ホストの売掛金が払えない!弁護士相談で返済不要・減額ができる

ホストの売掛金が払えない!弁護士相談で返済不要・減額ができる

目次

売掛金を払えない場合、ホストから脅しを伴う取り立てを受けることがあります。
しかし、無理やり「掛け」にされたケースなどでは、返済が不要となる場合もあります。
身の危険を感じた際は警察に相談し、それ以外の場合は弁護士への相談が有効です。

ホストクラブはお金のかかる夜の遊び場であり、担当ホストが付いて売掛を利用するようになると、売掛金はあっという間に膨らんでしまいます。
ホストにのめり込み、売掛や借金をしてまで通い続けた結果、身を持ち崩してしまう女性も後を絶ちません。

こうした事態を避けるには、適切な対応が必要です。
この記事では、売掛金が払えなくなった場合に起こりうるリスクや、法律的に返済が不要となるケース、さらにはホストとの交渉方法や借金全般への対処法を詳しくご紹介します。

ホストの売掛金問題でお困りの女性は、ぜひこの記事を参考にして、問題解決の一助としてください。

ホストクラブにおける売掛金とは?

ホストクラブの売掛とは、いわゆる「ツケ」のことで、店内での飲食やサービスの代金をその場で支払えない場合に、後日支払う仕組みです。ホスト業界では「カケ」や「未収」とも呼ばれています。

売掛のシステムを利用することで、客とホスト・店側双方に次のようなメリットがあります。

客にとってのメリット

  • 手元にお金がなくても店で遊べる

ホスト・店側にとってのメリット

  • 客に多くのお金を使わせやすい
  • 再来店を促しやすい
  • 常連客になってもらえる可能性が高い

特に、売上を伸ばしたい、ナンバー1を目指したいと考えるホストは、積極的に客に売掛を提案することがあります。
一方で、客も好みのホストからの提案を断りにくく、結果として必要以上にお金を使ってしまう傾向があり、その結果「売掛金が払えない」という問題に陥ることが少なくありません。

通常、売掛金はホスト個人が店に立て替えています。そのため、客から回収できない場合、ホストの給料から差し引かれ、さらに給料を全額差し出しても足りない場合には、ホストが自腹で支払わなければならなくなります。
こうした背景から、売掛金を支払わない客に対しては、担当ホストが直接回収に動くこともあるのです。

ホストによる立て替えとは?

ホストの売掛金が社会問題化したことを受け、警察や行政はホストクラブに対して売掛の廃止を指導するようになりました。
その結果、新宿歌舞伎町をはじめとする多くのホストクラブは、2024年4月以降、売掛システムの廃止を決定。
これに続き、全国のホストクラブでも「売掛を止める」と宣言する店舗が増加しています。

この動きにより、ホストから高額請求を受ける被害者が減少すると期待されましたが、一部のホストは売掛に代わる新たな手口「立て替え」を利用し、女性客に対して悪質な請求を続けています。

売掛と立て替えの違い

  • 売掛: 客が店に対してツケ払いをした金額をホストが一時的に支払う
  • 立替: ホストが店への支払いを個人的に立て替える

この2つは似ているように見えますが、重要な違いは店舗が客の支払いに関与しているかどうかです。
売掛の場合、店舗が支払いの一部に関与しますが、立て替えでは店舗は関与せず、個人間の貸し借りとして扱われます。

そのため、警察や行政が店舗に対して売掛を禁止する命令を出しても、立て替えは個人間の問題とされ、店舗を直接取り締まることが難しいのです。
このようにして、一部のホストクラブやホストは取締りをすり抜け、悪質な手口で女性客からお金を搾取し続けています。

注意点と対処法
ホストから立て替えを提案された場合は、断固として拒否してください。
もし高額な立て替えに応じてしまった場合は、すぐに弁護士に相談することで解決への道が開けます。
適切な対応を取ることで、被害の拡大を防ぎましょう。

ホストクラブでの売掛金が払えないとどうなる?

