
- 支店:静岡・東京・大阪
- AZ(ケンファイナンスと合併)
- 住所:京都市下京区大宮通綾小路下ル綾大宮町50番地アヤノビル
- CFJ
- 住所:東京都新宿区新宿六丁目27番30号新宿イーストサイドスクエア8階
- キャネット
- 住所:札幌市中央区大通西5丁目8番地昭和ビル5F
- 支店:札幌・札幌駅前・旭川・函館・五稜郭・帯広・苫小牧
- キャネット
- 住所:京都市下京区黒門通四条下ル下り松町158タワード四条1F
- ギルド
- 住所:大阪府大阪市淀川区西中島5-7-11
- しんわ
- 住所:福岡市博多区中呉服町6番10号グランスクエア呉服町5階
- スペース
- 住所:大阪府堺市堺区中瓦町2-1-15エスト瓦町ビル3F
- 富士クレジット
- 住所:大阪市淀川区西中島3-20-9
- ライオンズリース
- 住所:愛知県名古屋市中村区名駅5丁目23-3
- フクホー
- 住所:大阪市浪速区難波中三丁目9番5号福宝ビル
- プラン
- 住所:大阪市浪速区難波中二丁目九番二号リバーライズ難波ビル四階
- 支店:難波・梅田
- アスト
- 住所:愛媛県松山市湊町5丁目5番地7双和第3市駅前ビル5階
- 支店:香川・高知・岡山・福岡・熊本・宮崎・鹿児島・沖縄
- ビアイジ
- 住所:京都市右京区西院東淳和院町18番地万成ビル4F
- 支店:札幌・旭川・帯広・弘前・八戸・秋田・広島・福岡
また、街金業者については、ほとんどの業者が任意整理に応じないと考えておいた方が良いです。交渉が難航し、和解が成立せず訴訟に発展することが多く、そのため弁護士や司法書士も受任しないケースが頻繁にあります。したがって、街金業者以外の借金に関して任意整理を進める方が良いとされています。
貸金業者の一例
フクホー株式会社
- 本社:大阪市浪速区難波中三丁目9番5号福宝ビル
- 緑色のフクロウをイメージキャラクターに持つ、大阪に本社を構える消費者金融。
- 創業55年以上の老舗企業で、現在もキャッシングやローンサービスを提供中。
- 司法書士や弁護士が受任通知を送ると、自宅や家族の勤務先に連絡が行く場合がある。
株式会社しんわ
- 本社:福岡市博多区中呉服町6番10号グランスクエア呉服町5階
有限会社プラン
- 本社:大阪市浪速区難波中二丁目九番二号リバーライズ難波ビル4階
ライオンズリース株式会社
- 本社:愛知県名古屋市中村区名駅5丁目23-3
株式会社スペース
- 本社:大阪府堺市堺区中瓦町2-1-15エスト瓦町ビル3F
AZ株式会社
- 本社:京都市下京区大宮通綾小路下ル綾大宮町50番地アヤノビル
株式会社アイシンクレジット
- 本社:青森県弘前市大字末広5丁目7番1号
株式会社MEDSCLN(メッズクラン)
- 本社:北海道札幌市中央区南一条西6丁目札幌北辰ビル
街金の特徴と注意点
任意整理に応じない業者があることに注意が必要です。特に、地域密着型や中小規模の貸金業者(「街金」と呼ばれることが多い)は、大手に比べて審査が緩く、いわゆる「ブラックOK」の業者も多いですが、任意整理には応じない場合が多いです。
また、時折、任意整理に応じない業者から訴状が送られてくることもあります。訴状が自宅に届くことで、借金やその手続きについて家族に知られてしまうリスクが生じます。
そのため、このような業者との手続きを避ける(手続き相手から除外する)という選択肢もあります。
みなし貸金業者の一例
司法書士・辻本
以下の業者は「みなし貸金業者」と呼ばれ、貸金業登録を廃止し、過去の債権回収業務を行っているため、任意整理には応じてくれません。
- アペンタクル株式会社
- 本社:栃木県宇都宮市下戸祭2丁目3番25号
- 元々は「ワイド」という消費者金融。
- 一括払いのみを求められ、分割払いは不可。
- 株式会社ギルド
- 本社:大阪府大阪市淀川区西中島5-7-11
- 「ハッピークレジット」「信和(スマイル)」「山陽信販」の3社が合併して設立された消費者金融。
- 以前は「トライト」「ヴァラモス」という名称も使用。
- 株式会社クレディア
- 本社:静岡県静岡市駿河区南町10番5号
- 静岡県に本社があり、過去には上場していたが、2007年に民事再生法を申請。
