※この記事は、広告を含む場合があります。
あける
兄弟が作った借金に支払い義務はあるのか?ケース別の支払い義務の有無と負担軽減の解決方法
目次
「兄弟に多額の借金があると発覚…自分に返済義務はあるのか?」
「兄弟の借金を解決する方法を知りたい」
兄弟姉妹に借金があると分かったとき、「自分も返済しなければならないのか?」どうなるのかと不安に感じる方も多いでしょう。そこで、兄弟にも支払い義務が発生するケースや、借金の種類ごとの解決方法について詳しく解説します。
さらに、兄弟の借金滞納によって生じるリスクや、滞納が発覚した際に取るべき対応についても紹介します。兄弟の借金で悩んでいる方は、参考にして自分に返済義務があるのか、またどのような対処ができるのかを知りましょう。
兄弟が負った借金の支払い義務について
まずは、兄弟が作った借金の支払い義務があるのかを確認していきます。
法的に返済義務はない
契約はあくまで個人に対して結ばれるものです。たとえ親や同居している兄弟であっても、法律上は別の人格として扱われます。そのため、兄弟が多額の借金を抱えていたとしても、原則としてあなたに返済義務が生じることはありません。
保証人や家族・親族以外への取り立ては違法である
借金の取り立て行為は、本人以外の家族に対して行うことは違法です。
国や都道府県に登録されている貸金業者は、「貸金業法」という法律に基づいて貸付を行っています。この法律には取り立て行為に関する規制があり、貸金業者は債務者本人以外(親族や知人など)に対して、借金の肩代わりを要求することが禁止されています。この規制に違反した場合、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。
本人以外への取り立ては拒否できるのが当然ですが、もし貸金業者からの取り立てがあまりにしつこい場合は、「日本貸金業協会」に苦情を申し立てることも可能です。
ただし、兄弟が貸金業の登録がない業者や、法律に違反した高金利を設定する闇金から借りていた場合、本人以外の家族に対して取り立てを行う可能性があるため、注意が必要です。
支払い義務が発生する3つのケース
兄弟の借金には基本的に返済義務はありませんが、次に紹介する3つのケースでは、支払い義務が発生する可能性があります。G
名義を貸した場合
兄弟の借金に支払い義務が生じるケースの1つ目は、あなたが名義を貸してしまった場合です。これは「借金の名義貸し」に該当し、この場合、実際に借金をしたのが兄弟であっても、名義人であるあなたに支払い義務が発生することになります。
たとえ「名義を貸しただけで、自分はお金を手にしていない」と主張しても、申し込みがあなたの名前で行われ、身分証明書もあなたのものが提出されている以上、貸金業者の記録には兄弟の名前は一切残りません。当然ながら、貸金業者は名義人であるあなたに対して返済を求めることになります。
さらに、借金を支払えない場合、その延滞情報が「事故情報」としてあなたの個人信用情報に登録され、今後のクレジットカードやローン審査に影響を与える可能性があります。また、名義を借りた兄弟が詐欺罪に問われた場合、その行為を助けたとして、あなた自身がほう助罪に問われる可能性もあります。
「ただ名前を貸しただけ」と軽く考えていても、重大なトラブルに発展する恐れがあるため、十分な注意が必要です。
兄弟の借金の連帯保証人・保証人になった場合
兄弟の借金の連帯保証人になっている場合、主債務者である兄弟が返済できなくなったとき、連帯保証人であるあなたに支払い義務が発生します。例えば、兄弟が事業用の借入をした場合、賃貸物件を契約した場合、住宅ローンを組んだ場合などが該当します。
「名前を書いてくれるだけでいいから」と頼まれたとしても、連帯保証人として名前が記載されている以上、返済義務を負うことになります。金融機関の借金では、連帯保証人を立てるケースも少なくありません。また、単に「保証人」と呼ばれる場合でも、実際には連帯保証人を指すことが多いため、十分な注意が必要です。
保証人・連帯保証人・連帯債務者の違い
種類 | 特徴・権利 |
---|---|