ホストは、売掛金を回収できない場合、自身が金銭的な損害を被るため、客が「払えない」と言っても簡単に許すことはありません。
お客がホストクラブの売掛金を支払えなくなると、次のような形でホストに追い詰められることがあります。

厳しい回収を受ける

売掛金をなかなか支払わない客に対して、ホストは次のような厳しい取り立てを行うことがあります。

  • 昼夜を問わず頻繁に電話をかけてくる
  • 自宅に集金に押しかけてくる
  • 実家や職場にも訪れて集金を試みる
  • 暴行や脅迫を行う場合もある

例えば、消費者金融やカードローンの返済が遅れた場合でも、法律で違法な取り立てが禁じられているため、身の危険を感じるような行為を受けることはありません。
しかし、ホストの売掛金回収には貸金業法が適用されず、ホスト自身もその法律を知らないことが多いため、強引な手段が取られることがあります。

売掛金の金額が大きくなるほど、ホスト側も必死になり、あらゆる手段を講じて取り立てようとします。
場合によっては、暴力団や半グレといった「回収業者」に依頼することもあり、こうした取り立てを無視するのは危険です。
適切な対処を早急に講じることが重要です。

借用書への署名を求められる

最初から厳しい取り立てが行われるわけではなく、初期段階では支払いをお願いされるだけの場合がほとんどです。支払えない場合でも、支払いの予定を約束すれば、その場は引き下がることが多いです。

ただし、この際に借用書へのサインを求められるケースが多く見られます。これは、売掛代金を客が借金した形にするもので、法律上「準消費貸借契約」と呼ばれる正当な契約の一種です。

しかし、ホストとの間で借用書を交わす際には、以下の点に注意が必要です:

  • 法外な金利による利息や遅延損害金を加算される
  • 迷惑料など、正当ではない費用を追加される
  • 自宅や実家、職場などの住所や連絡先を聞き出される

借用書の文面は事前にホストが作成している場合がほとんどです。そのため、サインする前に記載内容を十分に確認し、不当な条件が含まれていないか注意する必要があります。

訴訟を起こされる

売掛金を未納のまま放置していると、ホスト側から民事裁判を起こされる可能性があります。

「ツケ払いを理由に裁判になることはないだろう」と思う方もいるかもしれませんが、実際には少額訴訟という簡易的な裁判手続きを利用するケースが少なくありません。

少額訴訟とは、60万円以下の金銭債務を対象に、原則1回の期日で審理を終了させる簡易な民事訴訟の手続きです。一部のホストは売掛金の回収に慣れており、60万円を超える金額の場合には通常の民事裁判を起こすこともあります。

裁判で判決が下された後も売掛金を支払わない場合、給料や預貯金などの財産が差し押さえられ、強制的に売掛金を回収されることになります。こうした事態を避けるためにも、早めの対応が必要です。

脅迫や暴力を受ける

ホストは、売掛金を支払えない女性に対して、最初は優しい態度で支払いを促しますが、期限が過ぎても支払いがない場合、態度が一変します。
暴言を浴びせたり、暴力を振るったりして恐怖心を煽り、無理に支払わせようとすることがあります。
支払いが済むまで脅迫や暴力が続く場合もあり、女性は肉体的・精神的に大きなダメージを受けることになりかねません。

返済のために借り入れを強制される

裁判などの正当な法的手続きを取られる前に、ホストから「借金をしてでも売掛金を返済するように」と強く迫られることがあります。

「収入が少ない」「既に多額の借金があり審査に通らない」「仕事が水商売」などの理由で貸金業者から借りられない場合には、闇金を紹介されるケースも少なくありません。

売掛金の返済を目的にこうした借金に応じてしまうと、一時的にホストからの取り立てを免れたとしても、その後、借金地獄に陥るリスクが高まります。特に闇金による取り立ては非常に厳しく、悪質な嫌がらせや暴力的な行為が日常的に行われることも。

闇金の利用は絶対に避けるべきです。どんな状況であっても、冷静に対処方法を検討することが重要です。

詐欺罪で訴訟を起こされることもある

最初から支払う意思がなく、「ツケ払いできるからホストクラブで遊ぼう」と考えてツケにした場合、詐欺罪が成立する可能性があります。ホストクラブでの売掛は、双方の信頼に基づいて成り立っています。