- 「ステーションファイナンス(スタッフィ)」「トライト」など、多くの金融事業を継承した。
- 株式会社日本保証
- 本社:東京都渋谷区恵比寿4-20-3恵比寿ガーデンプレイスタワー7階
- 元々は商工ローン会社「日栄(ロプロ)」として知られ、会社更生法を申請し、様々な吸収合併を経て、2012年に「武富士」の消費者金融事業を引き継ぎました。
- 現在、個人向けの無担保ローンサービスは行っていません。
不可と記載されている場合があるが、場合により任意整理が可能
- CFJ合同会社
- 本社:東京都新宿区新宿6-27-30 新宿イーストサイドスクエア
- ビアイジ株式会社
- 本社:京都市右京区西院東淳和院町18番地 万成ビル4F
- 株式会社キャネット
- 本社:札幌市中央区大通西5丁目8番地 昭和ビル5F
- 株式会社アスト
- 本社:愛媛県松山市湊町5丁目5番地7 双和第3市駅前ビル5階
- 富士クレジット株式会社
- 本社:大阪市淀川区西中島3-20-9
任意整理に応じる業者でも、状況によっては応じないことがある
任意整理に応じる業者でも、交渉に応じるかどうかはあくまで「任意」であり、状況によっては交渉に応じない場合もあります。
担保を差し出している
任意整理に応じる業者でも、交渉に応じるかどうかは「任意」であり、状況によっては応じない場合もあります。借金に担保がついている場合、業者は基本的に任意整理に応じません。これは、担保を設定して返済不能に備えているからです。担保権を実行すれば債権の回収が可能なので、このような状況では業者が交渉に応じることは少ないです。代表的な担保には住宅ローンや自動車ローンがあります。住宅ローンの滞納が続くと、抵当権が行使されて住宅が競売や任意売却にかけられます。また、自動車ローンでは、ローン会社が所有権を保有しており、滞納が続くと車両が引き揚げられ売却されることになります。
すでに差し押さえられている
借金の返済が滞ると、業者が裁判を起こすことがありますが、すでに判決が確定し、差し押さえを受けた後は、業者が任意整理に応じることはほとんどありません。なぜなら、業者は裁判や差し押さえなど、強制的な手続きを行うため、その段階では交渉に応じる理由がなくなるからです。ただし、判決が下る前であれば多くの業者は裁判での和解による分割払いに応じますし、判決後でも業者が差し押さえを申し立てる前であれば、まだ交渉の余地があります。
和解案で提案された返済期間が長期間過ぎる
業者が交渉にどこまで応じるかは「任意」であり、債務者が提案する和解内容によっては、業者が和解に応じないこともあります。たとえば、債務者が「10年の分割払いであれば返済可能」と提案しても、ほとんどの業者はこのような提案には応じません。返済期間が長すぎると、業者は毎月回収できる金額が少なくなる上、途中で返済が滞るリスクも高くなるためです。一般的には、任意整理において業者が和解に応じる返済期間は5年までとなっています。
ほとんどの貸金業者が任意整理に対応する理由
任意整理は、お客さまからの依頼を受けた司法書士や弁護士が貸金業者と直接交渉を行い、返済の負担を軽減する手続きです。交渉後に和解が成立すると、以下のようなメリットを得られます。
- 手続き後の利息(将来利息)のカット
- 毎月の返済額を無理なく調整し、借金を3〜5年で分割返済できるようにする
※過払い金が発生している場合は、元本の減額も可能
しかし、任意整理は裁判所を通さずに貸金業者との交渉によって結果が決まるため、相手が話し合いに応じなければ和解ができない場合もあります。
基本的には、ほとんどの貸金業者が任意整理に応じます。なぜなら、自己破産や個人再生を選ばれるよりも、利息を除いた元本だけでも回収できる方が、業者にとっては有利だからです。
個人再生では、借金の元本が5分の1に減額され、自己破産では財産がないと1円も返済されなくなるため、業者は借金の全額回収を望むことが多いのです。
ただし、みなし貸金業者のように債権回収のみを行っている業者は、任意整理に応じないことがあります。
任意整理に応じない他の状況
これまで、貸金業者が任意整理に応じない主なケースについて説明しましたが、その他にも実際の事例がいくつかあります。