保証人 | – 催告の抗弁権(債権者に対し、まずは債務者へ請求するよう求める権利) – 検索の抗弁権(債務者に財産があることを証明し、保証人への請求を拒否できる権利) – 分別の利益(保証人が複数いる場合、借金総額を頭数で割った分だけ支払えばよい) |
連帯保証人 | – 上記3つの権利がなく、債務者と同等の責任を負う |
連帯債務者 | – 複数の債務者が独立して借金の支払い義務を負う関係 – 連帯保証が「債務者に従属する関係」であるのに対し、連帯債務者は「全員が同じ債務者」という立場 |
連帯保証人になると、債務者と同じ責任を負うため、慎重に判断することが重要です。
亡くなった兄弟の財産を相続した場合
亡くなった兄弟の財産を相続した場合、借金の支払い義務が発生する可能性があります。相続は原則として、預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれるため注意が必要です。
相続には順位があり、亡くなった兄弟と関係が近い順に相続人が決まります。
亡くなった人との関係と相続順位
関係 | 相続順位 | 該当する法律 |
---|---|---|
配偶者 | 常に相続人となる | 民法第890条 |
子ども | 第1順位 | 民法第887条 |
親(直系尊属) | 第2順位 | 民法第889条 |
兄弟姉妹 | 第3順位 | 民法第889条 |
兄弟姉妹の相続順位は、配偶者・子ども・親の次にあたる第3順位となります。そのため、兄弟の財産を相続するケースは実際には多くありません。しかし、特定の条件下では兄弟が財産を相続することになります。
兄弟が相続するケースと相続割合
親族の状態 | 相続する財産 |
---|---|
兄弟姉妹のみが存命 | 存命の兄弟の人数で分割 |
配偶者と兄弟姉妹が存命 | 配偶者 3/4、兄弟姉妹 1/4 |
兄弟の財産を相続する可能性がある場合、借金も含まれるため、相続放棄などの手続きを検討することが重要です。
支払い義務がある兄弟の借金を解決する方法
兄弟の借金に支払い義務があると分かった場合、ケースごとに適した解決方法が異なります。
名義を貸した場合
兄弟に名義を貸してしまった場合、以下のような解決方法があります。
名義を貸した兄弟に返済を求める
兄弟が近くにいて連絡が取れる場合は、まずは兄弟に支払いを求めて交渉しましょう。借金の返済が滞っているという連絡を受けた時点で、すぐに兄弟に連絡を取り、返済を促すことが重要です。しかし、スムーズに返済できる状況であれば、そもそも名義を借りる必要はなかったはずです。
多くの場合、兄弟がローン契約で名義人になれないのは、審査に通らないなどの理由があると考えられます。すでに名義人に督促状が届いた時点で滞納が発覚した場合、兄弟が返済できる状況ではない可能性が高いでしょう。そのような場合は、別の解決策を検討する必要があります。
弁護士に相談する
次のようなケースでは、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
- 兄弟と連絡は取れるが、交渉がうまく進まない
- 兄弟が返済を滞納し、自分も支払いが難しい
- 兄弟の給与などを差し押さえたい
特に借金を滞納している場合、2カ月以上滞納が続くと、信用情報機関に事故情報が登録されるため、なるべく早めに弁護士に相談することが重要です。
また、兄弟の給与などを差し押さえる場合、相手と連絡が取れない・すでに仕事を辞めている・収入が全くないといった状況では、差し押さえができません。兄弟が失踪してしまったケースでは、住民票の異動履歴をたどることで相手に請求していく方法もあります。
自分で借金を返済する
名義貸しをした兄弟が返済せず、または連絡が取れない場合、最終的には名義人であるあなたが借金を支払うことになります。自分で返済していくことになった場合、できるだけスムーズに完済することが重要です。
借金の金額にもよりますが、返済が長期化するとあなた自身も負担を抱え、精神的にも大きな影響を受ける可能性があります。そのため、無理なく返済できる方法を検討し、できるだけ早く解決を目指しましょう。
亡くなった兄弟の借金がある場合
亡くなった兄弟に借金があり、それをあなたが相続する場合でも、いくつかの方法を選択すれば借金の返済義務を回避できます。
そもそも、相続には次の3種類があることをご存じでしょうか?
