
「特定調停をしたいけど費用がどれくらいかかるのか心配…」
任意整理や個人再生など債務整理をするためには、弁護士費用や裁判所費用などの費用がかかります。
しかし、特定調停は調停委員の手助けを受ながら貸金業者と交渉する手続きなので、弁護士や司法書士に依頼しなくても利用しやすい債務整理方法です。
ただ、費用が安い一方で、借金の減額幅は他の債務整理と比べて小さくなってしまうなどデメリットもあります。
この記事では、特定調停をするとき具体的にどのぐらいの費用がかかるのか解説します。
目次
特定調停にかかる費用ってどのくらい?

特定調停は自分で行う手続きのため、他の債務整理手続きのように弁護士費用や裁判所費用を支払う必要はありません。
一方で、弁護士や司法書士といった専門家に依頼して特定調停を行うこともできます。
以下に自分一人で行う場合と、弁護士に依頼して行う場合の費用相場をまとめましたので、確認しましょう。
自分で行う場合
支払先 | 内容 | 費用額 |
---|---|---|
裁判所 | 特定調停の申し立て手数料 | 約500円(借入1件ごと) |
裁判所 | 手続き費用(予納郵便切手) | 約430円(借入1件ごと) |
郵便切手代は裁判所によって多少異なる場合もあります。
以上は1社あたりにかかる金額ですので、5社に申し立てる場合は5倍の4,650円が必要になります。
特定調停を申し立てる人の多くは多重債務に陥っていることが多いため、5~6社を相手に申し立てるのが平均的となっています。10社以上を相手に申し立てる人も少なくありません。
実費の他に、申し立てや調停期日への出廷のために裁判所への交通費も合わせて1~2万円の費用がかかるのが相場です。
弁護士に依頼して行う場合
特定調停を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、実費の他に依頼費用が必要となります。
具体的な金額は専門家ごとに異なりますが、相場は以下のとおりです。
費用名 | 内容 | 費用額 |
---|---|---|
相談料 | 手続き前に専門家に相談します。 | 基本無料 |
着手金 | 専門家に依頼するときに支払い | 約2~5万円(借入1件ごと) |
減額報酬 | 引き直し計算の結果借金が減額した場合に発生 | 減額分の10~20%程度 |
10社を相手として特定調停を依頼し、借金総額を100万円減額できた場合は、全体で15万円~30万円の費用がかかります。
相談料を無料としている事務所がほとんどで、減額報酬を請求しない事務所もあるので、事務所によって依頼費用は異なります。
弁護士費用は事務所によって変化する
弁護士や司法書士へ支払う依頼料は依頼する専門家の事務所によって多少変動することがあります。
なぜ、費用が専門家によって変動するのでしょうか。
過払い金請求等のテレビCMやネット広告を見たことがある方も多いと思います。
もちろん、専門家もビジネスなのでテレビCMやネット広告等の広告費が費用に上乗せされている場合もあります。そのため専門家の事務所ごとに費用が変動するのです。
初回相談は無料で行っている事務所がほとんどなので、債務整理をしようと考えている人は1社のみではなく、複数社に相談に行ってもいいかもしれません。
任意整理、個人再生、自己破産の費用相場
では、自己破産以外の手続き相場はいくらなのでしょうか。
以下にまとめましたので、比較してみましょう。
任意整理
裁判所を通さず、貸金業者などの債権者と交渉して将来利息や遅延損害金をカットする手続きです。
裁判所を通さない手続きなので、裁判所費用はなく弁護士や司法書士費用のみとなります。
費用名 | 内容 | 費用額 |
---|---|---|
相談料 | 手続き前に専門家に相談します。 | 基本無料 |
着手金 | 専門家に依頼するときに支払い | 約2~5万円(借入1件ごと) |
報酬金 | 借入先との交渉が終了してから支払い | 約2~5万円(借入1件ごと) |
減額報酬 | 引き直し計算の結果借金が減額した場合に発生 | 減額分の10~20%程度 |
個人再生