・借入後、一度も返済していない場合
(原因)詐欺的要素が強く、貸金業者が任意整理に応じないことがあります。
・過去に複数回任意整理で分割和解を行ったが、その度に返済が滞っている場合
(原因)貸金業者が債務者を信用できないと判断し、任意整理に応じないことがあります。
・法律事務所に依頼し、辞任や解任を繰り返している場合
(原因)貸金業者が債務者の任意整理への意思が薄いと判断し、応じないことがあります。
・債務者が高齢で長期分割和解を希望する場合
(原因)履行可能性が低いとみなされ、任意整理に応じないことがあります。
・任意整理の分割和解において、債務者が勤務先などの最新情報を提供するよう求められたが、その開示を拒否した場合
(原因)将来的な強制執行を考慮して最新情報の提供を求められることがあり、債務者がその開示を拒むと、任意整理に応じないことがあります。
以前に任意整理を行い、かなりの減額を受けている
過去に任意整理を行い、和解案に従って返済が難しくなった場合、2回目の任意整理を試みることは可能ですが、債権者側から拒否されることもあります。
任意整理の和解案には、期日通りに返済できない場合に一括で残高を支払う旨が記載されているため、返済が滞った場合には一括払いを求められることがあります。
また、任意整理での減額は基本的に利息部分に限られており、初回の任意整理で利息を大きくカットしていると、2回目の交渉ではこれ以上の減額が難しくなるため、断られる場合があります。
債務者が高齢、または無職である
任意整理で和解を行った後は、減額された残金を毎月分割して返済していくことになります。つまり、任意整理は返済の見込みがあることを前提とした手続きです。
無職で収入が得られない見込みがある方や高齢者の場合、「任意整理をしても返済が続かない」と判断され、任意整理に応じてもらえないことがあります。また、応じてもらえても短期間で返済を求められるなど、厳しい条件を提示されることもあります。
任意整理を行う業者の種類と傾向
交渉相手によっては、条件が緩やかなところもあれば、厳しいところもあります。最近では、任意整理の手続き中に発生する経過利息や遅延損害金をカットすることに応じない業者がほとんどです。
カード会社、消費者金融、信販会社
3~5年の分割返済や将来利息のカットができるケースが一般的です。しかし、利用状況や業者によっては、年5%程度の将来利息が付与されることや、3年以内の返済を求められる可能性があります。
銀行
銀行カードローンには消費者金融などの保証会社が付いており、返済が滞ると保証会社が銀行に代わって弁済を行います。その後、交渉は銀行ではなく保証会社との間で行うことになります。
多くの場合、3~5年の分割返済や将来利息のカットが可能です。過去には7年程度の分割払いで合意した事例もありますが、最近では5年以上の分割払いは難しくなっています。
債権回収会社(サービサー)
銀行や消費者金融への返済が滞ると、貸金業者が債権回収会社に債務を譲渡したり、回収業務を委託することがあります。
債権回収会社は、通常の銀行や消費者金融と比べて、和解条件が厳しく設定されています。
例えば、一括返済を求められることが多く、分割返済の回数が少なくなる場合や、頭金を支払う必要が出てくることもあります。さらに、将来利息がカットされないことも考えられます。
債権回収業者の例には、以下のような企業があります:
・SMBC債権回収株式会社
・アビリオ債権回収株式会社
・アウロラ債権回収株式会社
・アルファ債権回収株式会社
・エー・シー・エス債権管理回収株式会社
・エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
・オリンポス債権回収株式会社
・ニッテレ債権回収株式会社
・パルティール債権回収株式会社
・株式会社エムアールアイ債権回収
・株式会社セディナ債権回収
【参考】債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧|法務省
また、任意整理の相手が貸金業者でない個人や企業の場合、交渉に応じてくれないこともあります。
任意整理には応じるが、和解条件が厳しくなるケースとは?