相続の種類と範囲
相続の種類 | 相続の範囲 |
---|---|
単純承認 | プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する |
限定承認 | マイナスの財産の範囲内でプラスの財産も相続する |
相続放棄 | 財産を一切相続しない |
このうち、限定承認または相続放棄を選択すれば、兄弟の借金を相続せずに済みます。適切な方法を選ぶためにも、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
限定承認の手続き
限定承認は、残された預貯金や現金の範囲内で借金を返済すればよいという相続方法です。例えば、借金が500万円あり、預貯金が200万円だった場合、200万円分のみを貸金業者に返済すればよいという仕組みになります。
ただし、限定承認を行うには、以下の要件を満たす必要があります。
- 相続人であることを知ってから3カ月以内に手続きを行うこと
- 単純承認をしていないこと
- 相続人全員で手続きを行うこと
- 亡くなった兄弟の住所地の家庭裁判所に限定承認の申述をすること
限定承認の難しさは、相続人全員がこの手続きを行う必要がある点にあります。相続人のうち一人でも単純承認を希望する場合、限定承認は成立しません。
また、相続放棄の利用件数が年間約16万件であるのに対し、限定承認は約1,000件程度と、実際にはほとんど利用されていないのが特徴です。限定承認は手続きのハードルが高いため、選択する際は慎重に検討する必要があります。
相続放棄の手続き
相続放棄とは、財産も借金もすべて相続しないという法的手続きです。プラスの財産よりも明らかにマイナスの財産が多い場合に選択されることが一般的です。また、亡くなった兄弟が保証人になっていた場合など、保証債務の全容が不明なときにも相続放棄が利用されます。
相続放棄の要件
要件 | 内容 |
---|---|
相続遺産を受け取っていない | 借金があると知りながら故人の預金を引き出して使った場合、相続放棄はできない |
3カ月以内に家庭裁判所に申述する | 亡くなったことを知ってから3カ月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述を行う必要がある |
相続放棄は、兄弟が亡くなった後に行う手続きです。しかし、手続きに追われているうちに相続開始から3カ月以上経過してしまうこともあります。
そのような場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」を提出することで、期間の延長が認められる場合があります。相続放棄を検討する際は、手続きの期限に十分注意しましょう。
(連帯)保証人としての責任
兄弟の借金の連帯保証人になっている場合、以下のような解決方法があります。
自分で借金を返済する
連帯保証人は、主債務者と同じ返済義務を負っています。もし主債務者である兄弟が借金を返済できない場合、連帯保証人であるあなたがその返済をしなければなりません。
多くの場合、残債を一括で支払うよう請求されることになります。借りた本人がきちんと返済している間は分割払いが可能ですが、長期間の滞納によって「期限の利益」が喪失すると、一括で支払う必要が生じます。もし一括で支払えるだけの資力がある場合は、返済を自分で行うことを検討しましょう。
返済を拒否する方法
自分の名前を勝手に連帯保証人欄に書かれたり、印鑑を無断で使って契約された場合、債権者に支払義務がないことを記載した内容証明郵便を送付し、裁判でその旨を主張する必要があります。また、一括請求の根拠となる契約の有効性や、一括請求に至る過程での手続き上の問題について債権者と争い、支払いを拒否する方法もあります。
連帯保証契約時に、主債務者である兄弟の財産や収入について十分な情報提供を受けていなかった場合や、根保証契約において連帯保証人の責任限度額が定められていなかった場合も問題となります。さらに、主債務者が債権者に対して有する抗弁権を行使することで契約が不正に締結された場合、契約の有効性を争うためにはこちら側で事実を主張したり立証する必要が出てきます。
このような争いでは、裁判費用などの負担が生じるため、慎重に対応することが求められます。
債務整理による解決方法
兄弟の借金を肩代わりする金銭的余裕がない場合は、兄弟と一緒に債務整理を検討しましょう。兄弟のみが債務整理を行う方法もありますが、その場合、連帯保証人であるあなたに減免された分の支払いが求められます。もし減免分を支払えるなら問題ありませんが、支払えない場合はあなたも債務整理を行う必要が出てきます。