売掛金が大き額であったり、何度も支払いを滞らせたりする場合、最終的に警察に通報され、問題として取り上げられることもあるため、注意が必要です。

SNSなどで公開される

ホストがあらゆる手段を使っても売掛金が回収できない場合、客の顔写真や個人情報をSNSなどで公開することも平気で行われます。多くの場合、「ツケを払わない泥棒」などといった誹謗中傷が行われ、事実無根の内容で名誉を傷つけられることがあります。

ネット上の誹謗中傷に対しては削除請求が可能ですが、それには時間や手間、コストがかかることが多く、削除できない場合はその内容がデジタル・タトゥーとして残る可能性があります。さらに、ホストからは「削除を望むなら、ツケを支払え」と脅迫されることもあるのです。

違法な仕事を提案される

キャバクラや風俗だけでなく、違法な仕事を紹介されるケースもあります。ホストが裏の世界と繋がりを持っている場合、以下のような犯罪行為に加担させられることもあります。

  • 特殊詐欺のかけ子、受け子、出し子
  • 美人局(つつもたせ)
  • 出会い系を利用した売春
  • 出会い系のサクラ
  • 違法薬物や盗品などの運び屋
  • 携帯電話や銀行口座の提供

「一度だけなら」と考え違法な仕事を引き受けてしまう人もいますが、これは非常に危険です。一度手を染めると、依頼主に弱みを握られ、抜け出せなくなる可能性が高まります。

違法行為に関与することは、深刻なトラブルや法的処罰を招くリスクがあるため、決して手を出さないよう強く注意が必要です。

キャバクラや風俗で働くように強制される

借金しても返済が難しい場合、キャバクラや風俗で働いて返済するよう求められるケースがあります。ホストのネットワークを通じて店舗を紹介され、すぐに働き始めるように強く迫られることも珍しくありません。

既にキャバクラや風俗で働いている女性に対しては、さらに高収入が得られるソープランドや違法な風俗店、さらにはAVプロダクションなどを紹介されることもあります。

「返済しなければならない」「高収入が得られるなら仕方ない」といった思いから、こうした要求に応じてしまう女性も少なくありません。しかし、このような対応はさらなるリスクやトラブルを招く可能性が高いため、慎重に考える必要があります。

ホストクラブの売掛金が支払わなくてよい場合

通常、ツケ払いをすると返済義務が生じますが、特定の状況では返済義務が発生しない場合もあります。売掛金が返済不要となるケースは、以下の5つです。

違法な金利を求められている場合

売掛金が支払えない場合、高い利息を要求されることがあります。もしその利率が年109.5%を超える場合、出資法違反となり、犯罪行為に該当するため、民事上も売掛契約が無効になる可能性があります。無効となれば、契約は無効とみなされ、売掛金の返済義務はなくなります。しかし、実際には借用書を後日交わす際に高い利息が要求されることが多いです。暴利が原因で準消費貸借契約が無効になったとしても、元々の売掛契約が無効になるわけではないことに注意が必要です。

消滅時効が成立している場合

売掛金の債務にも時効が適用されますので、消滅時効が成立していれば返済の義務はなくなります。民法改正により、2020年4月1日以降に発生した売掛金債務の時効期間は、注文日から5年となっています。ただし、借用書を交わして準消費貸借契約を結んだ場合、その時点から5年が時効期間となります。2020年3月31日以前に発生した飲食の売掛金債務は、時効期間が1年となります。ホストの売掛金を長期間支払っていない場合は、消滅時効が適用されているかどうか確認することが重要です。

脅迫や詐欺によってツケをした場合

以下のような場合、民法に基づき売掛契約を取り消すことができます。

  • ストーカーされると脅されて注文を強制された
  • 暴力で無理に注文をさせられた
  • 10万円のボトルを1万円で注文したと騙された

契約の取り消しが認められると、売掛金の返済義務はなくなります。しかし、ホストにしつこく売掛をお願いされて「好きなホストが言うなら」と注文した場合、その契約は取り消せない可能性が高いです。取り消しの可否については、弁護士に相談することをおすすめします。