業者が任意整理に応じる場合でも、一般的なケースよりも厳しい条件を提示するため、和解が難しくなることがあります。
取引の期間が短い
借入からそれほど期間が経過していないうちに任意整理を申し出ると、業者から提示される和解条件が厳しくなることが多いです。なぜなら、返済の見込みが薄いと判断され、さらに返済が困難だと理解しながら借りたのではないかと疑われるからです。そのため、業者はできるだけ早期に債権回収を試みます。
具体的には、和解に応じたとしても、短期間(例えば3年以内)の完済を求められたり、将来利息を一部求められることが一般的です。特に、取引期間が1年未満の場合は、和解条件が厳しくなりやすく、取引開始から数ヶ月のケースでは交渉に応じないこともあります。
ほとんど返済が行われていない
借金をした後にほとんど返済していない場合も、取引期間が短い場合と同じ理由で、業者が提示する和解条件が厳しくなることが多いです。特に、1度も返済を行っていない場合は、交渉を拒否されることがよくあります。それに加え、返済する意図がないまま借りたと判断されると、法律上は詐欺罪に問われる可能性があるため、十分な注意が必要です。
任意整理の手続きが長引く場合
貸金業者が交渉に応じる場合でも、早期の和解を求められることがあります。
司法書士や弁護士が介入すると、債務者に直接返済を求めることができなくなりますが、訴訟を通じて請求は可能です。早期に和解案を出せれば問題はありませんが、任意整理の交渉が半年以上長引くと、訴訟を起こされるリスクがあります。また、「3か月以内に和解しなければ訴訟を起こす」といった厳しい条件を提示する業者もあります。
訴訟に発展した場合、和解条件が厳しくなることが多いため、最終的に判決が下る可能性もあります。交渉期間が長引けば、その分経過利息も発生するため、早期に和解した方が有利になることもあります。
任意整理の経験が豊富な弁護士や司法書士に相談することで、業者ごとの特性や対応方法を知っているため、適切に対処してもらえるでしょう。
2回目以降の任意整理の場合について
任意整理には回数制限がなく、返済が厳しくなった場合、2回目や3回目の任意整理を行うことができます。しかし、同じ業者と既に任意整理を行い、最大限の譲歩を受けて和解が成立した場合、2回目の任意整理を拒否されることがあります。仮に応じてもらえた場合でも、一括返済のところを再度分割払いにするのみの和解となることが多いです。
担保を保有している
自宅や車、クレジットカードの分割払いで購入した商品の残金など、貸金業者が担保を持っている場合、任意整理に応じてもらえないことが多いです。
担保となっている自宅を競売にかけたり、車を引き上げて売却することで、貸金業者は未払い分を回収できるためです。
担保が設定されている場合、返済ができないときには担保を処分して返済に充てる契約となっているため、任意整理は受け入れられにくいです。
起訴されて判決が下されている(差し押さえが確定している)
借金を滞納していると、貸金業者から裁判を起こされることがあります。
①返済の遅れが発生すると、借入先から電話や書面で催促を受けます。
②これを無視すると、借入先から「督促状」が届きます。
③さらに無視を続けると、「一括請求書」(内容証明郵便)が届きます。
④その後も無視すると、裁判所から「訴状」や「支払督促」が送付されます。
⑤これを無視すると、裁判所の判決が下され、財産や給与が差し押さえられる(強制執行)可能性があります。
すでに裁判所の判決が下されている場合、財産を差し押さえて清算されるため、任意整理は難しくなります。
しかし、裁判所から判決が出る前、または貸金業者が差し押さえの申し立てを行う前であれば、任意整理に応じてもらえることがあります。
裁判所から「訴状」が送られてきた場合は、速やかに司法書士や弁護士に相談しましょう。
