任意整理後の今月だけ払えない時の対処法と支払い延滞のリスク

任意整理で今月の支払いが難しいときの対処法とリスクについて解説

任意整理後、今月の支払いが難しくなる場合があります。任意整理を行うことで借金は減額されますが、返済は3年から5年続くため、その期間中に急な出費や失業などで「今月だけ払えない」と困ることも考えられます。この記事では、任意整理後に支払いが困難な場合のリスクとその対処法について解説します。

任意整理後に支払いが滞るとどうなる?

任意整理を行うと、その後の利息は発生せず、残った元金を3~5年で返済することになります。分割払いは、金融機関が債務者の経済状況を考慮して契約上認めている方法です。例えば、任意整理により元金150万円の借金を5年間(60ヶ月)の分割で返済することが決まった場合、1か月目に25,000円、2か月目に25,000円と毎月決められた金額を返済すれば問題ありません。これは、債務者に「期限の利益」が認められているからです。決められた期日までに所定の金額を返済すれば、残りの金額に対して再度返済を求められることはありません。しかし、期限内に返済しなかった場合、その時点で「期限の利益」を喪失します。例えば、3か月目に支払うべき25,000円を返済できなかった場合、債務者は「期限の利益」を失い、残りの145万円を一括で請求されることになります。実際には、任意整理で締結した和解書において、返済が2回以上遅れると「期限の利益」を喪失するという規定がある場合が多いです。そのため、1か月の遅延であれば問題にはなりませんが、2か月以上続けて滞納すると「期限の利益」を失い、一括返済が求められることになります。

任意整理後に支払いができない場合のリスク

任意整理で債権者と合意した通りに支払えなくなった場合に、どのようなリスクが生じるのかについて解説します。

今月だけ支払えない場合

何らかの理由で今月だけ支払えない場合でも、来月から確実に支払えるのであれば、通常、すぐに問題が発生することはありません。原則として、任意整理の和解書には「返済を2回以上怠ると期限の利益を喪失する」と記載されています(この場合、借金残額が一括請求されます)。逆に言えば、1回の返済遅延では特に不利益を受けることはありません。債権者から「今月の支払いはいつになるか?」と尋ねられた場合、「来月中に必ず支払います」と答えれば問題ありません。ただし、債権者によっては和解書に「1回でも返済を怠ると期限の利益を失う」と記載されていることもあります。その場合、今月だけ支払えなかった場合でも、期限の利益を失ってしまいます。

その後も支払えない場合

今月分の支払いができず、来月も支払えない場合、返済を「2回以上」怠ったこととなり、期限の利益を喪失します。なお、「返済を2回以上怠る」とは、2回分以上の返済金が延滞されることを指します。つまり、1回分の延滞を放置しておくと、たとえ来月支払える場合でも、その後に1回でも延滞が発生すれば、2回以上の延滞となり、期限の利益を失うことになるので、注意が必要です。

2回以上の支払い遅延が発生した場合

返済を2回以上怠った場合、期限の利益を失い、債権者から残額を一括で請求されます。期限の利益とは、支払い期限までは支払いを延期できるという債務者の権利です。分割払いの和解を結んでいる場合、毎月の支払日までに指定された金額を支払えば、残りの支払いを待ってもらえます。しかし、期限の利益を失うとその権利が無くなり、直ちに残額を一括で支払わなければなりません。通常、一括請求には遅延損害金(消費者金融の場合、14.6%~20%程度)が加算されることを理解しておく必要があります。もし一括支払いができない場合、債権者から裁判を起こされ、最終的には給料や預金口座などの財産が差し押さえられることになります。

任意整理で今月支払いが難しいときの対応方法

任意整理後、返済中にどうしても今月だけ支払いができない場合、どのように対応すべきでしょうか。ここでは、1か月だけ滞納する場合の対処法を2つご紹介します。

支払えなかった前月の支払いは翌月に必ず行う

前述の通り、どうしても支払いができない月があっても、それが1か月だけなら問題にはなりません。ただし、次の点を確認しておくことが重要です。(1)任意整理の和解書に、2か月以上滞納した場合に期限の利益を喪失する旨が記載されていること(2)必ず次月には支払いを再開できること、特に重要なのは(2)です。もし2か月連続で支払いができなければ、残りの金額が一括で請求され、任意整理が続けられなくなります。そのため、翌月には必ず支払えるよう資金を確保しておくことが大切です。