デート商法による被害を受けた場合

デート商法とは、「好意を不正に利用して契約を結ばせる手法」のことで、このような契約(売掛)は取り消しが可能です。デート商法に該当するのは、ホストが以下の状況を把握して、「注文しないと別れる」と脅す場合です。

  • 女性が社会経験に乏しい
  • 女性がホストに好意を抱いている
  • 女性がホストも自分に好意を持っていると信じている

ただし、デート商法に該当するかどうかの明確な基準はなく、個別のケースによります。そのため、消費生活センターや弁護士に相談することをお勧めします。消費生活センターへの電話相談は「188」で可能です。

【参考】消費者庁

未成年者が売掛金を負った場合

ツケ払いをした客が未成年者(18歳未満)の場合、親権者の同意がなければ契約を取り消し、返済を拒否することができます。ただし、未成年者が成人であると偽ってホストクラブに入店し注文した場合、その契約の取り消しは認められません。

ホストの売掛金で過酷な取り立てを受けた際の対応方法

実際にホストから厳しい取り立てを受けた際には、相手の言いなりにならず、適切に対応することが重要です。借金を迫られたり、ホストの知人が経営する風俗店で働くように言われても、軽々しく応じてはいけません。以下の方法で適切に対処しましょう。

減額や分割払いを交渉する

実際にホストから厳しい取り立てを受けた際には、相手の言いなりにならず、適切に対応することが重要です。借金を迫られたり、ホストの知人が経営する風俗店で働くように言われても、軽々しく応じてはいけません。以下の方法で適切に対処しましょう。

返済義務がない場合は支払いを拒否する

返済不要に該当する場合は、はっきりと支払いを拒否することが重要です。取り立てが怖い、または情に流されて返済しようとする人もいますが、途中で返済を始めてしまうと、ずっとホストに支配され続けることになります。返済不要である理由をホストに伝え、断固として支払いを拒否することが最善の方法です。

女性相談支援センターに連絡して相談する

「ホストに関する問題」を抱えている方のために、各都道府県には「女性相談支援センター(旧:婦人相談所)」という相談機関があります。
「ホストへの売掛金の返済」や「脅迫されている」などの悩みについて、カウンセラーに相談できます。
相談は短縮ダイヤル#8778、または下記のリンク先に記載された電話番号から行えます。
【参考】女性相談支援センター | 厚生労働省

ホストが犯罪行為を行っている場合は、警察に通報する

返済義務の有無に関わらず、担当ホストが必死になって取り立てを行う可能性は高いです。取り立てが過度に行われた場合に該当する可能性のある犯罪は以下の通りです。

状況
成立する犯罪

  • 脅された場合 → 脅迫罪
  • 暴力を振るわれた場合 → 暴行罪(怪我をした場合は傷害罪)
  • 暴行や脅迫を用いて返済を迫られた場合 → 恐喝罪
  • 借用書へのサインを強要された場合 → 強要罪
  • 借金を強要された場合 → 強要罪
  • キャバクラや風俗店への勤務を強要された場合 → 強要罪
  • 職場の人の前で大声で返済を迫られた場合 → 名誉毀損罪
  • SNSなどで誹謗中傷された場合 → 名誉毀損罪
  • 自宅に押しかけてきた場合 → 住居侵入罪
  • 退去を求めても帰らない場合 → 不退去罪
  • 自宅の玄関や壁に貼り紙をされた場合 → 器物損壊罪

もし身の危険を感じた場合は、直ちに警察に通報しましょう。状況によっては警護を行ってくれることもあります。ホストに対する処罰を望む場合、被害届や告訴状を提出することが有効です。
ただし、警察は即時対応できないこともあり、中途半端な介入が事態をさらに悪化させることもあります。違法行為がある場合は、弁護士に相談して適切な対処方法をアドバイスしてもらうことをおすすめします。

ホストの回収システム

売掛金のシステムには、「ホストクラブ」が立て替える場合と、「担当ホスト」が立て替える場合の2つのパターンがあります。当事務所で対応してきた多くのケースは、後者の担当ホストが立て替えるパターンです。