個人再生とは、民事再生法という法律に基づいて、裁判所に返済不能を申し立てる手続きです。返済総額を約5分の1~10分の1まで減額し、3~5年で返済します。
個人再生の手続きにかかる費用の多くは、裁判所に支払うものとなどに支払うものをあわせて70万円程度が相場になります。
支払先 | 内容 | 費用額 |
---|---|---|
相談料 | 手続き前に専門家に相談します。 | 基本無料 |
弁護士費用 | 法律事務所に支払う着手金・報酬金等 | 約50万円 |
裁判所費用 | 予納金や手数料、個人再生委員への報酬等 | 約20万円 |
自己破産
自己破産は、収入が不足しているため借金の返済ができないということを裁判所に認めてもらい、借金の返済義務を免除してもらうための手続きです。
自分が持っている財産を換金し、借入先に分配することで返済に充てます。そのため、預貯金や車、不動産、加入している保険などの財産を失ってしまいます。
支払先 | 内容 | 費用額 |
---|---|---|
相談料 | 手続き前に専門家に相談します。 | 基本無料 |
法律事務所 | 着手金・報酬金など | 約30万円〜50万円 |
裁判所 | 予納金や手数料など | 約3万円〜30万円 |
特定調停はちゃんと借金減額できるの?
特定調停には、安い費用で効果的な債務整理ができるというメリットがあると言われています。
その理由は以下のとおりです。
専門家に依頼しなくても利用できる
任意整理や個人再生などの債務整理方法の中には自分で行うのは難しいものもあります。
しかし、特定調停は専門家に依頼しなくても利用できる手続きとなっています。
任意整理の場合は弁護士に依頼しない限り、貸金業者と直接交渉しなければならないため、専門的な知識や交渉力がなければ不利な和解案を一方的に押し付けられてしまう可能性があります。
それに対して、特定調停では、調停委員に解決案を示してもらえるので、専門的な知識や交渉力があまりない場合でも解決が可能になります。
自己破産や個人再生は手続きが複雑なので自分で手続きを進めるのは難しいですが、特定調停の手続きはそこまで複雑なものではありません。
差押えを止めることができる
既に給料などの財産を差し押さえられていても、特定調停を申し立てれば差押えを止めることができます。
任意整理にはない、特定調停の大きなメリットといえます。
ただし、自動的に差押えが止まるわけではありません。
申し立てと同時、もしくは申し立て後に「強制執行停止申立書」を提出する必要があります。
周囲の人に知られずに利用できる
自己破産と個人再生の場合は、「官報」という政府が発行する日刊紙に申立人の氏名や住所が掲載されます。
しかし、特定調停の場合は氏名や住所が公表されることはないので、周囲の人に知られずに利用することができます。
特定調停の場合は、自分に連絡があるとしても裁判所からに限られますので、家族に知られる可能性も低いです。
特定調停は費用が最低限な分デメリットが大きい
費用を最低限に抑えて債務整理手続きができる特定調停ですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
交渉に応じない貸金業者もいる
金融機関の中には、特定調停での交渉に応じてもらえない金融機関もあります。
弁護士や司法書士などの専門家に依頼した場合はほとんどの金融機関が交渉に応じてくれます。
なぜなら、借金をした人が専門家に依頼すると、金融機関は借金をした人に対して直接取り立てを行ってはならないと貸金業法で定められているからです。
専門家から受任通知を受け取った後は直接の取り立てが禁止されるため、特定調停での交渉に応じざるを得なくなるのです。
一方で、金融機関は専門家が付いていない債務者に対して、特定調停に応じなくても直接取り立てることができます。
借金の大幅な減額は期待できない
特定調停では、将来利息や遅延損害金のカットは可能ですが、元金のカットには基本的に応じてもらえません。そのため、借金の大幅な減額は期待できません。
過払い金請求はできない
グレーゾーン金利が撤廃される前から借金をしていた場合は、特定調停で利息引き直し計算をすることによって過払い金が判明することがあります。