債務整理には、主に任意整理、個人再生、自己破産の3種類があります。それぞれ手続き方法や減免割合、デメリットなどが異なりますので、まずは兄弟と一緒に借金問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
債権者と交渉し、分割払いに変更する方法
一括請求に応じるだけの経済力がない場合でも、分割払いであれば支払いが可能な場合は、債権者と交渉して分割払いに切り替えることができるか相談してみましょう。契約に基づく請求は基本的に一括払いですが、債権者が応じれば、分割払いへの変更が可能となります。
兄弟が借金を滞納した場合の影響
もし自分の兄弟が借金を滞納した場合、兄弟の財産や給料が差し押さえられる可能性があります。ただし、あなた自身の財産や給料が差し押さえられることはありません。
兄弟の財産や給与が差し押さえられる可能性
自分の兄弟が借金を滞納すると、その兄弟の給料や財産が差し押さえられる可能性があります。ただし、家族名義の財産は差し押さえの対象にならないため、家族の財産は影響を受けません。
しかし、兄弟と同居している場合や、兄弟の持ち家に住んでいる場合には、影響を受ける可能性があります。
自分の財産や給与が差し押さえられることはない
原則として、兄弟の借金が原因で自分の財産や給料が差し押さえられることはありません。これは、債務の責任が借り入れた本人に限定されているためです。
前述の「兄弟の借金の連帯保証人・保証人になっているケース」「兄弟に自分の名義を貸してしまったケース」「兄弟の財産・借金を相続したケース」の3つの場合を除けば、基本的には心配する必要はありません。
兄弟の借金滞納問題を解決する方法
兄弟が借金を滞納している場合、どのようなリスクがあるのか、またどのように解決へと導けばよいのでしょうか?
兄弟の借金滞納によるリスク
兄弟が借金を滞納している場合、次のようなリスクが発生する可能性があります。
兄弟名義の財産が差し押さえられる可能性
兄弟が借金を滞納し続けると、兄弟名義の財産が差し押さえられる可能性があります。借金の滞納が数カ月にわたると、ほとんどの債権者は法的手続きを開始します。それでも無視し続けると、裁判所の命令に基づき給与や財産が差し押さえられるおそれがあります。
差し押さえの対象となるのは基本的に兄弟名義の財産ですが、例えば兄弟名義の車を家族全員で使用していた場合などは、家族の日常生活にも支障が出ることになります。
家に取り立てが来るリスク
兄弟と一緒に住んでいる場合、家に督促状が届いたり、電話がかかってくることがあります。もし闇金からお金を借りている場合、家族にも取り立てが来る可能性があります。自分が借金をしたわけではないのに、常に不安を抱えながら生活しなければならないというリスクが存在します。
兄弟の借金を解決する方法
兄弟が借金を滞納し、自力では解決が難しそうな場合には、一緒に借金問題を解決するためにできることを実行していきましょう。
借金の詳細を把握する
まずは兄弟から借金について聞き、その内容を把握することから始めましょう。次の項目を一覧にして、借金の詳細を明らかにします。
- 借入業者数
- 借入業者名
- 業者ごとの借金残高
- 借入期間
- 毎月の返済額
- 滞納期間
- 連帯保証人の有無
- 担保の有無
- 借入理由
- 滞納理由
- 裁判所からの通知の有無、通知の種類、期日
しかし、借金の全容が明確でなかったり、どこからいくら借りているのか分からないこともあります。また、兄弟が言っていることが本当かどうか信じられない場合もあるでしょう。そのような場合には、次の方法で兄弟の借金の内容を調べることが可能です。
借入先の金融機関に直接確認する
借りている金融機関が分かれば、直接電話で問い合わせて情報を得る方法もあります。基本的には、契約者本人からの電話でないと詳細は教えてもらえないため、必ず本人に電話させるようにしましょう。通話をスピーカーにすれば、会話内容を一緒に確認することができます。
また、電話で問い合わせると、後日明細書を郵送してくれる金融機関もあるので、その点も合わせて確認しておきましょう。
借入明細書をチェックする
貸金業者が発行する借り入れ明細書を確認することで、借入金額、期間、毎月の返済額などを把握できます。金融機関からは郵送で送られてくることもありますが、最近では、Web明細が主流となっており、マイページ上で確認できる場合が多いです。借入先から直接送られてくる明細書であれば、借入残高をごまかすことができないため、信頼性が高く安心できます。