みなし貸金業者や経営状況が厳しい企業、またはその会社の方針
みなし貸金業者は貸金業の営業を終了し、債権回収に特化しているため、任意整理には応じません。また、貸金業者の経営が悪化している場合、和解条件が非常に厳しくなるか、任意整理に応じないこともあります。
さらに、会社の方針として任意整理に対応しない業者も存在します。
個人で対処している
個人で任意整理を進めようとすると、取り立てや催促の連絡が続き、取引履歴を取得するのが難しかったり、交渉がうまくいかないこともあります。
さらに、法律の知識が不足していると、非常に不利な条件で交渉が成立してしまう可能性もあります。
しかし、司法書士や弁護士に依頼すれば、交渉の可能性が高くなります。受任通知を送ることで、本人への直接の連絡(催促や取り立て)が停止し、精神的に落ち着いて返済計画を見直すことができます。
ただし、債務者が高齢だったり、依頼した司法書士や弁護士事務所が繰り返し辞任している場合、交渉に応じてもらえないことがあります。
業者が任意整理に応じない時の対策方法
業者が任意整理に応じない場合でも、以下の方法で借金問題を解決することができます。
消滅時効が成立しているかを確認する
任意整理に全く応じない業者の多くは、新規の貸し付けを停止しており、場合によっては貸金業を廃業しています。こうした業者からの借金は、最後の返済から長期間が経過しているため、消滅時効が成立していることがあります。
貸金業者に対する借金の消滅時効期間は、最後の取引から5年です。もし消滅時効が成立している場合、「時効援用通知書」を内容証明郵便で送付することで、返済を拒否することができます。
任意整理は応じる業者にのみ行う
個人再生や自己破産とは異なり、任意整理は業者ごとに個別で行う手続きです。複数の業者から借りている場合、任意整理に応じない業者を除外し、応じてくれる業者とだけ交渉することができます。すべての業者で任意整理ができなくても、毎月の支払いを軽減することは十分に可能です。
例えば、3社からそれぞれ50万円ずつ借りている場合に、1社が任意整理に応じないものの、他の2社が将来利息のカットや5年(60回)返済に応じたケースを見てみましょう。
会社 | 借入額 | 任意整理前の約定返済額 | 任意整理後の返済額 |
---|---|---|---|
A社 | 50万円 | 19,000円 | 8,300円 |
B社 | 50万円 | 16,000円 | 8,300円 |
C社 | 50万円 | 15,000円 | 15,000円 |
合計 | 150万円 | 50,000円 | 31,600円 |
任意整理をしない場合、返済金額は毎月5万円ですが、2社を任意整理することで、1ヵ月あたりの返済額を約2万円削減できます。このように、全業者で任意整理ができなくても、手続きをすることで無理なく返済計画を設定できる可能性があります。
一定期間返済を続けた後で任意整理を行う
取引期間が短い場合やほとんど返済が進んでいない場合、可能であればしばらく返済を続けることで、標準的な和解条件で任意整理を行える可能性があります。ただし、最低でも半年、できれば1年程度は返済を続ける必要があります。しかし、その間に借金問題がさらに悪化するリスクもあるため、無理に返済を続けることは推奨できません。
自己破産を考慮する
自己破産を利用すると、強制的に借金問題を解決できます。自己破産では、裁判所に申し立てることによって、条件を満たす場合には全ての借金の返済義務が免除されます。ただし、自己破産はその効果が非常に大きいため、デメリットも債務整理の中で最も多い点に注意が必要です。自己破産による主なデメリットは以下の通りです:
- 一定の評価額を超える財産が処分される
- 手続き中に一部の資格や職業に制限がかかる
- ブラックリストに登録される(任意整理・個人再生も同様)