滞納について報告する

1か月のみの滞納であれば、債権者への報告は必ずしも必要ではありません。しかし、たとえ1か月の滞納でも債権者は不安を感じることがあります。数日だけ返済が遅れる場合でも、事前に債権者に報告しておくことをお勧めします。

(1)債権者に連絡する

返済が難しいと分かった時点で、早めに債権者に連絡し、その旨を伝えましょう。延滞が発生すると債権者から連絡が来ますが、こちらから先に連絡することで誠意を示すことができます。

(2)いつまでに支払えるかを伝える

債権者に連絡した際は、支払いができない理由を説明し、いつまでに支払いが可能かを伝えましょう。たとえ1回の延滞であっても、債権者は「この債務者は支払いができなくなったのでは?」と心配します。支払いの期限を明確に伝えることで、債権者も安心するはずです。

(3)早期に延滞を解消することが重要

今月だけ支払いができない場合でも、来月から通常通り返済できるのであれば、延滞した分はできるだけ早く返済することが大切です。

任意整理で今月だけ払えないときの相談先

任意整理後に返済ができない月が発生した場合、最初に相談すべき相手は誰でしょうか。返済方法によって相談先が異なるため、支払先ごとに確認しておくことが重要です。

自身で債権者に返済している場合

任意整理では、毎月債権者の口座に自分で振り込むことが求められる場合があります。このような状況で、どうしても今月だけ支払いが厳しい場合は、必ず債権者に連絡を取りましょう。通常、1か月の滞納では直ちに「期限の利益」を喪失することはありません。黙っていると大きな問題にはなりませんが、支払いができない理由や次回の支払い予定について説明せずにいるのは誠意を欠く行動です。そのため、今月だけ支払いができない場合は、必ず債権者に状況を報告することが重要です。もし直接報告しづらい場合は、任意整理を依頼した弁護士を通して連絡を行う方法もあります。

弁護士経由で返済している場合

任意整理の場合、債務の支払い代行を弁護士に依頼していることが多いです。もし返済が困難な月がある場合は、まず弁護士に相談することが重要です。弁護士が支払いが難しいとの報告を受けた場合、債権者と支払い猶予や条件変更について交渉を行います。また、弁護士が依頼者から預かっている積立金に余裕があれば、その資金を使って支払いを行うこともあります。このように、支払いが難しい場合でも弁護士に相談すれば、その時点で適切な対応をしてくれるはずです。

今月だけ支払えないことをどのように説明するのか

債権者や弁護士に今月の支払いができないと伝えると、必ず「なぜ支払えなくなったのか」と質問されます。もしその理由が翌月以降にも繰り返される可能性がある場合、2か月連続での滞納が懸念されます。そのため、支払いができなかった理由を明確にしておくことが重要です。例えば、任意整理中に冠婚葬祭などで急な支出が発生することもあります。この場合、理由が自分の過失ではなく、やむを得ない事情による一時的な金銭不足だということを説明する必要があります。状況をしっかり伝え、翌月からの返済を予定通り行うことが大切です。

3、任意整理後に払えなくなる原因

任意整理で借金が減額されたにもかかわらず返済ができなくなる場合、必ず何らかの原因があります。その原因によっては、再度債務整理を検討する必要が出てくるかもしれません。借金問題をしっかり解決するためにも、1回でも支払いができなくなった場合には、自分自身の原因をしっかりと把握しておくことが大切です。

(1)突発的な出費や減収、失業など

今月だけ返済できない場合、ほとんどは突発的な出費が原因で返済資金が不足していることが考えられます。例えば、冠婚葬祭、病気、事故、家具や家電の買い替えなど、さまざまな事情が影響しているかもしれません。また、勤務先の業績悪化やリストラによる失業など、収入が減少したり途絶えたりした場合、今後も返済が難しくなる可能性が高いと言えます。

(2)無理な和解をした

任意整理で和解する際、毎月の返済額を高めに設定すると、払えなくなる原因となることがあります。月々3万円なら問題なく支払えても、5万円になると支払いが難しくなるという方は少なくありません。しかし、早期に完済したいという強い意欲から、無理な条件で和解してしまうことがよくあります。再度お伝えしますが、返済期間の3年~5年の間には、誰にでも突発的な出費が発生する可能性があり、減収や失業も考慮する必要があります。そのため、任意整理では無理のない、ある程度の余裕を持った返済計画で和解することが大切です。