信用情報機関に開示請求を行う
上記の3つの方法でも全てが分からない場合は、信用情報機関に開示請求を行って信用情報を取り寄せてください。日本には以下の3つの信用情報機関があり、これらすべての機関に開示請求をすれば、どこからいくら借りていて、どの程度滞納しているかが明らかになります。
信用情報機関と加盟金融機関、開示請求方法
信用情報機関 | 加盟金融機関 | 開示請求の方法 |
---|---|---|
CREDITINFORMATIONCENTER(CIC) | 消費者金融、クレジットカード会社 | 窓口、郵送、スマートフォン |
日本信用情報機構(JICC) | 消費者金融、信販会社、クレジットカード会社、保証会社、リース会社 | 窓口、郵送、インターネット |
全国銀行信用情報センター(KSC) | 銀行、信用金庫、信用組合、信用保証協会、農協 | 郵送 |
信用情報機関への開示請求は、基本的に債務者本人のみが行えます。もし兄弟が借金の内容を明らかにしようとしない場合には、借金の滞納リスクや解決方法があることを伝え、本人に信用情報を取り寄せてもらうようにしましょう。
金融機関からの郵便物をチェックする
これまで届いていた金融機関からの郵便物があれば、その内容を確認しましょう。金融機関からは、督促状や最終通告が届き、滞納期間が長引くと、裁判所から支払督促や訴状が届くこともあります。これらの書類を確認することで、滞納の状況や借入残高を把握できます。
もしこれらの郵便物が届いている場合は、早急に金融機関に連絡を取ったり、債務整理の手続きを考える必要があるかもしれません。どのように対応すべきか分からない場合は、借金問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
今後の対応について話し合う
借金の詳細が確認できたら、今後どのように返済していくか、また返済ができない場合はどうするかを話し合いましょう。まず最初に考えるべきは「本人が返済を続けるのか、それとも家族が協力して返済するのか」という点です。
本人が自力で返済できる状況で、かつその意思があれば問題はありませんが、自力での返済が難しい場合、解決策は変わってきます。借金が数十万円程度であれば、家族が立て替えて返済し、後で本人に返してもらう方法が考えられます。
ただし、同じような問題を繰り返している場合、家族が助けることがかえって本人のためにならないこともあります。家族間で相談し、本人と家族にとって最適な選択を考えることが重要です。
貸付自粛制度を活用する
貸付自粛制度は、浪費癖やギャンブル依存のある方を対象に、自己負担で借金できないようにする仕組みです。貸金業者が所属する「日本貸金業協会」に申請を行うと、貸付自粛の情報が個人信用情報機関に登録されます。これにより、本人がローンを申し込んでも、金融機関が信用情報を確認した上で、貸付を行わないようにする手続きです。
貸付自粛の申請方法は、Web、郵送、または支部への来協の3つがあり、いずれも無料で利用できます。申請は基本的に本人のみが可能ですので、今後の生活を立て直すために必要な手続きであることを説明し、納得のうえで申請を進めましょう。
債務整理を考慮する
借金の残額が高額であったり、本人に返済意欲がない場合、または家族が助けない方が良いと判断した場合などには、債務整理を検討することが適切です。債務整理とは、法的手続きを通じて借金を減額したり、免除するための方法の総称です。それぞれの手続きには、適した人や減免の割合が異なるため、兄弟に最適な方法を慎重に検討する必要があります。
債務整理の種類
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
減免割合
- 将来の利息や遅延損害金の減額
- 借金総額を1/5~1/10に大幅に減額
- すべて免責
手続き期間
- 3カ月~6カ月
- 8カ月~1年
- 4カ月~1年
手続き費用
- 着手金3万~5万円
- 減額報酬(減額できた金額の10~20%)
- 60万~90万円
- 20万~100万円
条件
- 借金返済の実績がある
- 減額後の借金を3~5年以内に完済できる
- 毎月の返済額を手取りの2~3割に収められる
- 将来的に継続的な収入が見込める
- 再生計画案通りの返済が可能
- 借金総額が5000万円以下
- 過去7年以内に個人再生や自己破産をしていない
- 返済不能状態である
- 借金が非免責債権でない