しかし、特定調停の手続き内で過払い金請求をすることはできません。
特定調停は申立人が抱えている借金の返済を裁判所で金融機関と話し合う手続きです。そのため、過払い金請求はまた別の手続きになってしまいます。
過払い金の返還を請求するためには、調停外で別途手続きを行う必要があります。
調停成立後に返済が遅れると差押えを受ける
特定調停で返済案について話し合いがまとまると、「調停調書」が作成されます。
この調停調書に記載された内容のとおりに返済しなければ、給料や預金口座などの財産を差し押さえられることがあります。
任意整理の場合は、和解した内容のとおりに返済できなくても、裁判をされるまで財産を差押えを受けることはありません。
しかし、特定調停はそれ自体が裁判手続きなので、調停成立後に返済が遅れるとすぐに差押えを受けるおそれがあるのです。
特定調停で弁護士・司法書士に依頼するメリット
「特定調停」は原則として自分で行う手続きですが、弁護士や司法書士に依頼することも可能です。
しかし、高額な弁護士費用が必要になるので、最低限の費用で済ませることができるという特定調停のメリットを享受できなくなります。
特定調停で弁護士・司法書士に依頼するメリットは以下のとおりです。
面倒な手続きをすべて任せられる
特定調停の手続きは比較的簡単ではありますが、それなりの手間はかかります。
申し立ての際には必要書類をそろえて、管轄の裁判所を調べた上で提出しなければなりません。
調停が始まると、平日の日中に指定される期日に裁判所へ出廷する必要もあります。
弁護士・司法書士に依頼すれば、このような面倒な手続きをすべて任せることができます。
交渉を有利に進められる
特定調停では調停委員が貸金業者との交渉を仲介してくれますが、調停委員はあくまでも中立・公平な立場です。
債務者の味方として交渉を進めてくれるわけではありません。
しかし、依頼を受けた弁護士・司法書士は債務者の味方として、専門的な知識やノウハウを駆使して貸金業者と交渉してくれます。
その結果、より有利な内容での調停成立が期待できます。
過払い金請求でも有利になる
過払い金が判明した場合は、特定調停とは別に返還請求の手続きをとる必要があります。
しかし、過払い金請求をするにも貸金業者との交渉や裁判が必要になります。
専門的な知識やノウハウがなければ、過払い金を取り戻せたとしても本来の金額のごく一部にとどまってしまうおそれがあります。
弁護士・司法書士に依頼すれば過払い金請求においても専門家のサポートが受けられるので、十分な金額の過払い金を取り戻すことが期待できます。
より効果的な債務整理に導いてもらえることも
費用が安いことを理由に特定調停を利用しようと考えていても、人によっては特定調停には適していないことも考えられます。
例えば、返済不能なほど多額の借金を抱えている場合には、自己破産や個人再生の法が適しています。このような場合に無理に特定調停を成立させても、返済できなければ財産の差押えを受けてしまいます。
弁護士・司法書士に相談すれば、状況に応じてより効果的な債務整理に導いてもらえます。その結果、適切な形で借金問題を解決することが可能になります。
まとめ
特定調停の手続きは、費用を最低限で抑えることができる一方で手続きを自分で進めなければなりません。
弁護士や司法書士といった専門家に依頼することもできますが、特定調停の最大のメリットである、費用の安さを教授することができなくなります。
また、過払い金の請求などの手続きを別途行わなければならなくなってしまい必要以上の手間がかかることになります。
そのため、特定調停の手続きではなく任意整理手続きをお勧めしています。任意整理の場合、自分で手続きする必要はなく全て専門家に任せることができます。
どうしても費用を支払うことができないという方でも、支払い負担を軽減する方法はたくさんあります。
専門家も相談者の状況を理解しているので、無理な支払い基準で強引に請求されることはありません。
まずは、あなたの借金がいくらぐらい減るのか、シミュレーションを利用することから始めてみましょう。