担当ホストが立て替える場合、客との間で定めた期限までに売掛金が清算されなければ、その分がホストの給与から差し引かれることが一般的です。もし売掛金が回収できなければ、ホストの給与が減るどころか、場合によってはマイナスになり、借金を背負うことになります。これにより、担当ホストは自身の給与を守るために必死で売掛金の回収に取り組むことになります。

なぜ担当ホストがこのようなリスクを負いながら売掛金債権を持つのかと言うと、それが「売上」に計上され、店のランキング(通称「ナンバー」)に影響を与えるからです。ナンバー1になれば、お店の顔となり、多くの客を引き寄せることができます。各ホストはこのランキングを競い合っているため、売掛金は自分の売上を上げる手段でもあります。

しかし、担当ホストが売掛金を多く抱えすぎると、その負担が客に押し付けられることになります。期限内に売掛金を回収できなければ、ホストはマイナスを抱えることになり、その結果、過剰な債権回収が行われる原因となります。これが当事務所に相談が寄せられる一因です。

回収はどのように行われるのか

売掛金の回収方法について、最も多いのは担当ホストによるものです。以下に、その具体的な手法を説明します。

メール・電話

最初は支払いを求める優しい言葉で始まることもありますが、時間が経つにつれて、追い詰める内容のメールや電話が頻繁に送られます。例えば:

  • 「支払わない場合、警察に通報する」
  • 「店の顧問弁護士がいるので逃げられない」
  • 「支払わないなら家族に払わせる」
  • 「今から自宅に行く」

支払いの猶予や分割払いの提案をしても、応じないことがほとんどです。さらには、消費者金融から借りるように要求されたり、風俗店で働くように暗に提案されたりすることもあります。こうした圧力により、追い詰められてしまうこともあります。

自宅訪問

電話やメールでのプレッシャーの後、実際に自宅に訪問されることもあります。訪問の脅しによって不安を与え、支払わせようとする手法です。本来ならば、訪問を受け入れる必要はありませんが、債務者としての負い目からつい応じてしまう場合があります。

職場訪問

特にキャバクラや風俗店に勤務している債務者に対しては、職場に直接訪問して支払いを強要することもあります。職場に知られたくないという心理を利用し、嫌がらせをして支払いを迫ります。職場は支払い義務とは無関係ですが、精神的な圧力をかけるためにこの方法が用いられます。

実家訪問

実家に連絡先を教えることを求められることが多く、実家に訪問されることもあります。親に心配させ、親が代わりに支払うケースも見られますが、これは法的に義務のない親が支払うことになります。ホストはその心理を利用して支払いを求めるのです。

店や店の近くでの支払い

振込で済ませることができるにもかかわらず、店やその周辺に呼び出して直接支払いを要求されることもあります。強引に飲み物を頼まれ、売掛金が増えてしまうケースもあります。

訴訟や法的手続き

大手グループや法人化されたホストクラブでは、顧問弁護士や回収部門を持つ場合があり、場合によっては訴訟を提起してくることもあります。

回収を行うのは誰か

売掛金の回収を担当するのは、以下のいずれかの人物です。

担当ホスト
最も一般的なのは担当ホストが回収する場合です。売掛金が、ホストとお客の間で個人的な信頼に基づいて立てられることから、ホストが自ら回収することが多いです。弊所でのケースでも、ほとんどは担当ホストが請求者となります。
担当ホストが立て替えた場合、その後に個人的に請求されるか、店の従業員として請求されるかを確認することが重要です。前者ではホストが債権者となり、後者では店舗が債権者となります。弁護士が介入すると問題は少なくなりますが、誰が債権者であるかを明確にし、二重払いを避けるために支払いを行うことが重要です。

ホストクラブ
ホストクラブの代表者が直接請求してくることもあります。担当ホストとの交渉が進まない場合や、ホストクラブ自体が売掛金の回収を行う場合です。代表者や経理担当者から請求を受けた場合も、誰が債権者であるか確認することが大切です。ホストクラブの代表者が関与する場合、裏付け資料や分割払いの交渉がスムーズに進むことが多いため、比較的安心して対応できることが多いです。