- 免責不許可事由に該当しない
向いている人
- 任意整理: 借金総額が少ない、安定した収入がある、保証人に迷惑をかけたくない、周囲に内緒で手続きをしたい、時間やお金をかけたくない
- 個人再生: 借金総額が100万円~5000万円、ローン返済中のマイホームがある、一定以上の安定した収入がある、過半数の債権者の反対がない、資格が必要な仕事をしている
- 自己破産: 財産を手放しても借金が残る、借金総額が5000万円以上、無職または生活保護を受給している、減額しても完済の見込みがない
債務整理は通常、弁護士に依頼して手続きを進めます。どの方法が最適か分からない場合でも、弁護士に相談することで、最も適した手続きをアドバイスしてもらうことができます。
兄弟が債務整理を行った場合のデメリット
兄弟が債務整理を行った場合、家族にどのようなデメリットが生じるのでしょうか。まずは、一般的な債務整理のデメリットを種類別に紹介します。
任意整理
- ブラックリストに載る
- 返済すべき借金が残る
- 大幅な減額ができない
- 収入がないと手続きできない
- 債権者の合意が必要
個人再生
- ブラックリストに載る
- 官報に公告される
- 手続きが複雑で、時間や費用がかかる
- 保証人に影響が出る
自己破産
- ブラックリストに載る
- 官報に公告される
- 職業や資格に制限がある
- 移動の制限がある(管財事件)
- 郵便物に関する制限がある(管財事件)
- 連帯保証人に債務が移る
これらのデメリットを理解した上で、債務整理の方法を慎重に選ぶことが重要です。
基本的には本人にのみ影響がある
債務整理の影響は上記の通りですが、これらのデメリットは基本的に債務者本人にのみ発生します。たとえ同居している兄弟姉妹であっても、債務整理の影響が及ぶことはありません。したがって、兄弟姉妹がブラックリストに載ったとしても、自分がローンを組んだりクレジットカードを作れなくなるという心配はないということです。
カードやローンの審査に通りづらくなる可能性
兄弟が自己破産をすると、その本人の信用情報には事故情報として記録されますが、家族の信用情報に記載されることはありません。しかし、家族のクレジットカードの限度額が引き下げられたり、ローン審査に通りにくくなる可能性はあります。
これは、金融機関が独自に持っている顧客情報(社内ブラック)のためです。金融機関は、審査の際に信用情報だけでなく顧客情報も確認します。そのため、両親の名前や住所から、債務整理を行った兄弟の事故情報に辿り着くことがあり、影響を受けることがあります。
クレジットカードは更新時に限度額が引き下げられることがあり、新たにローンを組もうとしても審査に通らない可能性があります。クレジットカードを新たに作成したりローンを利用する際には、債務整理をした兄弟が利用していた金融機関やその関連会社を避けるようにしましょう。
保証人に影響が及ぶ可能性
借金の保証人になっている場合、兄弟が債務整理を行うことで影響が及ぶ可能性があります。任意整理では、手続き対象となる借金を選ぶことができるため、保証人がいる借金を除外することができます。しかし、個人再生や自己破産では、すべての借金が手続き対象となるため、保証人に影響を与えることがあります。
具体的には、個人再生の場合、減額された分を保証人が肩代わりして返済しなければならなくなります。また、自己破産の場合、借金の残額全額が保証人に一括請求されることになります。これらの請求を拒否することはできず、代わりに返済した分を債務者本人に請求することもできません。
まとめ
兄弟に借金があり、滞納している場合でも、基本的にあなたに支払い義務はありません。法律上、借金の契約は個人に対して結ばれるためです。ただし、名義を貸した場合や亡くなった兄弟の財産を相続した場合、連帯保証人になっている場合は、支払い義務が生じる可能性があります。
名義を貸した場合は、弁護士に相談して、兄弟に支払を求める交渉をしてもらうか、支払いを拒否できるか確認しましょう。相続の場合は、限定承認や財産放棄を選べば、借金の支払い義務を免れることができます。連帯保証人になっている場合は、交渉して分割払いをお願いするか、債務整理を検討する方法があります。
兄弟の借金問題を解決するためには、まず借金の内容を確認することが重要です。家族で今後の対応について話し合い、返済を続けるのか、債務整理を行うのかを決めましょう。どうすべきか分からない場合は、弁護士に相談するのが最善です。最適な解決方法をアドバイスしてもらえ、そのまま債務整理の手続きを依頼することもできます。