- 保証人に迷惑がかかることがある(個人再生も同様)
- 官報に掲載される(個人再生も同様)
任意整理、個人再生、自己破産はそれぞれ異なる特徴を持つ手続きです。各手続きのメリットとデメリットを比較し、状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
もし任意整理に応じない貸金業者がある場合、その業者を除外して他の債務のみを整理する方法もあります。また、任意整理に応じない業者の負債額が大きく、その業者を除外しても経済的に回復が見込めない場合は、個人再生や自己破産の手続きを検討することが提案されます。
返済プランを見直す
和解の条件を見直して、毎月の返済金額を増やしたり、分割回数を減らすことで、任意整理に応じてもらえる場合もあります。しかし、無理なく返済できる条件でないと、手続きを進める意味がなくなってしまいます。
時効の適用を検討する
借金には時効(消滅時効)が存在します。貸金業者が裁判を起こした場合、裁判が確定してから10年で時効となり、裁判が起こされない場合は最後の支払い日から5年で時効が成立します。この期間が経過した後、時効援用の手続きを行うと、時効が成立します。
ただし、以下のようなデメリットが大きいため、貸金業者からの連絡を無視して時効を待つ方法はお勧めできません。
- 状況によっては詐欺罪に問われる可能性がある
- 財産(預貯金や給与)が差し押さえられるリスクがある
- 保証人や連帯保証人が代わりに請求される
- 遅延損害金が増加し、借金総額が大きくなる
- 取り立てや督促が止まらない(住所変更や苗字変更をしても続く)
- 貸金業者は時効の成立を阻止しようとする(時効が更新されるとカウントがリセットされる)
- 信用情報に事故情報が登録され、カードの更新や新たな借入ができなくなる
- 常に不安を抱えて生活しなければならなくなる
個人再生を考慮する
任意整理で解決が難しい場合、強制的な債務整理の手続きを検討する必要があります。その選択肢の一つが「個人再生」です。個人再生では、裁判所に申し立てを行い、一定の要件を満たす場合、借金総額が最大で5分の1から10分の1に強制的に減額されます。多額の借金を抱えていても、安定した収入があれば個人再生で解決できる可能性が高いです。さらに、個人再生には次のような大きなメリットもあります。
- 基本的に財産を処分する必要がない
- 借金の使途が問われない
- 仕事に対する影響がない
- 「住宅ローン特則」の適用条件を満たす場合、マイホームを残すことも可能
任意整理を弁護士・司法書士に相談・依頼するメリット
任意整理を検討する際には、まず債務整理の専門家である弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。任意整理に応じない業者や厳しい和解条件を提示する業者がいる場合でも、弁護士や司法書士のサポートを受けることで、借金問題を解決しやすくなります。
弁護士や司法書士に任意整理を依頼することで得られる具体的なメリットは以下の通りです:
- 任意整理が可能かどうかの見通しが立つ
- 受任通知を送ることによって、督促や返済が停止する
- 債権者との交渉を弁護士や司法書士が代行してくれる
- 専門家の交渉力により、より有利な和解条件が期待できる
- 任意整理が難しい場合でも、最適な解決策についてアドバイスを受けられる
まとめ
最初から任意整理に応じない業者は少数ですが、状況によっては、任意整理に応じないケースや和解条件が厳しくなる場合もあります。そんなときでも、弁護士や司法書士のサポートを受ければ交渉が可能になることもありますし、それが難しい場合でも、強制的な債務整理の手続きを任せて問題を解決することができます。
任意整理で困った際は、ひとりで悩まず、弁護士や司法書士に相談し、最適な方法で借金問題の解決を目指しましょう。