回収業者
稀に、回収業者が売掛金の支払いを請求することもあります。大手グループには独自の回収業者がいる場合もあり、個別にホストやホストクラブから依頼を受ける独立した業者も存在します。回収業者が関与している場合、誰の依頼で回収しているのかを確認することが重要です。また、有償で回収業務を行っている場合、違法行為となる可能性があるため、注意が必要です。

弁護士
弁護士がホストやホストクラブの代理人として介入するケースもあります。この場合、弁護士の身元は明確であり、依頼をすれば誰の代理人であるかの書面(受任通知)を提供してもらえます。弁護士が関与する場合、通常は手荒な回収は行われず、比較的安心して対応できる相手となります。

その他
過去には、反社会的勢力が関与していたケースもありましたが、現在では恐喝行為として問題視されるため、そのような行為が行われることはほとんどありません。しかし、担当ホストが反社会的勢力との関わりをほのめかすことが稀にあり、この点も注意が必要です。

弁護士による対応方法

上記のように、ホストクラブからの売掛金回収には様々な方法が取られます。これに対して、どのように対応すべきかについて考えてみましょう。

直接の対応は避けるべき

自身で対応する方も多いかもしれませんが、過去の事例から見ても、直接の対応はお勧めできません。揺さぶり行為を受けることで冷静な判断ができず、過大な負担を背負うことになってしまうことが多いです。ホストは、脅しやなだめを繰り返しながら、最も早く売掛金を回収できる方法を探ります。重要なのは、直接的な接触を避けることです。

売掛金の総額を確定し、支払いスケジュールを調整する際には、法的反論の可能性を考慮し、支払能力を基に現実的な提案をする必要があります。こうした交渉には冷静に状況を見極めることができる第三者の介入が欠かせません。

警察への相談

警察は民事問題には介入しませんが、暴行や脅迫が行われた場合、介入する可能性があります。ただし、売掛金の整理は民事事件であるため、警察が交渉を代行するわけではありません。警察は主に担当ホストに注意を促し、直接の対応を避けるよう助言します。

弁護士に依頼する理由

売掛金問題を解決するためには、法的観点から時効や取消しの可否を検討した上で、支払能力に応じた現実的な支払いスケジュールを交渉することが必要です。これを行うには、法的な知識と交渉スキルを持った弁護士に依頼するのが最も安全です。

弁護士に任せれば、以後は直接の対応をせずに済み、冷静な判断を下すための状況が整います。どんな揺さぶりを受けても、弁護士であれば冷静に対応できるため、売掛金問題をスムーズに解決できる可能性が高いです。

このように、ホストクラブの売掛金問題に関しては、弁護士を窓口にすることを強くお勧めします。

ホストの売掛金問題を弁護士に依頼する利点

ホストとの売掛トラブルや貸金業者からの借金問題を根本的に解決するためには、弁護士に依頼するのが最も効果的な方法です。弁護士は法律の専門家として、依頼者の代理となり、相手との交渉や債務整理を通じて借金問題を解決できる法的手続きに対応します。

初めは弁護士への相談に抵抗を感じるかもしれませんが、ホストとの問題を解決できることにより、思いがけないメリットを実感することができるでしょう。弁護士に依頼することによる主なメリットは、以下の3つです。

ホストからの取り立てを停止できる

ホストは、お客女性が売掛金の支払いを拒否すると、しつこく電話やLINEをしてきたり、実家や職場にまで押しかけるなど、強引な取り立てを行うことが多いです。こうした取り立ては、警察に捕まらないように違法ギリギリの方法で行われ、支払いが完了するまで続くことがあります。

弁護士が依頼を受けた場合、最初にホストに「受任通知」を送付します。この通知は、弁護士が依頼者の代理人になったことを正式に伝え、今後の連絡はすべて弁護士を通じて行うことを明確にします。また、受任通知には「取り立てをしないように」と記載されているため、多くのホストはそれに従い、取り立てを停止することになります。

ホストや回収業者との交渉を弁護士に委任できる

受任通知を送った後、弁護士はホストとの売掛金問題解決に向けた交渉を開始します。まずは、売掛金を支払う法的義務があるかどうかを確認します。もし、時効が成立していたり、請求が違法であれば、その不払いを主張して交渉します。一方、支払い義務がある場合には、減額や分割払いの提案を行います。この間、依頼人女性はホストとの連絡を一切取る必要がなく、全ての交渉を弁護士に任せることができます。