(3)借金額が大きすぎる

借金額があまりにも大きく、無理な和解をせざるを得なかった場合もあります。こうしたケースでは、そもそも任意整理が適切な方法ではなかった可能性も考えられます。任意整理の場合、借金総額が100万円なら月々1万7000円~2万8000円程度の返済で済みますが、300万円になると最低でも毎月5万円の返済が必要です。最初から返済が厳しいと感じる場合には、他の債務整理手続きの選択肢を検討する方が賢明でしょう。

任意整理の返済が今後難しいときの対処法

翌月以降も返済ができない場合、債権者から一括返済を求められるため、任意整理を続けることができなくなります。そのため、今後返済が困難な場合は、別の対応策を考える必要があります。任意整理の返済が続けられない場合の対処法について考えましょう。

任意整理(再和解)

一度成立した任意整理は、2回以上の滞納があると無効となり、一括請求がされることになります。そうした場合でも、再度任意整理を行うことで「期限の利益」を再び受けることができ、一括返済を避けることができます。しかし、再和解が可能かどうかは、債権者と債務者の双方の状況に依存するため、必ずしも再度任意整理ができるわけではありません。再和解を進める際は、慎重に交渉を行うことが大切です。

個人再生

再度任意整理が難しい場合、法的整理を選択する必要があります。その中の一つが個人再生です。個人再生は、債務者が裁判所に申し立てを行い、認可決定を受けることで、借金を5分の1から10分の1程度に減額できる制度です。これにより、月々の返済額が大きく軽減され、その後の返済がより楽になるでしょう。

自己破産

自己破産も法的な債務整理の一つであり、裁判所に申立てを行い、その認可を受けることで、ほぼ全額の債務返済が免除されます。自己破産を選択することで、財産は失うことになりますが、債務の返済義務からは解放されることになります。

任意整理についてよくある質問

ここでは、任意整理に関するよくある質問を取り上げていきます。

任意整理で払えない借金を減額するには?

任意整理で借金を減額できない場合は、自己破産や個人再生などの他の手続きを検討する必要があります。自己破産は、裁判所に申し立てることで借金の全額が免除され、これ以上の返済義務がなくなります。個人再生は、裁判所が再生計画を認可することで、借金の額を大幅に減らし、通常3年、最長で5年以内に減額された借金を返済すれば、残りの支払いが免除される制度です。

任意整理の支払いが1か月遅れたらどうなる?

任意整理では、通常、2回以上(2カ月間)の支払い遅延があった場合、一括請求を受けることになります。そのため、今月だけ支払いができないという一時的な経済的困難があった場合でも、期限の利益を失うことなく、一括請求を回避できます。しかし、2カ月以上連続で支払いが遅れると、一括請求の対象となります。支払いが遅れそうな場合は、早めに担当の弁護士や司法書士に相談することが重要です。

任意整理中にやってはいけないことは?

任意整理中に避けるべき行動は、新たな借入や支払いの滞納です。任意整理を受けると、債権者に受任通知が届き、信用情報機関に事故情報が登録されるため、新規の借入が難しくなります。それでも、整理前に借入を試みるのは避けるべきです。さらに、他の金融機関や「闇金」などで借り入れを行うことも同様にリスクがあります。また、任意整理後に返済を滞納すると、金利のカットや一括返済の免除といった権利を失うだけでなく、遅延損害金が加算されることもあります。新規の借入や支払い遅延は、任意整理の交渉を妨げ、さらに厳しい返済条件を招くため、十分な注意が必要です。

まとめ

個人の借金返済が困難になった場合、解決方法は複数あります。任意整理は裁判所を通さず手続きが可能で、債務整理の中では比較的取り組みやすい方法です。しかし、任意整理は他の方法に比べて債務の減額効果が限定的なため、その後の返済が難しくなることもあります。もし任意整理後に返済が滞ってしまった場合、速やかに債権者に相談することが重要です。さらに、返済が続かない場合には、個人再生や自己破産など、他の債務整理方法を検討する必要があります。返済が難しくなりそうな時には、早期に弁護士に相談することをお勧めします。借金問題は深刻で不安が伴いますが、当社では相談者様の立場に寄り添い、丁寧に解決に向けたサポートを行いますので、安心してご相談ください。