ただし、この交渉は弁護士なら誰でも対応できるわけではありません。ホストとの交渉に精通している法律事務所は少ないため、ホスト関連の案件に経験と実績のある弁護士に依頼するのが最適です。

ホストの売掛金やその他の借金を債務整理で解決できる

売掛金と合わせて、貸金業者からの借金も減額や免責にするための手続きを債務整理と言います。債務整理は、返済が困難な場合に法律で認められた借金の救済方法で、借金の減額や支払い免除が可能です。ホストの売掛金のような準消費貸借契約による返済義務も、債務整理の対象に含まれます。

主な債務整理の方法には以下があります:

  • 任意整理:債権者と個別に交渉し、借金を減額する方法
  • 個人再生:裁判所に申請して、最大1/5まで借金を減額する方法
  • 自己破産:裁判所に申請し、全ての借金を免除(チャラ)してもらう方法

消費者金融や街金などから多額の借金をしている場合、個人再生や自己破産が有効な選択肢となります。個人再生の場合、負債全体の5分の1から10分の1まで減額が可能です。自己破産では、負債全体を免除してもらうことができます。

ただし、ホストクラブでの飲食代金に関しては、自己破産の場合、裁判所が「免責不許可事由」に該当すると判断する可能性が高いです。しかし、ホストクラブの利用頻度や売掛金が総負債に占める割合により、裁量免責が認められる場合もあります。

状況に応じた債務整理の選択は異なりますが、必ず解決策が見つかります。また、闇金から借りている場合も、弁護士に依頼することで取立てが止まり、返済義務が免除されることがあります。

まとめ

この記事を読んでいる方の中には、現在ホストの厳しい取り立てに悩んでいる方も多いかもしれません。ホストクラブの売掛金は、しばしば不当に高額で、意味もなく法外な利息が加算されることが一般的です。このような売掛金の全額を支払う必要はありません。また、脅しや違法な取り立てを受けている場合、自分だけで解決しようとすることは避けるべきです。

売掛金に関するトラブルは、できるだけ早く弁護士に相談し、解決へと導いてもらうことが最良の方法です。

ホストの売掛金に関するQ&A

ホストの売掛に関するよくある相談をまとめました。問題解決の参考にしてください。

売掛金を払わないと回収業者が取り立てに来るのか?

ホストクラブでの掛けを支払わない場合、業者が取り立てに来ることもあります。通常、ホスト本人が直接お客に対して取り立てを行いますが、「支払わない」「支払えない」といった場合、ホストは回収業者に取り立てを依頼することがあります。
ホストは、少しでもお金が戻ってくるならばと業者に依頼するのです。回収業者は、取り立てを専門に行う業者(個人)であり、その多くは元暴力団や半グレといった経歴を持っています。成功報酬で依頼を受けるため、さまざまな悪質な手法を使って取り立てをおこないます。
違法行為を避けるため、業者は売掛金を譲り受けた形を取って、債権者として取り立てを実行します。
このような回収業者から連絡を受けた場合、トラブルが深刻化するリスクが高いため、早急に弁護士に相談し、対応を取ることが重要です。
回収業者には、弁護士と専門の回収業者の二種類があります。売掛金額が大きい場合は弁護士に依頼することが多く、金額が小さい場合は専門回収業者が取り立てに来ることが一般的です。

ホストの売掛金のみを支払いに行くとどうなる?

席に強制的に座らされ、その後さらに掛けを重ねられることになります。
掛けを返済するために店に行くことはリスクが大きいです。ホストはお店に来たお客をただで帰すことはありません。
そのため、掛けの支払いは銀行振込を利用することをおすすめします。ホストから来店を促されても、きっぱり断り、直接のやり取りは避けることが重要です。
もし担当ホストが来店でしか掛け払いを受け付けない場合、弁護士に相談して支払い方法について交渉してもらうことが有効です。

ホストから内容証明が届いた場合、どう対応すべきか?

内容証明に記載された内容に基づき、適切に対応することが重要です。ホストから送られる内容証明は、しばしば「裁判所に訴える」「弁護士に依頼した」といった内容が含まれており、売掛金を回収するための本気の意思表示です。もしホストが法的手段を講じて請求してきた場合、内容証明を受け取った側は弁護士に相談し、解決を目指すことが賢明です。

ホストの売掛で公正証書にサインした場合、返済は義務になる?

公正証書に署名した場合、返済義務が生じます。公正証書は、当事者間で合意した内容を証明するもので、法的にも執行力を持っています。したがって、公正証書に記載された売掛金について署名をした場合、その返済が必要となります。しかし、もしその売掛金を支払えない場合でも、当事者間で交渉を行い合意すれば、減額される可能性もあります。公正証書の内容について詳しく確認するためにも、弁護士に相談することをお勧めします。

ホスト側の弁護士と売掛金の支払いに合意していても、減額交渉は可能か?

相手が減額に応じてくれる可能性もあります。ホストが売掛金の回収を弁護士に依頼した場合、お客(女性)の交渉相手はその弁護士になります。これにより、ホストからの強引な取り立てはなくなりますが、相手弁護士は法的に基づいた理詰めの交渉を進めてくるため、慣れていないと精神的なプレッシャーを感じることもあります。相手弁護士の主張に「売掛金全額を支払わなければならないのか…」と悩む方もいるかもしれません。しかし、過去に支払いに合意した場合でも、返済が難しい場合は減額交渉を行うことが可能です。このような交渉には法律や金融の専門知識が必要となるため、減額交渉を弁護士に依頼することが賢明な選択と言えるでしょう。

掛けで注文して飲まなかった場合でも支払い義務はあるのか?

自分の意思で注文した場合、たとえ飲食しなくても支払い義務が生じます。ホストからボトルを入れるように提案され、嫌々ながら受け入れた場合も同様です。しかし、ホストからシャンパンタワーの提案を断ったにもかかわらず勝手にタワーが作られた場合、拒否したことが記録として残っていれば、売掛金の支払いが不要になることもあります。店内の出来事では証拠が残りにくいことが多いですが、ホストとのLINEメッセージで拒否した旨が証明でき、その内容を相手が認めるメッセージがあれば、支払い義務を免れる可能性が高くなります。

借用書がなくても伝票がある場合、返済義務はどうなる?

借用書がなくても、「サービスを受けた」「飲食代を支払った」ことを示す伝票があれば、返済義務は発生します。また、覚書、同意書、メモ、LINEメッセージなど、支払いに同意したことを示す証拠が残っていれば、それは個人の借金として扱われ、返済義務が生じます。しかし、ホストに強制的に書かされたり、勝手に金額を追加された場合もあります。その場合、証拠があれば、状況によっては全額の支払い義務が発生しないこともあります。

ホストの売掛金は自己破産で免除されるのか?

裁判所が自己破産を認めれば、全額免除される可能性があります。売掛金とは、ホストがお店に立て替えてもらっている金額であり、ホストは期日までにその売掛をお店に返済する必要があります。そのため、売掛金はホストとお客の個人的な借金という形になります。売掛金の支払いが難しい方の中には、自己破産を検討している方もいらっしゃるでしょう。自己破産には、全ての借金を債権者の同意を得て免除してもらえるというメリットがあります。しかし、ホストの売掛金については、浪費と見なされて自己破産が認められない場合があります。また、ホストとの交渉が難航することもあります。そのため、弁護士に相談し、最適な解決方法を事前に検討することをお勧めします。

掛けの返済を銀行振込で行っても問題ない?

ホストが同意すれば、銀行振込での支払いが可能です。ホスト側としては、振り込みで支払いが完了すれば問題ないため、銀行振込に応じる場合もあります。しかし、多くのホストはお客に再度の来店を促し、飲食を注文させて新たに売掛を作ろうとします。これは、ターゲットからできるだけ多くの売上を作るためです。そのため、銀行振込を拒否し、「対面での支払い」や「店内での支払い」を強要するホストも少なくありません。このような場合、対面での支払いを強く拒否することが非常に重要です。